テゲツー!焼酎担当のDiceです。
毎月第2水曜日に開催の「本格焼酎ドット恋」例会、2016年の最後を飾る19回目の例会は、12月14日(水)に「居心地屋 やまぢ」で開催されたので、今回も取材に行って参りました。
今回のゲストは、酒をこよなく愛した歌人・若山牧水のふるさと日向市東郷町にある「あくがれ蒸留所」から、企画営業部の村山文保さんと、杜氏の山本豊文さん。
東郷町には、かつてその名も「牧水酒造」という焼酎蔵がありましたが、平成9(1997)年に廃業となっていました。
牧水の歌を詠む心は地元で受け継がれていますが、牧水の愛した酒(焼酎)を造る蔵が無くなったことを残念に思い、地域の振興のためにもと酒蔵の復活を目指したのが、東郷町で建設業を営む黒木繁人さんでした。
そこから苦労を重ねて、鹿児島県隼人町にあった(株)富乃露酒造店から営業譲渡という形で酒蔵を造り上げ、平成16(2004)年12月に「富乃露酒造」として初蔵出し。
主力銘柄の「日向あくがれ」は、牧水の
「けふもまた こころの鉦をうち鳴らし うち鳴らしつつ あくがれてゆく」
という詠から取られており、そう命名するように勧めたのは、牧水研究家でもある歌人の伊藤一彦さん。
以降、小さい蔵ながらの様々な困難を乗り越えつつ、10年を節目に次のステップを目指すこととして、2015(平成27)年に「あくがれ蒸留所」に社名を変更し、現在に至ります。
「あくがれ蒸留所」は、芋をメインに仕込んでいて、会の開かれた日は、まだ仕込みの終盤で忙しさが続いている時期。
杜氏の山本さんは、確か30歳になったばかりだと思いますが、
「忙しい時は、蔵に泊まり込んで寝る間もないくらいです。今期の仕込みでは、体重が3kg減りました。」
と話していました。
この若い杜氏のほか蔵人たちの手によって、牧水のふるさとの焼酎は育てられています。
あくがれブルー
説明はそれくらいにして、ともかく飲みましょう。
最初に登場したのは、「あくがれブルー」。
五穀焼酎ということで、麦、米、栗、稗、黍、大豆を原料に、黒麹と黄麹をブレンドした麦麹と宮崎酵母で仕込まれ、常圧蒸留で20度に造られています。
5年熟成で深みがあり、すっきりフルーティー。
「ロックでキリッとした飲み口を味わうのが良い」という山本杜氏の薦めに従って、まずはこの「あくがれブルー」のロックで乾杯。
サーフィンを愛する黒木繁人社長の趣味を反映し、日向の空と海をイメージしたブルーのクリアボトルは、可愛らしいウミガメのイラストもあって女性にも人気で、飲んだ後にインテリアで使われることもあるそうです。
そんな海をイメージさせる焼酎に合わせる料理は、「釣りアジの刺し身」。
みやざき地頭鶏が専門の「やまぢ」で魚料理は珍しいのですが、新店になって、たまにスタッフが釣ってきた魚が出るようになりました。
軽く漬けになった脂の乗ったアジ刺しと、フルーティーな香りで複雑な味わいの焼酎、なかなか合います。
日向あくがれ14°
続いて2杯目は、「日向あくがれ14°」。
コガネセンガンを白麹で仕込み、酵母は、平成宮崎酵母。
常圧蒸留の後、仕込み水と同じ耳川の伏流水でアルコール度数14度に調製されています。
度数が低いので、ロックも良し、燗をつけて深みのある味わいを楽しむも良し、はたまた瓶ごと冷蔵庫で冷やして、日本酒みたいに小ぶりのグラスで飲むのもまた良し。
すっきりとライトな感じで、女性にも飲みやすい焼酎で、黄色を基調としたこのラベルも、可愛いウミガメのイラストがあしらわれていて、優しさを感じます。
そんなライトテイストな焼酎に合わせるのは、優しい和の料理が良さそう。
今回は、「里芋と大根の唐揚げの銀餡かけ」。
出汁を含んだ里芋と大根がそれぞれ唐揚げにされていて、さらに出汁を片栗粉でとじた餡がかけられています。
この優しい出汁の味と香りが、主張しすぎない「日向あくがれ14°」とよくマッチします。
ところでこの「日向あくがれ14°」には、ご覧のとおり「寄付金付」というシールが貼られています。
これは、売上げの5%が地元の日向市に寄付されることになっているのだそうです。
そう聞いたら、飲まない訳にはいかないですよね。
東郷大地の夢
さてこの日、蔵元から持ち込まれた3種の焼酎の最後を飾るのは、「東郷大地の夢」。
東郷町産の米とさつまいも「ダイチノユメ-農林59号」という、地元産の原料にこだわって造られた焼酎です。
果物のような甘い香りを引き立たせるために、あえて28度という度数に調製されています。
25度が主流の関東のマーケットでも、甘く喉ごしの良い飲み口と香りが好評とのこと。
山本杜氏から、
「香りを楽しむためには、お湯割りがおすすめ。」
と伺ったので、お湯割りでいただきました。
確かに、より香りが立ち、甘みも増すような気がします。
28度ですが、強さよりも優しさを感じさせる焼酎で、この蔵の焼酎は全て、包み込むような優しさをイメージさせます。
牧水のふるさとという土地、蔵人たちの人柄、海や空への愛、そういったものが、自然と焼酎の味に結実していっているのかもしれません。
このお湯割りに合わせるのは、やはり定番の「みやざき地頭鶏の炭火焼」しかないでしょう。
噛みしめるとほとばしる旨味と鶏の脂を、すっきり甘みのあるお湯割りで洗い流す愉悦。
宮崎にいて良かったなと思える瞬間でもあります。
この後、更に料理が供され、焼酎も進み、夜も更けて行ったのでした。
蔵人のお二人は、まだ仕込みが残っているからと、泊まらずに帰って行かれましたが、これからも牧水のような焼酎好きを愉しませる酒を、育てていって欲しいと思います。
さて、こうして2016年は暮れていった訳ですが、2017年が明けて、20回目となる次回の例会は、1月11日(水)に、サツマイモの一大生産地である串間市の寿海酒造を招いて開催予定とのこと。
詳細については、こちらから。
まだ残席あるみたいですが、お申し込みはお早めに!