空き家&遊休地活用で限界集落の課題を解決したい-高岡フードビレッジ協議会・井ノ上亜里沙


井ノ上亜里沙さん

皆さん、こんにちは。Diceです。

先日、旧知の井ノ上亜里沙さんから、宮崎市高岡町で農泊を中心に食にまつわる体験が出来るプロジェクトを始めたので遊びに来てほしいと誘われました。
井ノ上さんとは、15年ほど昔、東京と福岡で同じように宮崎の物産を販売する仕事していたことがあるのですが、私は東京に残り、井ノ上さんは故郷の都城市に戻って地元の物産の販路を広げる仕事に従事されていました。

そんな井ノ上さんが始めた新プロジェクト、気になったので、1月中旬に行われたイベントに合わせて訪問してきました。

目次

集落の半分は空き家に

高岡フードビレッジ

訪ねたのは、宮崎市高岡町「去川の関跡」の大淀川対岸あたりにある集落の中の一軒家。
家の前には「薩摩街道高岡筋」という旧道が通っていて、昔は去川の関から船で大淀川を渡り、この家の前を往来していたという歴史のある集落になります。

この集落には井ノ上さんの母方の実家があり、この一軒家は空き家になっていた井ノ上さんの親戚の家を借り受け、移住できるように改装した上で、農泊事業の拠点として使用しているとのこと。

朝霧に霞む集落
朝霧に霞む集落の家々

井ノ上さんによれば、この集落には20戸ほどの民家がありますが、ほぼ半数は空き家になっているのではないかとのこと。
そして、空き家が増えれば当然に耕作放棄地も増える一方で、山や田畑も荒れて行きます。

このままでは、かつてよく遊び懐かしい記憶の残る、母の実家のある集落が廃れる一方であることに危惧を抱いたのが、井ノ上さんがここに戻るきっかけになりました。

井ノ上さんが考えたのは、この地の特性を活かし、伝統食と体験農業を売り物にしてここを訪れる人を増やし、産業として成り立たせることでこの地に定着する人を維持・獲得しようというものでした。

そのためにまず、「高岡フードビレッジ協議会」という任意団体を立ち上げました。

古民家の再生

古民家再生
古民家再生ワークショップの様子(高岡フードビレッジ提供)

井ノ上さんがまず取り組んだのは、集落の中に拠点となる施設を確保すること。
幸いにして母の実家のすぐ近くに、空き家になっている親戚の家があったので、一般社団法人全国古民家再生協会宮崎第二支部の力を借り、改装の費用は農林水産省の「農山漁村振興交付金事業」を活用して、自分たちの手で必要最小限の改装を行いました。

この経験を活かして、今では同じ高岡町内の古民家を舞台に、古民家再生のワークショップなども開催しています。

宮崎ジュニアビレッジ

宮崎ジュニアビレッジの座学の様子

高岡フードビレッジの活動のひとつが、「宮崎ジュニアビレッジ」という小中学生向けのプログラム。

「ジュニアビレッジ」は、静岡県に本社を置くグローカルデザインスクール株式会社が手がける小中学生向け次世代イノベーター育成コミュニティスクールで、未来を担う子ども達が「農」を体験的に学ぶことで、それぞれの興味関心に応じた探究を進めることを目的としています。
このプログラムを学んだ井ノ上さんは、高岡の地でそのプログラムを応用した実践を開始しました。

私が訪問した日は、小学3年生の男の子が一人参加していました。
本来は、収穫した大豆で味噌を作る予定だったそうですが、大豆の実入りが悪かったのと、生憎の雨で果たせず、味噌を作った前提で、商品のラベルや商品名を考えるワークショップに変更されました。

白菜の収穫

座学が終わったら、家の前にある畑で夕食の材料となる野菜の収穫体験。
庖丁を持って、白菜の根本を切って収穫しました。

料理体験

収穫した白菜は、台所で料理します。
庖丁の持ち方がなかなか上手ですが、左手の添え方がちょっと危なっかしいので、この後、猫の手のやり方を教わってました。

この日は、私もお手伝いして、狩猟免許を持つ井ノ上さんが罠で獲って捌いた鹿肉を使い、鹿汁、鹿と佐土原ナスの炒め物などを作って、みんなでいただきました。

発酵ワークショップ

発酵ワークショップ講師の定久典哲さん

そのまま古民家に一泊して、翌日の午前中は「宮崎ジュニアビレッジ」の特別編として、発酵ワークショップが行われました。

講師は、日南市北郷で糀や甘酒の製造販売を行っている、「さだやん」こと定久典哲さん。
大阪出身で、奈良県で糀について学び、2021年に糀屋として独立された方です。

発酵ワークショップ参加者

参加者は、小学生2人、大人7人(筆者と井ノ上さんを含む)で、定久さんから甘酒の作り方を学びました。

顕微鏡

その場で米を蒸し、分量をきっちり量り、手順を踏んで定久さんが持参の米糀と合わせる、日本酒造りにも通じる本格的な作り方を実践的に教わりました。

途中では、顕微鏡でコウジカビの様子を見るなど、発酵の科学的な側面も押さえた高度な内容でしたが、参加した子ども達はしっかりとメモを取るなど、楽しんでいました。

参加者集合写真

ワークショップの最後に、参加者全員で集合写真を撮影。
それぞれ、自分で作った甘酒の瓶を持っています。これを持ち帰って、毎日発酵の様子を確認して、出来上がった甘酒を飲むまでが学びなのです。

高岡フードビレッジのこれから

コウジカビ

発酵は農村の食事の基本でもあるので、高岡フードビレッジでは、甘酒に限らず味噌づくりのワークショップなども大豆の栽培から時間をかけて行っており、今後も発酵に限らず様々なワークショップやイベントを行っていきたいとのこと。

直近では、2月11日(土)の「地紅茶Live」や2月18日(土)の「高岡町魅力発見モニターツアー」などが予定されています。

ワークショップなどイベントの情報は、高岡フードビレッジのFacebookページに掲載されますので、気になる方は是非フォローをお願いします。

また来年度は、宮崎ジュニアカレッジなどの開催と平行して、古民家を再生して、小さな加工場兼ねたジビエ料理を出せる農家レストランの整備を予定しているそうです。
これで雇用の場を創出するとともに、交流人口を増やすことが目標なのだとか。

今後の高岡フードビレッジの動き、テゲツー!としても注目していきたいと思います。

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この記事を書いた人

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。
趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。
2020年4月に宮崎での7年間の単身赴任生活を終え、2022年3月まで東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップを統括した後、さいころ株式会社を設立、同社代表取締役。
テゲツー!のアドバイザーで後見人的な人で、玄人受けするその記事にはファンも多い。

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