透析患者に広がる選択肢-災害時にも強い“おうち透析(腹膜透析)”とは?


協定書を手にする河野社長と清山市長

健康が気になるお年頃、テゲツー!ライターのYURIです。

みなさんは「透析」をご存じですか?
腎臓が正常に機能しなくなったとき、腎臓の働きを人工的に補う治療のことで、透析患者は全国に約34万人もいます。
私は、幼少期にお隣のおばちゃんが「今日は透析に行ってくるね」とよく出かけていたという記憶程度です。

そんな透析治療に関する医療用品を製造する株式会社ヴァンティブ(旧バクスター)は、宮崎市清武町に工場を設立して35年。
複数ある透析方法の中でも「腹膜透析(おうち透析 ※1)」のための透析液を製造し、全国の利用者に届けています。

※1「おうち透析」:在宅での治療となる腹膜透析および在宅血液透析をより多くの患者さんに認知していただくために、ヴァンティブが名付けた腹膜透析の呼称。

そのヴァンティブと宮崎市は2025年8月7日、昨年8月8日の日向灘地震からちょうど1年のタイミングで、災害時における包括連携協定を締結。
宮崎工場で行われた締結式に、テゲツーライターとして参加してきました。

トークセッション

式典後には「透析治療と防災」をテーマにトークセッションも開催。
なぜ今このような協定を結ぶことになったのか?透析治療と災害の関係とは?そんなことがわかるトークセッションでした。
9月1日は「防災の日」。本稿を読んで、身近な人たちに情報をシェアいただけるとうれしいです。

目次

災害時に水、食料、電気、トイレ、仮設住宅用の土地を提供

Vantive遠景

ヴァンティブ宮崎工場は地盤の強固な高台にあり、約340人が働く医療品の製造拠点。
600リットル以上の貯水や濾過装置があり、太陽光パネル発電施設もあります。
同社は、35年間の感謝を込めた地域貢献として、南海トラフ地震など災害時には、避難場所として水や電気、トイレや敷地など、さまざまな自社資源を地域に解放することを宮崎市との包括連携協定で約束しました。

当日のスライド資料

連携協定の詳細については、株式会社ヴァンティブのプレスリリース↓を参照してください。

企業、自治体、医療の連携で防災に備えることが本協定の目的。
このような企業が地域にあることは宮崎市の誇りであり、災害時の安心感につながりますね。

病院での「血液透析」とは違う、自宅でできる「腹膜透析」

透析方法の比較
宮崎市×ヴァンティブ 災害時包括連携協定 締結式_投影資料より

当日のスライド資料によると、日本の慢性腎臓病患者数は国内に約2000万人。成人の5人に1人は慢性的な腎臓病を患っています。
そのうち透析患者は34万人。100万人ごとの患者数では、宮崎県は国内4番目に多いエリアなのだそうです。
つまり腎臓病や透析は、たとえ今は関係なくても決して他人事ではないのだ、という印象を受けました。

透析には、「血液透析」と「腹膜透析」があります。
血液透析は週3回の通院が必要ですが、腹膜透析は自宅で自分で行え、通院は月1〜2回程度。
ですが、日本では透析患者の97%が血液透析を利用しており、そもそも腹膜透析の治療が行える病院は極めて限定的。血液透析ができる病院数の方が圧倒的に多くなっています。

私も正直なところ、透析と言えば週3回ほどの通院治療が必要な血液透析のことだと認識していました。

上の図で、それぞれ比較してみてください。
血液透析は病院など透析施設に毎週3回の通院が必要ですが、腹膜透析の場合通院は月1〜2回。ただし自宅や旅行先でも毎日透析を行う必要があります。
比較すると結構違っていることがわかります。

お住まいの環境にもよりますが、ライフスタイルに合わせて治療を選ぶことができるんですね。

水や電気が生命線。熊本地震に学ぶ、災害時の「透析」

河野社長と池田医師

式典に続き、「透析治療の選択肢」「透析治療と防災」についてのトークセッションが行われました。

ヴァンティブの河野行成(こうの ゆきなり)社長と一緒に登壇したのは、宮崎県立宮崎病院 腎臓内科部長の池田直子医師。

池田医師:
「血液透析は1回の治療で約120リットルの水を使用し、電気も必要とするため、災害時にライフラインが途絶えると治療が困難になります。
一方、腹膜透析は患者自身が自宅や避難所でも継続できる治療法であり、災害時にも強いと言えます」

ヴァンティブ製透析液
ヴァンティブで製造している、腹膜透析の透析液

大規模災害で被害が広範囲にわたってしまった場合、病院も被災して透析が行える状態にない可能性も。
そんなとき、週3日の通院治療が必要な透析患者の方は、どうなるのでしょうか?

川端知晶医師

熊本赤十字病院 腎臓内科副部長の川端知晶医師がセッションに加わり、2016年の熊本地震時の話題に。

震度7の地震が2回発生し余震も続く中、『水の都』と呼ばれる熊本の地下水脈は混濁し、10日間にわたり断水。県内93の透析施設のうち27施設が透析不能となりました。
血液透析患者は県外での治療を勧められましたが、家族と離れたくないという理由で移動を拒む患者が多かったそうです。

一方、腹膜透析患者は73%が自宅で過ごし、18%が避難所や車中泊。
避難所でも患者は普段通りに腹膜透析を継続でき、メーカーによるサポートも受けられたとのことです。

川端医師:
「血液透析が水、電気、機械、専門スタッフに依存する治療であるのに対し、腹膜透析は患者自身が自己完結できる、災害時に強い治療法です。
災害時には『患者自身が命を守る備え』が重要で、腹膜透析はその点で優れています」

日常生活にも自由度が高い「腹膜透析」を選択肢として知っておこう

ヴァンティブ社の腹膜透析関連製品
式典当日、正面玄関には“おうち透析(腹膜透析)”の機器が展示されていました

ヴァンティブと宮崎市の包括連携協定締結式に参加して、私は透析について改めて学ぶ必要があると実感しました。
災害下で透析患者はどんな状況に置かれるのか、「自分の命は自分で守る」ためにどんな選択肢があるのか。

おうち透析(腹膜透析)がもっと広まり、透析患者やその家族が選択肢として認識できているかどうかで、その後の人生に大きく影響してきます。
「透析患者のみなさまに治療の“選択肢”があることを知ってほしい」と訴える河野社長の言葉が印象的でした。

日本では、おうち透析(腹膜透析)の普及率は3%で、対応している医療機関は限られています。
腎不全治療の選択肢について相談できる病院を探す際には、地名などを入力することで病院を検索できるサイト「透析病院ドットコム」をご活用ください!

私もまだまだ理解が追いついていませんが、自分から「知る」行動を始めています。みなさんもぜひ透析について調べたり、ご家族や友人にも情報を共有するなどしてみてくださいね!

※こちらの書籍もぜひ参考に。締結式で参加者全員に配られました。

やのゆりプロフィール寄稿者:YURI
ネコ♂と暮らす、宮崎市在住の編集者兼ライター。得意分野はインタビュー記事、講座レポート、プレスリリースやクラウドファンディングのライティング等。趣味はぬか漬け、ポイ活、バレーボール。

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この記事を書いた人

県内各地に散らばる寄稿者用の統一アカウントです。
宮崎県内の地元の人だからこそ知っているおすすめの「グルメ」「観光」情報を軸に、地域の安全安心につながる情報の提供にも取り組んでいきます。

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