安心安全な魚を持続して食べ続けられるために-「しまうら真鯛」の挑戦!


しまうら真鯛の挑戦トップ画像
(画像提供:九州築地)

みなさん、こんにちは!宮崎のよもやまライター、やのゆりです。

農畜産業がさかんな宮崎で長年取材・執筆活動をしてきて、野菜やフルーツ、お肉に関する取材はたくさんやってきました。
今回、なんと「お魚」に関してお話を聞く機会が到来。
そこで見聞きした内容がとても衝撃的だったので、テゲツー!を通してみなさんにお伝えしたいと思い、初めて登場させてもらうことにしました。

目次

将来、魚が食べられない日がくる!?

AFC認証付きのチリ産サーモントラウト
(画像提供:九州築地)

みなさんは「ASC認証」って聞いたことありますか?
私は、宮崎市で魚卸売業を営む『九州築地』の築地加代子社長からお話を聞くまで、全くもって知りませんでした。

ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)という国際NPO(本部はオランダ)が、海洋環境や労働条件・地域との関わりなど社会に配慮した水産物養殖場に対して行っている認証で、簡単に言えば「養殖魚の安心安全や持続可能性を保証するマーク」と言えます。

「ASC認証」マークが付いていれば、その商品が環境と社会への影響を最小限にした「責任ある養殖の水産物」であることが証明されています。

一方、天然の水産物に対しては「MSC(Marine Stewardship Council)認証」というものがあります。
「海のエコラベル」「海を守るマーク」と言われ、こちらも店頭で探せばマーク付きの商品が販売されています。

いずれにしても、魚を買う際にこれらの認証マークのついた商品を選ぶことで、持続的に魚を食べていける可能性が高くなる、とのこと。

そう聞くと、…あれ?と思いませんか?

そうなんです。今後、私たちは持続的に魚を食べていけなくなる可能性もある、ということなのです。

世界の水産資源で「十分に利用できる」のは、わずか7%!

世界の水産資源の状況
※「The State of World Fisheries and Aquaculture 2022 (FAO))」より(Edu Town SDGsのサイトより転載)

日本は今、人口減少時代に突入し、魚食量も低下してきていますが、世界を見ると人口はますます増加していき、現在の約80億人から2050年には90億人に達すると予想されています。
基本的なタンパク質不足に加え、世界的な健康ブームも相まって、良質なタンパク源である魚の需要はますます高まっていきます。

しかし、漁業資源は有限です。
国連食糧農業機関(FAO)の調査によれば、上の図のように、世界の水産資源の9割以上は、ほぼ限界まで利用されるか獲り過ぎの状態で、まだ十分に利用できる資源はわずか7.2%しかありません。

近年は、海水温の上昇等で、これまで獲れていた魚が獲れなくなったり、獲れる魚が変わったりしており、海に囲まれた日本でも、魚が獲れにくい国になってしまっています。

今後は、「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換、環境に負荷が少ない持続可能な養殖漁業が求められています。
しかし、養殖魚に対する需要が急速に高まったことにより、世界中で養殖場の建設による環境破壊や水質汚染、養殖場から逃げ出した魚による生態系への悪影響、養殖魚に対する過剰な薬剤の使用、エサとなる魚の乱獲など、環境や社会に対する様々な問題が顕在化するようになりました。

「ASC認証」が養殖魚の世界基準に!

asc認証マーク
asc認証マーク(画像提供:九州築地)

そこで注目されているのが、環境や社会への影響を最小限にしたサステナブルな養殖による水産物の証「ASC認証」。
近年、世界ではASC認証製品が広がっていて、日本でも市場拡大の方向です。

それなら、もっと多くの養殖業者がどんどんASC認証を取得すればいいのでは?と思われるかもしれませんが、認証取得には高いハードルがあるんです。
厳しい基準がいくつも設けられていて、しかも毎年の調査や3年ごとの認証の更新には、多くの手間と費用がかかるのだそうです。

予備審査の様子
海上生簀の下の泥をすくい、生物がきちんと生息できているかを確認している予備審査の様子(画像提供:九州築地)

現在、国内でASC認証を取得した養殖場は19件と決して多くはありません。
でも、今後養殖業者は、「選ばれる魚」を生産していく必要がありそうです。

宮崎県内を見ると、2017年12月に串間市の黒瀬水産(日本水産の連結子会社)が、ブリ類としては世界初のASC認証取得という快挙を成し遂げています。全体でも国内2例目というのはすごいですね!

▶参照:国内ASC養場の認証状況

可能性を秘めた延岡市島浦の「しまうら真鯛」

島浦島にある木下水産の海上生簀
島浦島にある木下水産の海上生簀(画像提供:九州築地)

そんななか、宮崎県内の養殖魚を飲食店等に卸している『九州築地』の築地加代子社長が着目したのが、「しまうら真鯛」。
築地さんにとっても、サスティナブルな養殖魚が宮崎に存在するかどうかは、将来の経営にもつながる大事な問題。養殖業者という一次産業従事者への感謝の思いを込めて、「宮崎の魚を世界レベルに押し上げたい」と考えているのです。
「しまうら真鯛」は、延岡市島浦の「木下水産」という真鯛専門の養殖業者が、長年培ってきた高い技術力と徹底した管理により育てており、なにより島浦島の地形が生む素晴らしい養殖環境があります。

しまうら真鯛
しまうら真鯛(画像提供:九州築地)

「しまうら真鯛ならいける!」
そう確信した築地さんは、木下水産へ「ASC認証取得を一緒に目指しませんか?」と声をかけ、そこから宮崎県2例目(マダイとしては国内で3例目)のASC認証取得に向けた動きがスタートしました。

「一緒に」というのは、ASC認証取得に協力すると同時に、ASC認証魚を扱う業者全てがそのトレーサビリティ(追跡可能性)を守るための「CoC認証」が求められるため、九州築地としても認証取得の必要があるからです。

木下水産の専務・木下拓磨さんと九州築地社長の築地加代子さん
木下水産の専務・木下拓磨さん(左)と九州築地社長の築地加代子さん(右)(画像提供:九州築地)

「養殖魚は天然魚に劣る」との世間の認識を覆したい木下水産。
持続可能な養殖業を支え、日本の魚を未来の子どもたちへ残したい九州築地。

2社の、また個人としてのいろんな思いが共鳴しあって、今まさにASC認証取得という高いハードルに立ち向かっています。

九州築地がクラウドファンディングに挑戦!

クラウドファンディングトップ画像
(画像提供:九州築地)

今回のASC認証へのチャレンジに合わせ、九州築地は6月14日〜7月23日までの40日間、CAMPFIREでのクラウドファンディングに挑戦中です。
これは、認証取得に限らず、海洋資源とくに日本の魚の危機を訴え、消費者自身も地球環境を考えた消費活動が必要だという思いを広く伝えることが目的です。

築地社長自身、4人の子どもを育て上げた母であり、今ではかわいいお孫さんのいる身。
プロジェクトページの文章には、未来の子どもたちへ日本の魚を、大切な自然環境を残していきたいという思いが強く表現されています。
下記の築地社長のFacebookへの投稿も、併せてぜひご一読ください(クリックするとFacebookの投稿が開きます)。

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この記事を書いた人

県内各地に散らばる寄稿者用の統一アカウントです。
宮崎県内の地元の人だからこそ知っているおすすめの「グルメ」「観光」情報を軸に、地域の安全安心につながる情報の提供にも取り組んでいきます。

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