いりこと濃口醤油で煮出した濃厚で甘口の出汁とふわやわの自家製麺で、宮崎のうどん界の中では独自の地位を築いている大盛うどん(宮崎市江平)。
この大盛うどんが、外販に対応した長期保存可能なうどんセットの新製品を発売することになり、お披露目の会を開催するとの情報を入手したので、行ってまいりました。
100周年記念誌
大盛うどんは、1913(大正2)年に創業。宮崎のうどん店の中では最も古い店だと言われています。
創業当時の経緯については、100周年を記念して作られた写真の小冊子にまとめられていますので、興味のある方は是非お読みください。
この小冊子、宮崎の食文化や江平の歴史を知ることのできる貴重な郷土資料なので、県立図書館や宮崎市立図書館には当然に収蔵されているべきだと思うのですが、大丈夫かな? 関係者のみなさんよろしくお願いしますよ!
新商品開発秘話
さて、大盛うどんが新たに開発した「プレミアム大盛うどん」について、4代目女将の興梠亜紀子さんに、イベントの運営でお忙しい中、隙を見てお話を伺いました。
100周年を経て、県外の人にもっと「大盛うどん」の味、存在を知って欲しいとの思いが強くなってきました。
しかし、店舗展開をしないというのが先代の方針としてあり、それなら外販できるように、ある程度日持ちする商品の開発を思い立ったんです。
最初は、店で出しているものをそのままレトルトにすればいいと思って試してみたんですが、出汁を加熱処理すると、いりこの香りは飛ぶし、醤油の味も変わってしまって、納得のいくものがなかなかできませんでした。
半ばあきらめかけていた所に、食品開発アドバイザーの先生から、長崎で無添加の本醸造醤油を作っている「チョーコー醤油」さんを紹介され、そこから約1年がかりで試作を7回繰り返し、ようやく満足のいく新しい出汁を作り上げることができました。
なので、店で出しているうどんの出汁の味とは微妙に異なります。
麺も、店では毎日自家製麺したものを出していますが、新商品の半生麺は、香川県のメーカーに依頼して製造しています。茹で加減で固さの調整が可能なので、お好みに合わせて時間を調整していただければと思います。
とのこと。
いろいろとご苦労があっての新製品なんですね。
さらに、
「お母さん目線で、食の安全と本物の素材にこだわって作りました。」
とのことで、女性らしいこだわりも詰まっているようです。
亜紀子さんのお話に出てきた「チョーコー醤油」は、長崎市に本社をおく調味料メーカー。この日は、佐賀支店から営業担当の野崎さんが、同社の本醸造丸大豆醤油「むらさき」や「かけ醤油」を携えて、イベントの応援に見えていました。
同社の醤油は、大豆と小麦と塩だけを使う「本醸造」にこだわって造っており、北は北海道から南は沖縄まで、全国で販売されているとのことで、スーパー等で同社の製品を見かけられた方もいらっしゃるかもしれません。
「チョーコー醤油」の協力なしにはできなかった新商品、詳しくみてみましょう。
この日の会場「まんまーる」の前に並べられた新商品の「プレミアム大盛うどん」。
1袋2人分で600円(税別)です。
シンプルにしてわかりやすいパッケージデザインは、同社の100周年記念CMも手がけた宮崎市の「ハナビヤ」とのこと。
内容はこのとおり、半生麺2人分とつゆの入った小袋が2つ、そして、いりこと昆布の粉末が入った追いだし用のパックが入っています。
つゆを温める時に、この追いだし用のパックも一緒に入れて煮込むと、さらに出汁にこくと香りが加わるのだそうです。
この追いだし用パックも長崎県のメーカーの強力によるものだそうで、今回の新商品は、宮崎と長崎、香川のコラボのたまものなんですね。
マリオ姿の某社長も新商品の販売を応援。
今回は、とりあえず3,600食を製造。基本的に大盛うどんの店舗とラディッシュの3店舗、大盛うどんのネットショップで販売されるとか。
「チョーコー醤油も販売に協力します!」と野崎さんの力強いお言葉も。
厨房では準備が進む
お話を伺っている間にも「まんまーる」の円形カウンターの中では、着々と試食の準備が進みます。
うーん、どこかで見かけた顔が…。
こちらの笑顔が素敵な美女は、「八三壱」のさゆみちゃんだ!。いつから大盛うどんに?
実はこの日は宮崎市内のほとんどの中学校で運動会開かれたので従業員さんにお休みが多く、店を閉めてのイベントに、たくさんの友人が応援にかけつけていたのでした。
これも、「大盛うどん」の魅力と4代目ご夫婦の人徳のなせる技なんでしょうね。
その4代目の興梠秀広さんは、黙々とひたすらに麺を茹でてらっしゃいました。
この日は、麺はお店で使われている自家製麺、出汁は新商品のプレミアム用の出汁で提供されるとのこと。
ちょっと中を覗いてみると、なんとも魅力的なものが目に飛び込んできました。
この日のために特別に用意された尾崎牛のスライス。さしの作るマーブルが美しい。
これを90gずつ小分けして、肉うどんの準備です。
「尾崎牛肉うどん」は数量限定なので、事前予約制になっていました。
もちろん、予約しておきましたとも。
さあ、試食だ。
そして、待ちわびた「尾崎牛肉うどん」(1,500円)が出てきました。
割下で別にさっと煮られた尾崎牛に、ゴボウのささがきの素揚げ、ししとうの素揚げ、へべすのスライスが添えられています。
まずは、麺からいただきましょう。ふわっとやわらかい麺は、いつもお店で食べる麺ですね。
肝心の出汁の方は、お店で食べる甘辛い独特の味に似ていますが、わずかながらこちらの方が上品というか、甘さも控えめに感じます。個人的にはこちらの方が好みです。
それにしても、尾崎牛の美味いこと!
この甘辛い出汁には、肉うどんが一番合うと思っていましたが、このとろけるような柔らかさと上質な脂の甘さは贅沢の極みですね。
素揚げのゴボウとの相性もよく、へべすの香りと酸味も良いアクセントになっています。
たまたま隣に座った麺師匠が頼んだ「海老天うどん」(800円)。
「海老天」もうどんをシンプルに味わうにはいいトッピングですね。
そしてこちらは、これまたたまたま隣に座ったY社長に、写真撮りたいからと無理やり頼んでもらった「宮崎野菜の大盛流揚げ出しうどん」(800円)。
素揚げしたパプリカの赤やかぼちゃの黄色など彩が美しい。
この他にも、「かけうどん」や「夢創鶏とりなんばん」など全部で6種類のうどんが出されていましたが、さすがに全部の写真は撮れませんでした。
この日は、予想以上の来場があり、最後は麺が足りなりほどでした。お披露目の会としては、大成功だったのではないでしょうか。関係者の皆様、お疲れさまでした。
創業100年を超える老舗の、現状に甘んじない新たなチャレンジ。老舗といえど、変わらないために変えなければならないことがあることを、4代目の挑戦は教えてくれます。
新製品が売れるかどうかよりも、新製品を生み出す過程で、自社の出汁や麺の特徴、強みを再確認し、未来へ向けた方向性を確認する作業ができたことが大きいような気がします。
「大盛うどん」のチャレンジはこれからも続くことでしょう。我らテゲツー!も、チャレンジを忘れないようにしなければ。