テゲツー!焼酎担当のDiceです。
毎月第2水曜日に開催の「本格焼酎ドット恋」例会も、ついに1周年、12回目を迎え、5月の例会は、都城市にある柳田酒造合名会社の5代目当主・柳田正さんを迎えて、5月11日(水)に「まごころダイニングやまぢ」で行われました。
柳田酒造合名会社については、昨年12月に蔵訪問記をアップしていますので、合わせてお読みください。
「麦焼酎専業からのチャレンジ。過去から未来へ!-柳田酒造合名会社」
ゲストは、その柳田酒造合名会社の5代目当主・柳田正さん。
工学部卒で、東京で企業のエンジニアとして働いていた時、父親である4代目・勲さんが身体を壊したため、29歳の時に帰郷して蔵を受け継ぐことにしました。
今でもエンジニアの血は生きていて、お風呂に入っている時に温度ムラの無い浴槽の謎に触れ、浴槽を分解して対流を生む構造のヒントを得て、自ら蔵の蒸留器を改良するほどの工学通でもあります。
乾杯は「赤鹿毛」で
開始の時刻に近づいた頃、乾杯の焼酎づくりが始まりました。
1杯目に選ばれたのは、正さんのデビュー作とも言える、麦焼酎の「赤鹿毛(あかかげ)」。
大麦を原料に、中圧蒸留でやや低めの温度で蒸留され、25度に調製されています。
まず、おもむろに手に取った一升瓶の天地を返した柳田さん。
理由を伺ったら、
「アルコールと水では比重が違っていて、瓶を長く立てておくとどうしても軽いアルコールが上の方に集まってしまうので、こうしないと上の方が下よりも濃くなってしまうんですよ。」
とのこと。
豆知識ゲット!
この日のために蔵から持ち込まれた「千本桜」のロゴの入ったグラスに、「赤鹿毛」を2割注いでから、よく冷えたソーダを8割注いだソーダ割りに。
乾杯用は、軽く飲めるように2:8のソーダ割りがお薦めなのだとか。
普通に飲む場合、ソーダ割りは、焼酎に慣れていない人は2:8、標準は3:7、濃い目が好きな人は4:6が良いとのこと。
同社の「赤鹿毛」や「青鹿毛」であれば、薄めに思える2:8でも、香りがふわっと来て、十分に楽しめるそうです。
ということで、全員分のソーダ割りが完成したところで、乾杯!
確かに、くいっと飲めて、麦の香りが炭酸に乗って広がり、美味い!
料理も運ばれてきました。
一品目は、「鴨トロ生ハムのサラダ」。
この鴨の生ハムがほどよい塩加減と濃い旨味で絶品。
思わず翌日も訪問して、同じ物をオーダーしてしまいましたよ。
夏限定!「夏の赤鹿毛」
二杯目は、赤鹿毛つながりで「夏の赤鹿毛」。
今でこそいろいろな種類が各社から出ている「夏の焼酎」ですが、4年前に柳田酒造、渡邊醸造場、小玉醸造の3社の若手杜氏が、20度、青い海と白い雲をテーマに、夏向きの焼酎を造ろうと話し合ってできたのが最初。
柳田さんは、「赤鹿毛」をベースに、酵母を宮崎産の「平成宮崎酵母」に変え、酒質を一から設計して、優しくすっきり飲める麦焼酎を作り上げました。
ラベルも、文字は一切使わないデザインを求めて、都城市在住のデザイナー、上野宗宜さん・本村美穂子さん夫妻に依頼。
ご夫婦でATFT GRAPHICS.(アタフタグラフィックス)を営むお二人の手によるラベルは、クリアなブルーボトルとマッチした光沢のあるブルーのインクで、マットな白地に若い女性向けのイラストが描かれ、これまでの焼酎にない、優しくオシャレな雰囲気に仕上がりました。
この「夏の赤鹿毛」をロックでいただきながら、食べる料理は、
「牛さがりと大根、こんにゃくの味噌煮込み」。
ちょっと濃い目の味付けで口の中でほろほろとほどける牛さがりを、キリッと冷えた麦香る焼酎で流し込む幸せ。
復活の芋焼酎「母智丘 千本桜」
三杯目は、「母智丘 千本桜」。
正さんが35年ぶりに復活させた芋焼酎ですが、この日の「千本桜」はちょっとスペシャル。
ボトルはノーマルな「母智丘 千本桜」ですが、中身は蔵に残っていた春バージョンの「霞 千本桜」。
そう、麹米に高原町産の山田錦を使った、フルーティーな香りと甘みが特徴的な焼酎です。
春に飲んだ時より、さらに熟成が進んで、まろやかさが増している気がしました。
ここに登場の、「アボカドのビール揚げ」。
カリッと揚がった衣の中に覗く、グリーンのアボカド。
美しさはもちろんのこと、ほっくり、ねっとりとした食感と旨味が、力強い芋焼酎をしっかり受け止めてくれます。
日本で最初の全量麦仕込み「駒」
「駒」は、正さんの父・勲さんの時代に、日本で最初に作られた麦100%の焼酎なのだとか。
勲さんは、「麦焼酎」という名前を独占するのは卑怯だと考え、銘柄をどうするか考えていましたが、折しも宮崎は新婚旅行ブームで、その中でも一番感動を呼び印象深い場所が「都井岬」であり、推古天皇の歌にも「馬ならば日向の駒」と歌われているように古来から知られていたことから、全国に名を馳せる焼酎にしたいと「駒」と命名したのだそうです。
駒の命は足、ということで足つながりでもないのでしょうが、次なる料理は「いかげそ唐揚げ」。
減圧蒸留ですっきりした「駒」との相性も抜群。
「青鹿毛」
「赤鹿毛」に続いて、3年がかりで正さんが開発した「青鹿毛」は、常圧蒸留で麦チョコの香り。
この香りを生むために、自ら改良を続ける蒸留器の中で、焦げるか焦げないかのギリギリのラインで蒸気を当てているという正さん。
「青鹿毛」のネーミングは、実在した「サンデーサイレンス」という青鹿毛の競争馬の筋肉隆々とした力強さをイメージしたのだとか。
この「青鹿毛」は、今回、日本航空(JAL)の『九州本格焼酎応援プロジェクト』の第一弾として行われた「“日本のひなた”宮崎県産 本格焼酎グランプリ表彰式」()で、見事グランプリ3銘柄のひとつに選ばれ、今年の9月まで、JAL国際線ファーストクラスラウンジや国際線サクララウンジにおいて提供されることになったそうです。
「日本で一番美味しい麦焼酎」と言う女性もいるほどファンの多い「青鹿毛」に合わせるのは、これまた力強い美味さの「鶏手羽ぎょうざ」。
プリッとした皮を噛み破り、ジューシーな肉餡を味わいつつ、香ばしい麦焼酎をロックでくいっと。陶然となるひととき。
さて、いかがでしたでしょうか?
一人娘の桜子さんに将来的に蔵を引き継ぐために、柳田正さんは、毎日のように焼酎のことを考え、改良を積み重ねています。
それと平行して、海外に目を向けてマーケットの拡大を目指したチャレンジも始まりました。
単なる美味しいだけではない、都城の小さな蔵の挑戦を、これからも追いかけてみたいと思います。
次回は6月8日(水)、正春酒造編
本格焼酎ドット恋6月の例会は、6月8日(水)に「まごころダイニングやまぢ」で開催の予定です。
次回のゲストは、西都市にある株式会社正春酒造の元社長・黒木裕章さんと若き現役ブレンダー・上脇寛義さんの予定。
お申し込みは、こちらから(残席少数)!