こんにちは、ライターのヒロです。
今回は、2025年3月に串間市で創業された宮崎県内最新のビール醸造所、「凪の音(なぎのね)ブルーイング合同会社」をご紹介いたします。
凪の音ブルーイングの醸造所がある場所は、なんと閉園した「やまびこ保育園」の跡地。
内部には、代表の田村 崇(たむら たかし)さん(写真左端)とご家族の写真が飾られていましたが、この場所は、かつて田村さんの娘さんが通い、義母が勤務していた場所でもありました。
鹿児島県大崎町出身の田村さんは、志布志市にある焼酎蔵で人生の半分ほどを過ごし、仕込みから全国の酒屋への営業まで忙しい日々を過ごされていました。
多忙のためなかなか子育てに参加する時間が無い中、串間市出身の奥様と相談し、2014年に串間市に移住して、隣町の志布志市へ通勤しながら杜氏としての腕を磨いていきます。
やがて、末っ子の大病を機に、家族で過ごす時間を増やそうと、串間市での酒造りを思い描き始めました。
20年以上携わってきた焼酎ではなく、クラフトビールの道に進む決意をした理由を伺ったところ、
「クラフトビールは、生産規模が大きくなく、設備的にも1人で管理できます。
10年後には、クラフトビールを地酒にしたいんです。」
という答えが返ってきました。
こうして、勤めていた焼酎蔵を2024年に退職し、クラフトビール製造の準備を進めて、2025年3月に「凪の音ブルーイング合同会社」を設立して起業したのでした。
醸造所の壁には保育園時代の面影が残っていて、田村さんはあえてそのまま残しているとのこと。
未来を担う子供たちに見守られている様でした。
クラフトビールを製造するための発泡酒製造免許は、年間で最低6,000ℓの製造義務がありますが、年間最低600,000ℓの製造が必要なビール製造免許に比べて製造規模のハードルが低く、小規模に始めやすい利点があります。
醸造所内は驚くほどミニマムな設備環境で、ほぼ田村さん1人で、行き届く範囲の仕込みを行っています。
手作りの麦芽粉砕機は、凹状の器具に電動ドリルが付けられたシンプルな構造。
タンク設備は無く、全て寸胴鍋。
左がお湯、中央はマッシュ(麦芽に熱湯を加え、発酵させる為の糖化の工程)、右は麦汁の製造に用いられます。
寸胴・冷蔵庫は、宮崎市にあった醸造所(現在は廃業)から引き継いだものだそうです。
発酵タンクは、業務用冷蔵庫内に納められていました。
醸造に携わる方は皆、温度管理が重要と語られますが、こういう工夫は小規模醸造ならではですね。
瓶詰め・ラベル貼り・打栓などの工程は、6人のお子さん達が手伝うこともあるそうです。
フラッグシップの商品は、「やまびこエール」(写真左)。
ラベルに描かれた絵は、醸造所の外壁に「やまびこ保育園」時代から描かれているもの。
風味づけに国産(時期により串間産)のレモングラスやオレンジピールを使用しています。
この為、酒税法上は“ビール”ではなく“発泡酒”にはなりますが、引き締まったフルーティーさ、飲み飽きしない優しい苦みが特徴です。
また、シャンパンの発酵過程で用いられる瓶内二次発酵という製法により、瓶詰め後も酵母の力でゆるやかに熟成が進むため、きめ細かい泡立ちが生まれ、長期熟成を前提としていて賞味期限が設定されていません。
この為、贈答にもお勧めなんです。
写真右は、やまびこエールをベースに高温発酵でよりフルーティーさを増した「トイミー」。
ラベルは、都井岬で印象に残った一頭の馬へのオマージュととして、田村さん自身が描いたもの。
これまでオンラインを中心に販売し、2年目は全国にも取扱店が増加しました。
ラインナップも、定番の「やまびこエール」のほか、季節の素材を活かしたシリーズが話題となっています。
例えば、串間産の柑橘・せとかを用いた「SETOKA2026」は300本弱の生産数でしたが、せとかの香り成分や、厚み・奥行きのある苦味が好評を博しました。
ビールと、オレンジワイン(白ワイン用のブドウを赤ワインの製法で造る風味強い淡色ワイン)の中間のような不思議な風味が最大の魅力です。
そして現在は、不知火(しらぬい)を用いた新作を仕込み中です。
「せとかよりも糖度が高かった」そうで、甘みと苦みのバランスがユニークで特徴的な新作になりそうです。
「まずは地元の方々に飲んでもらわないと。そして認めてもらう事。
醸造をしつつ、商品についての情報や魅力を外へ発信していくのが大事」
と田村さん。
「クラフトビールを地酒に」という目標については、20年以上も國酒造りに携わってきた者ならではのジレンマもあったと思いますが、原料として串間産の材料を使う事や、役目を終えた麦芽が堆肥になり、その堆肥で育った材料で次のビールを、という循環型の生産体系は、今後地域に根ざしていく造りと言えると思います。
「土地を醸(かも)す、串間を醸す。そういう事です」
という田村さんの一言に、全てが集約されている気がしました。
「凪の音ブルーイング」のビールは、造り手である田村さんの情熱やお人柄がそのまま瓶に詰められているかの様です。
串間という土地に根ざした新たなお酒、ぜひお試しください。
【凪の音ブルーイング合同会社】
住所:宮崎県串間市大字大平3397 → MAP
電話:0987-55-7923
直売所営業時間:土曜・日曜 10:00~17:00
Instagram:@naginonebrewing
オンラインショップ↓