参照元:えびの市広報
田を守り豊作をもたらす神「田の神」は、東北地方では「農神」甲信では「作神」瀬戸内海沿岸では「地神」と呼ばれています。田植え時や稲の借り上げの際、お祭りを行う風習が全国各地に残っています。
鹿児島県と宮崎県西南部では、「田の神」を石に刻み豊作を祈願する風習があります。宮崎県西南部では、「田の神」のことを「田の神さぁ」と呼び、約150体の石像「田の神さぁ」がえびの市に残されています。九州の米どころとして知られるえびの市の「田の神」について紹介します。
豊作への願いが込められた「田の神」
参照元:えびの市 地域おこし協力隊
えびの市にある「田の神」の像は、大きく分けて「神官型」「農民型」「地蔵型」の3つに分類されます。しかし、どれとして同じ顔がなくそれぞれ個性豊かで神秘的です。
地蔵型「田の神さぁ」
地蔵型は、最古の田の神像と伝えられています。数は少なく、これが石像のはじまりで、優しい雰囲気をしています。自然の石に近く、自然の力を感じます。
神官型「田の神さぁ」
衣冠束帯に近い形で手にしゃくを持っています。霧島噴火の被害地方に多く、宮崎県ではじまったものとされています。
農民型「田の神さぁ」
シキをかぶり、右手にメシゲ、左手におわんを持っています。表情は豊かでユニーク。市内に最も多く「田の神」の代表とされています。
盗んでも3年後お土産つけて返します!?「おっとい田の神さぁ」
参照元:えびの市広報
えびの市南岡松地区には、「おっとい田の神さぁ」と呼ばれる「田の神さぁ」が祀られています。「おっとい」とは、「盗む」という意味で、たびたびどこかへ持ち去られた「田の神さぁ」を意味します。
よその田の神をもってきてしまう風習は、「田の神おっとい」といわれ古くから行われてきました。「おっとい」の相談がまとまると、力自慢の男たちが夜に田に侵入。かつぎ出します。「田の神」は、盗まれるのを好むとされ、持ち去る前には、礼儀として田に置き書きをする習慣がありました。
もちさった田の神は三年で返すというルールがあり、その頃になると、手紙が届き、盗んだ村のものたちが総出で田の神を車に乗せ、米俵やもち、酒を添えて返しにやってきます。出会った二つの村は、そこで「田の神受け取り」の宴をひらきました
参照元:えびの市観光協会
えびの市南岡松の田の神は、たびたび「おっとい」があったことから、縄でくくられるようになりました。さまざまな村に愛された「田の神」は、今ここで静かに田を見守っています。
豊かな水田に宿る神
えびの市では、他では見られない「田の神さぁ」が畦道で静かに実りの秋を待っています。日本の棚田百選に選ばれた「真幸棚田」が西内堅地区に広がり、訪れる人の心を和ませます。
「田の神さぁ」に見守られ、ひたむきな情熱をこめてつくられるえびの市の米はまさに神秘の米。
えびの市の米は、「えびの産ひのひかり」「えびのひのひかり」「真幸衆」「旬感みのり」「宮崎県産ひのひかり」」「にこまる」というブランドで販売されています。