週末の1杯に選んでもらえるビールづくりを目指して ー 日南麦酒


日南麦酒のビール

ビールは基本的に1杯だけで良いのですが、それだからこそ美味しいビールを飲みたいと思うDiceです。
なので普段は、なるべく麦芽とホップだけで造られたビールを飲むようにしているのですが、最近、その信念を覆すビールが、宮崎市内にも続々と誕生しています。
それが、「マイクロブルワリー」と呼ばれる小規模なビール製造所。
2017年1月に誕生した「青空エール」、2018年12月に誕生した「宮崎フェニックスブルーイング」、そして、まだ取材に行けてませんが、2019年1月に誕生した「B.M.B Brewery」

宮崎フェニックスブルーイング

これらはいずれも酒税法上の発泡酒製造免許を受けた、年間6キロリットル以上の小規模な醸造所で、副原料を加えなければならない縛りはあるものの、味や香りにこだわったビールを、小ロットずつ造り出しています。

これらのブルワリーのビールを飲むと、宮崎にも新しいビール文化が生まれ、定着しつつあるのを感じます。

 

日南にもマイクロブルワリーが!!

日南麦酒外観

そんなマイクロブルワリーですが、じつは日南市にもあり、間もなく3年目のシーズンに突入しようとしているのをご存知でしょうか?

その名は、「日南麦酒(にちなんばくしゅ)」

場所は日南駅の裏手、王子製紙(株)日南工場の敷地に隣接した住宅地の一角にあるのですが、外観は倉庫か町工場のようで、「日南麦酒」の幟が出てなければ見過ごしてしまいそうな建物の中が、醸造所になっています。

日南麦酒内部

本当にここで良いのか不安な気持ちを抱えながら、おそるおそる引き戸を開けて中を覗くと、ちょっとした事務所スペースの奥に、醸造設備が並んでいるのが見えました。

 

元々はビールあんまり好きじゃなかったんです

橋本彰史さん

このブルワリーのオーナーで、ほぼ一人でビール造りを行っているのは、橋本彰史さん。
実は橋本さん、日南市にある焼酎蔵「櫻乃峰酒造有限会社」の代表取締役でもあり、焼酎の製造にも携わっていたのですが、現在は焼酎造りは社員に任せ、ご本人は専らここで、ビールの製造にいそしんでいらっしゃいます。

そんな橋本さん、かつてはさほどビールを美味しいとは思っていなかったそうなのですが、宮崎市内のスーパーでたまたま出会ったサミュエル・アダムスのボストンラガーの美味しさに驚き、ビールの世界に開眼したのだそうです。

その後、東京の東銀座にある「八蛮(はちばん)」という居酒屋で、店の中で小規模に造っている地ビールと出会い、もしかしたら自分にも造れるのではないかと、ビール造りの勉強を始めたのだそうです。

最初は、市販のビールキットを使って体験するところから始まって、島根や鹿児島にあるマイクロブルワリーに教えを乞うたりしながら試行錯誤を重ね、2017(平成29)年7月に発泡酒製造の免許を受け、同年9月からベルギー風のオレンジとコリアンダーの香りをまとった「ベルジャン・ホワイト」の出荷を開始しました。

 

週末の1本として選ぶ楽しみも味わって欲しい

梅ヶ浜 Hop Burst

もうすぐ3年目のシーズンに入ろうとする今、ペールエールやIPAなど6種類のビールを生み出していますが、「木崎浜ペールエール」や「梅ヶ浜 Hop Burst」、「恋ヶ浦IPA」などサーフスポットを冠したネーミングのビールがあるのもこちらのひとつの特徴。

橋本さんも昔はサーファーだったこともあり、サーフカルチャーとビールの相性が良いことを考えてのネーミングだそうですが、
「クラフトビールは決して安いビールではないので、日南のスーパーに置いてもなかなか買ってもらえないと思います。
しかし、味わって飲むビールを造りたいのでエールにこだわっていますし、週末に今日は何を飲もうかと、選ぶ楽しさも味わって欲しいと思って、6種類のフレーバーの異なるビールを用意しています。」
とのこと。

また、わかりやすくシンプルなデザインにしているのは、女性の目線も意識してのものだそうです。

 

量を増やして質の安定を目指します

製造設備

出荷量も次第に増えて、日南市内の飲食店での取り扱いも増えてきたほか、宮崎山形屋やみやざき物産館KONNE、宮崎空港などでも購入できるようになっていますが、現在の製造設備では酒質の安定が難しいのが課題とのこと。

「発酵は生物が相手ですが、現在使っている寸胴では思うように行かないこともあるので、今後は、設備投資を行って製造量を増やし、質を安定させることを考えています。」
と橋本さん。

現在、工場として使っている建物は、まだまだ拡張のためのスペースがあるので、そこに新たな発酵タンクを導入する予定だそうです。

橋本さんは、かつて自分がそうであったように、ビール造りにチャレンジしようと訪ねてくる若いブルワー達の相談に乗り、ビール造りのノウハウを惜しげも無く伝えています。

宮崎のマイクロブルワリーの兄貴分として、他のブルワリーと切磋琢磨しながら宮崎のビール文化を盛り上げていく橋本さんのチャレンジから、しばらくは目が離せませんね。

 

【日南麦酒】
住所:日南市吾田東1丁目1-37 → マップ
電話:050-1485-8425

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この記事を書いた人

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。
趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。
2020年4月に宮崎での7年間の単身赴任生活を終え、2022年3月まで東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップを統括した後、さいころ株式会社を設立、同社代表取締役。
テゲツー!のアドバイザーで後見人的な人で、玄人受けするその記事にはファンも多い。

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