黒にんにくのプロ×漬物伝道師=日本農業遺産の風景を守り続ける


大根やぐら
画像提供:宮崎県観光協会

皆様こんにちは。食品関係の展示会に出かけることも多いDiceです。

東京で開かれる展示会に宮崎から出展される事業者の皆さんには顔なじみの方も多いのですが、その中の二人がタッグを組んで、新たな商品を生み出したとの情報が入ってきました。

その二人というのが、株式会社MOMIKI(宮崎市佐土原町)の籾木真一郎さんと、キムラ漬物宮崎工業株式会社(新富町)の木村昭彦さん。

黒にんにくのプロを自称する籾木さんと、漬物伝道師を自称する木村さんが、お互いの強みを生かして手がける新商品は、ひいては日本農業遺産の風景を守り遺すことにつながりそう。
その背景を少しだけ紐解いてみましょう。

目次

厳しさを増す漬物業界

漬物購入金額の推移
「野菜と漬物をめぐる状況」(農林水産省 令和5年8月31日)より抜粋

農林水産省の資料によると、1人1年当たりの漬物購入額は、上のグラフのとおり、米の購入額の減少に伴って長期低落傾向にあり、2022(令和4)年には基準となる1983(昭和58)年と比較して65%にまで落ち込んでいます。

漬物生産量の推移
「野菜と漬物をめぐる状況」(農林水産省 令和5年8月31日)より抜粋

漬物の生産量も、コロナ禍の巣ごもり需要で近年多少持ち直してはいるものの長期的には減少傾向にあり、中でも糠漬類(たくあん漬)は、キムチなど醤油漬類や浅漬類の伸びに押されて、生産量がかなり減少しています。

日本人の約7割の成人が、野菜摂取目標量350g/日に達していない状況で、農林水産省は野菜の消費拡大のために、企業等と連携して「野菜を食べようプロジェクト」を推進しており、その中で、「漬物で野菜を食べよう!」というPRも行われています。

漬物伝道師・木村昭彦

木村昭彦さん

愛知県から漬け物用大根の産地・宮崎に移住して、新富町でたくあんを主体にした漬物工場を営む木村昭彦さんは、日本農業遺産にも選定された宮崎の天日干し大根と、伝統的な発酵食品である日本の漬物文化を広めようと、日々のお仕事の他に、「漬物伝道師」としてnoteやSNSで毎日のように情報発信したり、糠漬けのワークショップを開いたりと、熱心に活動されています。

木村さんとの出会いによって、自家製の糠漬けを漬けるようになったという方も少なくないはず。

そんな木村さんは、少しでも漬物への理解とその可能性を広げようと、新商品の開発にも熱心で、これまでも様々な商品を生み出し、クラウドファンディングにもチャレンジしてきました。

宮崎の食品産業はまだまだ規模が小さいのですが、そこに関わる人々は割と距離感が近く、お互いに情報交換しながら、時には一緒になって新商品開発に取り組む事例が結構あります。
クラウドファンディングによるチャレンジが多いのも、宮崎の特徴のひとつのような気がします。

そんな環境の中で、木村さんが今回の新商品開発に当たって、コラボの相手として頼ったのが、隣町の宮崎市佐土原町で、黒にんにくや関連商品の製造・販売を行っている株式会社MOMIKIの黒木真一郎さんでした。

黒にんにくのプロ・籾木真一郎

籾木真一郎さん

木工用刃物の研磨事業で創業し、その後、松下電器の下請けとして携帯電話の部品を作っていた(株)MOMIKIですが、産業構造の変化とともに大幅なリストラを余儀なくされ、事業の柱を黒にんにくを中心とする食品製造に転換。
2014年に現在の社名に変更して事業の拡大を図ってきています。

今では「黒にんにくのプロ」を名乗るほどの社長の籾木真一郎さんは、専務だった時代から食品事業部を統括してきましたが、最初はなかなか売上げが上がらず、様々な苦労をしてきたそうです。
取引先を拡大するために出展した展示商談会で、右も左もわからない籾木さんに手を差し伸べたのが、同じ展示商談会に出展していたキムラ漬物の木村さんでした。
その時に木村さんに紹介された取引先とは、今でもお付き合いが続いているとのこと。

そんな縁で木村さんに恩義を感じている籾木さんですから、木村さんからのコラボの要請には応えない訳にはいきません。
こうして、キムラ漬物宮崎工業の天日干したくあんと、MOMIKIの黒にんにくスパイスを使った商品開発がスタートしたのでした。

そして、その二人のコラボに、一ひねりを加えた人物がもう一人。

お野菜料理研究家・永住美香

永住美香さん

木村さんと籾木さんのコラボがスタートした当初は、キムラ漬物のたくあんを輪切りスライスしたものに、MOMIKIの「GARI×GARIスパイス」を混ぜ合わせた、「おつまみたくあん」が想定完成形だったそうです。

しかし、それを使ったアレンジレシピの開発を依頼した新富町在住のお野菜料理研究家・永住美香さんから、「結局、細かく刻んでから料理に混ぜ合わせるので、もっと細かく切ったものが欲しい」という提案があり、方向を転換。

輪切りスライスタイプと粗みじん切りタイプの2種類を平行して開発し、それぞれに合わせてスパイスの粒の大きさを調整するなど試行錯誤を重ねて、ようやく完成に到ったとのこと。

GARI×PORI SPICE TAKUAN for cooking

GARI×PORIスパイスたくあん

そうして完成した商品が、「GARI×PORI SPICE TAKUAN for cooking」。

荒く刻んだ天日干し大根のたくあんに、黒にんにくやオレガノ、バジルス、4種類のペッパーなどから成るパイスパウダーが混ぜられており、そのまま食べたり、おにぎりの具にしたりカナッペに載せても良し、パスタやオムレツなどを作る際にちょっと加えて味や触感に変化を持たせても良しと、様々に使える新感覚食材ができあがりました。

食べたおいしいだけではなく、ポリフェノールやGABAなどの必須アミノ酸といった、身体に良い成分もたっぷりと含まれています。

クラウドファンディングに挑戦中

スパイスたくあんトップ画像

この新しい製品のテスト販売と告知のため、9月1日から、応援購入型のクラウドファンディング「Makuake」を使ったPR活動が始まっています。

プロジェクトの主催者が、木村さんではなくて籾木さんになっているのは、これまでのたくあんの流通チャンネルとは異なるチャンネルへの展開も模索しているからのようです。

プロジェクトのスタートから1週間経過した記事執筆時点で、既にファーストゴールの20万円を大きく超える45万円超の応援購入が集まっていますが、これはほんの序の口。
9月29日のプロジェクト終了まで、まだまだ高みを目指しています。

大根やぐら遠景

たくあんが売れなくなれば、日本農業遺産に指定されている、宮崎が誇る冬の風物詩「大根やぐら」の風景を後世に遺すことが難しくなってしまいます。

木村さんや籾木さんのチャレンジは、たくあんの可能性を広げ、減少傾向にあるたくあんの消費や生産に歯止めをかける意味合いがあり、宮崎人として是非とも応援しなければと思い、私もささやかですが応援購入に参加しました。

皆さんも、よろしければ是非!

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この記事を書いた人

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。
2020年8月からテゲツー!のWebサイトの管理運営を引き受け、ライター兼編集長としてテゲツー!全般の面倒を看ています。
趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。

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