時々フードアナリストのDiceです。
1月28日(土)に、宮崎市西橘通りのダイヤモンドビル地下にある「故郷料理 カリコボーズの里」で開催されたテゲツー!寺子屋第12弾のテーマは、「ジビエを愉しみながら西米良と鹿について学ぼう!」でした。
私が企画したこの寺子屋、飲食店とのコラボでの開催は初めてのこともあって、参加者がなかなか増えずにちょっと苦労しましたが、最終的に30名超の参加をいただくことができました。
かなり遅くなってしまいましたが、当日の様子をご報告します。
西米良のジビエについて
まずは、西米良村役場の黒木世男さんから、「西米良のジビエ」について学びます。
村の面積の96%が山林である西米良では、昔から狩猟が盛んで、イノシシ、シカ、タヌキ、ムジナ(アナグマ)、ノウサギ、モマ(ムササビ)などが銃や罠によって捕獲され、貴重なタンパク源として食べられてきたのだそうです。
山を切り開いて整備した段々畑や棚田による農業と林業が基幹産業の西米良村ですが、最近は人口の減少と、それに反比例するように個体数が増えるシカやイノシシが人里に出没するようになってきました。
作付け直後の新芽が食べられたり、収穫直前の田畑が荒らされる被害が繰り返され、生産意欲が減退し、耕作されなくなった農地も増えているとのこと。
そこで、国も補助をするなど自治体や地域をあげて捕獲を推進するようになり、西米良村では年間に600頭を超えるシカ・イノシシが捕獲されるまでになっているそうです。
捕獲されたシカ・イノシシは、以前は猟師が自己消費していましたが、捕獲頭数が増えると消費しきれなくなり、余った分は埋却処理されてきたのですが、大切な命を粗末にするわけにもいかず、ヨーロッパでは高級食材として親しまれていることから、ジビエとしての利用が模索されてきました。
捕獲したシカ・イノシシがお金になれば、地元の経済にも貢献できて、捕獲も進み、山間部の人々の生活も守られるというわけです。
このため西米良村では、保健所の許可を受けた食肉の処理施設を整備し、捕獲後2時間以内処理施設に持ち込むことというルールを定め、肉の鮮度を保ち、食肉としてのクオリティを保つこととしています。
広大な自然の中で健康的に育ったシカやイノシシは、脂肪分が少なく低カロリーでヘルシー。
イノシシの肉はコラーゲンが豊富で、シカの肉は脂質がとても少なく鉄分が豊富と、女性に嬉しい栄養素がたっぷり。
しかも料理法によっては牛豚鶏よりも美味しいので、是非、たくさんの人々に食べていただきたい、と黒木さん。
シカやイノシシがジビエになるまで
続いて、処理施設で実際にシカやイノシシを捌いている小牟田明歌音さんから、持ち込まれた獣が肉に変わる過程を学びました。
まず、体重を量り、個体番号を付けて、お湯をかけて身体に付いているノミやダニを駆除し、皮を剥いで内臓を取り出し、冷蔵庫の中に吊して血抜きをします。
その後、手作業で部位ごとに解体していくのですが、シカは筋肉が細かく発達していて、細かい筋肉の塊ごとに「筋膜」という薄い膜に包まれているので、それを取り除いていく作業がかなり大変なのだとか。
筋膜は筋ばしって硬いので、これを取り除かないと美味しく食べられないのだそうです。
持ち込まれるシカやイノシシは大きさも様々で、形が揃っている家畜のようにシステマチックに捌くことができません。
それぞれの状態を見ながら人の手で丁寧に捌かれるので手間暇がかかり、それ故に家畜の肉よりも価格が高くなってしまうということなのですね。
小牟田さんは、剥いだ鹿皮も有効利用するために、なめして染色し、様々な製品に加工する道も模索しています。
ブレスレットやリボンゴムなどの製品は、西米良村内にあるリサイクルショップ「MERACLE」で販売されているとのことなので、西米良に行かれた際にはチェックしてみてください。
学びの後は、実際に味わう時間
ひととおり、西米良村とジビエについて学んだところで、いよいよ待望の鹿肉料理を愉しみます。
まず最初に、「故郷料理 カリコボーズの里」の那須英史社長の発声で乾杯。
次ページでは、海老原料理長が存分に腕を振るった、鹿肉尽くしの料理の数々をご紹介します。