長い梅雨が明け、ようやく宮崎にも夏がやってきました。
夏が来ると暑くて食欲が落ちるので、精をつけるために「土用の丑の日」に鰻を食べようという風習を作ったのが、江戸時代の学者・発明家の平賀源内だというのが定説となっております。
「土曜の牛」ではありませんからね。お間違えなく!
調べてみると、立秋の前の約18日間を「夏の土用」と呼ぶそうで、2015年は7月20日から8月7日がそれに当たります。
丑の日は、干支の数え方と同じなので、12日周期で巡ってきますが、2015年の土用の間にある丑の日は、7月24日(金)と8月5日(水)の2回あります。
その7月24日(金)の夕方、食べようと思っていたラーメンが食べられなくて、空腹のままテゲツー!スタジオのあるカリーノ地下に降りたら、「まんまーる」のカウンターに見慣れた3人組の後ろ姿が。
「こんにちわ」って声をかけたら、何やら3人でスペシャルなコース料理を食べようとされているところで、たまたま隣の席が空いていたので、Diceさんもどうぞって勧められたのでした。
お腹も空いてたし、特に断る理由もなかったの、勧められるままにカウンターの椅子に座ったら、なんとも魅力的な宴がスタートしたのでした。
その宴の名は、「新富野菜と鰻をDABといただく会」。
お誘いいただいたヒダカアヤさん、ありがとうございました。
新富野菜と鰻をDABといただく会
宴は、ラディッシュセブン佐藤店長のご挨拶でスタート。
今日の食材は、新富町にある「うなぎの比惠島」から届いた鰻と、阿蘇山の麓で放牧されている「あかうし」を乾燥熟成させたドライエイジングビーフ(DAB)に新富町産の野菜の数々。
これらの素材が、ラディッシュセブンの料理人達の手にかかるとどのような料理に変身するのか、期待に胸が膨らみます。
まず一品目は、「比惠島鰻を纏った山椒風味のリゾットコロッケ」。
山椒で香りがつけられたフォアグラの入りリゾットを冷やして丸め、衣をつけて揚げてあるのですが、この衣に鰻が混ぜてあるという意外さ。
手前に添えられているのは、椎茸の鰻見立て蒲焼き。甘塩っぱいタレをつけて焼かれた椎茸は、少し歯応えがあり、噛みしめると旨味がじわっと滲み出てきます。
初っ端からヘビーに攻めてきますね。
続いて「熊本放牧牛DABとアボカドのサラダ仕立て」。
阿蘇の麓で放牧された褐毛和牛(あか牛)は、黒毛和牛に比べて脂身が少なくヘルシーできれいな赤身が特徴ですが、脂身が少ない分、硬いイメージがあります。
その肉を低温で管理して乾燥熟成させると、旨味が凝縮するとともに、柔らかみが増します。
この一品は、そのドライエージングされた牛肉の表面に火を通し、中はレアに仕上げたものを、アボカドとトマト、オクラ、ベビーリーフとともにサラダ仕立てにしたもの。
DABの特徴であるナッツの香りが感じられる、噛みしめるのが嬉しいサラダでした。
3品目名は、「比惠島鰻のエスカベッシュ 鰻ざく風」
エスカベッシュは、スペイン料理やフランス料理の技法で、南蛮漬けのようなものだと思っていただければいいのですが、これは、すり下ろしたきゅうりをベースにした酸味のある冷たいスープを作り、佐土原ナスの焼きナスを敷いた上に鰻の蒲焼き、ワカメを載せ、その上からきゅうりのスープから作った泡を載せてあるという手間のかかった料理。
鰻ざくは、鰻ときゅうりの酢の物ですが、それにインスパイアされた見事な一品でした。
この日のスペシャルメニューは、半円状のカウンターだけの提供だったので、佐藤店長も力が入ります。
続くスープは、「新富産新牛蒡の冷製スープ 雑穀添え」。
涼しげにグラスで供されました。
大地を感じさせる旬のごぼうの香りと優しい甘みがあり、食物繊維たっぷりで身体にもいい、夏らしいスープには、食感のアクセントに蕎麦の実などの雑穀も添えられていました。
続いては、和食の嶋村シェフの手による「鰻と新富夏野菜の豊作巻」。
ごぼう、佐土原ナス、オクラといった夏野菜を鰻で巻いて、ジュレ仕立てにした濃いめの出汁が添えられていて、これまた見た目も涼やかな一品。飾られた穂紫蘇も美しい。
焼き物の一品目は、「比惠島鰻のにんにくパン粉焼」。
開いた鰻の切り身にアンチョビペーストを塗り、ニンニク入りのパン粉をつけて焼き上げたもの。
添えられているのは、小松菜、アスパラ、焼き原木椎茸、レンコンチップ。
しっかりとして旨味の乗った鰻が、アンチョビとニンニクをしっかりと受け止め、カリッとしたパン粉が程よいアクセントになっています。
これまで、こういう形で鰻を食べたことはありませんでしたが、素材としての広がりを感じさせる一品でした。
ただ、惜しむらくは、鰻の資源量が激減して、手に入り辛くなっていること。適正な管理によって、資源量が回復することを祈ってます。
焼き物二品目、「熊本放牧牛DABのビーフステーキ」。
見事な赤身ですね。レアのような仕上げですが、絶妙に火入れされています。
脂肪の少なさを補うためにオリーブオイルがかけられ、シンプルに岩塩だけいただきます。
さしのたっぷり入った黒毛和牛とは異なり、口の中でとろけるようなジューシーさはありませんが、噛み進むうちに、脂の旨味とは違う肉本来の旨味と熟成されたナッツのような香りを味わうことができます。
赤身とはいえ、輸入牛のような固さはなく、適度な歯応えのある柔らかさと言いましょうか、肉食べてる!って気にさせてくれるステーキでした。
「まんまーる」は、同じフロアにあるラディッシュセブンで売られているワインを持ち込むことができるのですが、この日は通常500円の持ち込み料が無料ということで、わたしも赤ワインを1本買って持ち込みました。
さすがに一人で1本は飲み干せないので、みんなでシェアしましたけどね。
ワインの酔いを醒ますために用意されたのが、新富町の有限会社豊緑園の有機農法で作られた「もりもっ茶」の水出し。
代表の森本健太郎さんと、同社のブランドデザインを引き受けているヒダカアヤさんがわざわざ淹れてくださったものです。
水出し緑茶は、甘みと旨味が感じられる優しい味。免疫力を上げる「エピガロカテキン」がたくさん含まれているということでも注目を集めております。
こうしてワイングラスに注がれると、色も美しく、なんともオシャレですね。
最後の締めには今日の白眉、「鰻と牛の握り 木の芽と穂紫蘇の香り」。
美しいですね。
ほろほろと口中でほどける鮨ではなく、しっかりと噛むことを要求する鮨ですが、それが全然苦にならない。
鰻とDABの美味さは言うまでもなく、ほのかに香る木の芽と穂紫蘇が鼻腔をくすぐる。
ここまで食べ進んできての鮨4貫、ちょっと重いかなと思いましたが、いつの間にか胃の中に納まってました。
そしてデザートは、「新富もりもっ茶のアフォガート」。
通常は、バニラアイスにエスプレッソという組み合わせの多いアフォガートも、この日は濃く淹れた「もりもっ茶」をかけていただきます。
お茶の苦みがバニラアイスの甘みとマッチして、大人の和スーツに仕上がってます。アイスの下に隠れた柚子ピールもいいアクセントになっていました。
ひょんなことからいただくことになったフルコース9品。旬の素材のオンパレードで、いい暑気払いとなりました。
いつも思うのですが、ここ「ラディッシュセブン・まんまーる」で不定期に開催されるスペシャルディナー、本当にその季節に応じた宮崎の素材をうまく活かしていて、シェフ陣選りすぐりの料理の数々で常に新しい発見もあり、本当に楽しませてくれます。
定番メニューだけではない、こういう実験的で野心的なレストランが身近にあり、リーズナブルな価格で食べられることを嬉しく思います。
さて、次は、どういう料理で楽しませてくれるのでしょうか?
皆様、要チェックですよ!