口蹄疫を忘れない日シンポジウム:宮崎牛を食べて宮崎をさらに元気に!


オープニングタイトル

孤高の料理人、Diceです。単価の安い素材で美味しい料理を作るのが得意ですが、時には牛肉も使います。もちろん財布が寂しくなければ、宮崎県産の黒毛和牛を選びますよ。
「宮崎牛」は定義が厳しくて、それなりにお値段も高いので、なかなか自分では買えませんが、それでもお店なんかでたまに食べると圧倒的に美味い!。

しかし、今から5年前の2010年4月20日、宮崎県川南町で口蹄疫が発生し、最終的に牛と豚合わせて約30万頭が殺処分された惨事はまだ記憶に新しいところです。

その後、復興への歩みは着実に進んできているように見えますが、子牛や飼料の値段は高騰し、牛肉の国内消費は減ってきているので、牛の生産農家を取り巻く状況はむしろ厳しくなっているとのこと。

そんな宮崎牛の未来はどこへ向かおうとしているのか、2015年4月19日(日)、宮崎日日新聞社の主催で「口蹄疫を忘れない日シンポジウム 宮崎牛の未来を語ろう」が開催されたので、取材かたがた出かけてきました。

坂井淳子アナ

司会は、フリーアナウンサーの坂井淳子さん。MRTのラジオやテレビでお馴染みのベテランアナウンサーで、宮崎の人も場所もよ~くご存知。その知識を織り交ぜながらの司会は、さすがの安定感。

 

焼肉店主対談「宮崎牛の魅力とは」

長友&岩永

シンポジウムの冒頭を飾るのは、地元の有名焼肉店主2人による対談。
その2人とは、「焼肉の幸加園」社長の長友幸一郎さん(写真左)と、「みょうが屋」店主の岩永光明さん(写真右)。
どちらも美味しい宮崎牛を食べさせてくれる焼肉店として、宮崎人のみならず県外の人からも愛されている名店です。

海老原記者

その2人から話を引き出すのが、宮崎日日新聞社報道部の海老原記者。
宮崎牛の魅力とは、2人にとって理想の肉はとは、美味しく提供する秘訣は、赤身のニーズについてどう思う、などなど、次々に質問をぶつけて行きます。

長友幸一郎さん

長友さんは、東京での食品関連会社勤務を経て、1973(昭和48)年、30歳の時に宮崎市江平に焼肉の幸加園を開店。奥様と二人で一生懸命にやっていこうという決意を込めて、それぞれの名前から一文字ずつ取って店名にしたとのこと。
宮崎牛については、生産者がしっかりしていて安心・安全であり、本当に素晴らしいとおっしゃいます。さし(脂肪交雑)の入り具合を示すマーブリングスケール(B.M.S)で11~12になるともう芸術品の域なのだとか。
理想の肉は、霜降りが万遍なく細かくきれいに入っていて、デレッとせず締まっているもの。脂の色もあんまり真っ白でもなく黄色くもなく、クリーム色で包丁を入れた時にすーっと入るようなものがいいのだそうです。

岩永光明さん

岩永さんは、元々実家が宮崎市広島通で「江戸金」という料理店を営んでいたが、再開発のために閉店となり、1985(昭和60)年に宮崎市末広に「みょうが屋」を開店。店名は、家紋の「抱き茗荷」から来ているのだとか。
宮崎牛の魅力は、何と言っても安定感で、甘みが強くぶれが無い、脂に臭みが無いところだそうです。
理想の肉については、触っていて軟らかい肉は美味しくなく、感覚的なものでなかなか言葉での説明が難しいけど、締まっているが固い訳ではない肉なのだとか。
自らの目と舌で厳選した肉を提供する店の店主として、言葉のひとつひとつが理論的で重い。

お二人とも、宮崎牛については基本的に味をつけすぎないようにしているとのこと。揉みダレを肉に揉み込むようなことをすると肉の味を壊すので、皿に並べた肉にタレをかけるだけで出しているそうです。

また、赤身志向の高まりについて岩永さんは、客の選択肢が増えるのは面白いが、赤身でも美味しい赤身と美味しくない赤身があり、赤身なら何でもいいという極端に振れるのは良くなくて、適材適所なのだとおっしゃいます。

黒木さんは、肉の部位によって特徴があり、赤身が欲しい人には、もも肉などを薄く切って焼きしゃぶやしゃぶしゃぶなどで提供すればいいとし、宮崎牛にとって赤身志向が不利ではないとは言わないが、言い肉は美味くてたくさん食べられるので、利点もあるとおっしゃいました。

更に岩永さんは、元からの牛のポテンシャルが良くないと赤身でも美味しくないとし、消費者の肉についての知識も増えたので、それに応じて店側の努力も必要だが、焼肉文化ではこれまで切り捨てられていた部分が使えるようになり、一頭余すことなく使えるようになるので、この風潮は生産者にとっても良いことなのではないかとおっしゃいました。

そして、宮崎牛のこれからについて、
岩永さんは、日本一になったが地元の人は高い肉が買えない現状があり、積極的に地元が買い支えられないか、農家のモチベーションが上がるにはどうすればいいかを考える必要があるとし、宮崎牛の基準について、ランクの上のものは「特撰セレクト」とかにして、基準を広げる必要に触れました。
農家でも、さしがあまり入らないことを狙う人もいるし、極上の霜降りだけが宮崎牛というのではなくて、選べる範囲を広げるとともに、そこに売り方が伴わないとダメだと締めくくりました。

黒木さんも、4月から宮崎牛の基準がこれまでより厳しくなり、宮崎生まれで宮崎育ちでなければならなくなったので該当する頭数が減ることになったとし、従来のA4、A5だけではなく、A3まで宮崎牛として広げていけばいいのではないかと話すとともに、オレイン酸など旨味成分を数値化して示すことによって、農家の所得向上につながるのではないかと話しました。
そして最後に、宮崎牛を愛して食べていただきたいと、聴衆に訴えて締めくくりました。
続きはこちら

基調講演「宮崎産農産物のブランド戦略とグローバル戦略」

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この記事を書いた人

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。
趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。
2020年4月に宮崎での7年間の単身赴任生活を終え、2022年3月まで東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップを統括した後、さいころ株式会社を設立、同社代表取締役。
テゲツー!のアドバイザーで後見人的な人で、玄人受けするその記事にはファンも多い。

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