たまに街に出て、ノマドワークで喫茶店などで原稿書くこともあるDiceです。
美郷町渡川で山師をやっている今西兄弟が、宮崎市内にコワーキングスペースを作ろうとしていることについては、9月に
「美郷町渡川の山師兄弟のチャレンジが熱すぎる!!」
という記事でお伝えしたところですが、その今西兄弟から、
「『コワーキング』×『リノベーション』×『ポートランド』というイベントやるので来てくださいよ。」
というお誘いがあったので、美味しい野菜料理が食べられるイベントのお誘いを断って、会場のActors Square Coffeeに出かけてきました。
司会進行は、今西兄弟の兄・正さん。つかみ担当。
この日も、トレードマークのドレッドヘアが決まっておりました。
コワーキングスペースをひらく3つの理由
続いて挨拶に立ったのが、弟の猛さん。
猛さんが、コワーキングスペースをひらきたい理由は、次の3つ。
(1) ヒトをつなぎたい
「渡川には20代の女性が5人しかいないんです。
一方、宮崎市の中心市街地は人口が増えてます。
高齢者も増えていますが、若い人も増えていて、その理由は、IT企業を市が一生懸命誘致していて、『マチナカ3000』というプロジェクトも動いています。
ここと、渡川をつなぎたいんです。絶対に面白いことになります。
しかし、宮崎市から渡川まで車で2時間かかるので、なかなかつながらない。
そこで、コワーキングスペースなんです。一つのお店でつながることができます。」
(2) モノもつなぎたい
「渡川山村商店で、椎茸や舞茸などをインターネットを通じてレストラン等に販売していますが、それだけではまだまだです。
更に攻めに攻めて、街に届けたいと考えています。
コワーキングスペースに直売所も併設して、渡川の物産を販売できればと考えています。」
(3) 街と山で一緒にコトを起こしたい
「街だけ、山だけ、じゃなくて、街『も』、山『も』という関係ができればいいと考えています。
自分が若い時に、若草通に憧れて通って来ていたように、若い世代が憧れる格好良い、大人の集まる店にしたいんです。
ファッションとかじゃなくて、働く大人の姿の格好良さを伝えられるような。
そんな場所を、みんなで一緒に作っていきたいと考えています。」
ということで、この日のメインゲストのお話に。
当事者意識とセルフリノベーション
この日のメインゲストは、鹿児島県出水市でSTYLE HOUSEを運営する、(株)新屋建築・代表取締役の新屋祐一さん。
お話のテーマは、「当事者意識とセルフリノベーション」。
1975年、出水市生まれの新屋さんは、工務店の2代目。
新屋さん曰く「田舎の工務店で大工の仕事をしていた」ある日、高校の同級生から一本の電話がかかってきました。
その同級生が、東京から奥さんを連れて帰ってきて、実家をリフォームして住みたいので、工事を頼みたいと。
同級生の頼みだからと二つ返事で引き受けた新屋さんを、打ち合わせの席で待ち受けていたのは、東京でアパレルの仕事をしていてデザインにこだわりの強い、「意識高い系」の奥さんからの様々な注文。
その注文の「ハードルが想像の域を超えていた」らしいのですが、そこで凹まないのが新屋さんのスゴいところ。
そこから猛勉強して、これは「リノベーション」ってやつじゃねぇ?と思い立ち、手っ取り早くリノベーションを学ぼうと、リノベーションスクール@北九州に参加。
しかし、その場は新屋さんが考えていたのと全然違っていたらしいのですが、そこでセルフリノベーションコースを知り、オーナーを巻き込んでリノベーションすることが格好良いことを知ったのでした。
そこで学んだことを生かして、同級生夫婦を巻き込んだリノベーションで物件を注文どおりに仕上げ、そこからセルフリノベーションの輪が次々に伝播して、住宅、カットスタジオなどのリノベーションの依頼を受けるようになったのだそうです。
セルフリノベーションを取り入れるようになって、新屋さんが気づいたことは、クレームが無くなったこと。
「商品を買う時は、傷ひとつ無い状態を求めますが、セルフリノベーションで作業を経験すると、職人の凄さや苦労への理解が生まれ、オーナーが自分達で施工した部分については、素人なりの妥協が生じます。
そうなることによって、自分たちで簡単な補修や修理もできるようになるので、子ども達が家を汚すことへのストレスが減り、子どもの活動を見守ることができるようになります。
そして、自分の家に愛着を持ったり、他の人に自慢したいと思うようになります。」
ということで、新屋さんは新築にもセルフの部分を取り入れるようになり、最近では、「お任せで!」という注文も来るようになったのだとか。
その新屋さんが最近手がけたのが、隣の阿久根市に2016年9月29日にオープンした「HARVEST」。
食肉販売会社の(株)三九が所有していた空き倉庫をリノベーションして、特産品直売所に仕立てたものということで、ここでも壁の塗装などセルフリノベーションを行って、社長を始め従業員が参加したのだそうです。
新屋さんがリノベーションで大事にしていることは、
「街を象徴するモノや物語を入れること」
なのだとか。
セルフリノベーションの効用について新屋さんは、
「それにやることによって『当事者という意識』が生まれ、できた『場』が、人の想いを伝える媒介役になる。」
と話されました。
そして、
「想いの伝播によって進化する社会が、自分の欲しい未来」
と言う言葉で、お話を締めくくられたのでした。
ポートランドのリアル
新屋さんのお話に続いて、新屋さんと、そのお仲間である迫田琢磨さん(家具職人)、福留敦巳さん(写真家)の3人による、ポートランド視察旅行のレポートがありました。
ポートランドについては、「全米で住みたい街No.1」ということで、私もここ1年で2度ほど、実際に行った方からのお話を聞いたりする機会があったのですが、今回は、工務店の新屋さんと家具屋の迫田さんの目線で切り取られたポートランドについて、写真家の福留さんが撮影した写真をスライドに投影しながらのお話。
男三人旅は、結構、珍道中の部分もあったみたいで、なかなか面白いお話だったのですが、ここでは長くなるので残念ながら割愛させていただくとして、なぜポートランドがこうも人々を惹きつけるのかという点について、3人の結論は、
「当事者意識の街」だから、
ということでした。
住んでいる人達が、自分事として街のありようを考え、時には行政と対峙しながらも自己決定していっていることが、街への誇りや愛着を生み、それが他の地域の人々を呼び込む要因にもなっているということなのでしょう。
我々の街も、そうありたいものだと思います。
ここまでのお話を伺って、確信したのは、
「もうこれは、今西兄弟は、絶対にセルフリノベーションでコワーキングスペースつくるね。」
ってこと。しかも、いろんな人を巻き込んで。
目当ての物件の契約が難航しているみたいなので、その日がいつになるのかは、まだわかりませんが、楽しみにしておきます。
わざわざ鹿児島から来ていただいた新屋さん、迫田さん、福留さん、有意義なお話、ありがとうございました。