テゲツー!の焼酎担当、Diceです。
これまで6回レポートをお届けしてきた「本格焼酎ドット恋」ですが、4月の例会は、日南市北郷町に本社・工場のある(株)酒蔵王手門の焼酎ををテーマに、「居心地屋やまぢ」で開催されました。
(株)酒蔵王手門は、1895(明治28)年、日南市飫肥で創業した門下酒造を源としており、代表銘柄である「銀滴」は、1935(昭和10)年に昭和天皇が来県された際に献上酒に選ばれるなど、その味には定評のある蔵でした。
1995(平成7年)に王手門酒造合名会社に社名を変更。2005(平成17)年に北郷町の現在地に蔵を移転し、2009(平成21)年株式会社化を図りました。
しかし、親会社の経営難から2014(平成26)年に民事再生を申請することとなり、2015(平成27)年11月2日に現在の(株)酒蔵王手門として再出発。
120年の伝統を受け継ぎつつ、斬新なネーミングとデザインを持った焼酎を生み出しています。
今回、蔵から来ていただいたのは、笑顔がにこやかな営業の田中靖之さん。
今回は参加希望者が多くて、いつもの「まごころダイニングやまぢ」ではなく、本店である「居心地屋やまぢ」を貸し切って行われたのですが、部屋が分かれたために、あちこちに移動しつつの対応で、大変そうでした。
1杯目に選んだのは、王手門酒造時代に造られた定番銘柄の「不阿羅王」(ファラオ)。
黄金千貫を原料に白麹で仕込まれた焼酎で、常圧と減圧それぞれで蒸留された原酒をブレンドして25度に調製して造られているのが特徴。
田中さんは、素材の味を生かす白麹仕込みなので、お湯割りで飲んでほしいとのこと。
料理の方は、まずはサラダから。
2杯目にいただくのは、「不阿羅王」を超えた味わいを求めて、紅寿芋を原料に黒麹で仕込まれた「超不阿羅王」。
これも、常圧と減圧のブレンドで25度に調製されています。
こちらは、黒麹でスッキリとして甘さが立つので、ロックがお薦めとか。
これに合わせる料理は、宮崎料理の定番、チキン南蛮。
タルタルソースは別皿に入っているので、かける、かけないはお好みで。
続いては、宮本武蔵の生き様をモチーフに構想されたシリーズの第一弾、「悪のくろぶか」。
悪童と言われつつも、みなぎるパワーとやり場のない状況からもがき出ようとする様をイメージして造られたこの焼酎は、国産の麦を原料に麦麹(黒麹)仕込みの常圧蒸留で28度とややアルコール度数高め。
荒々しいのかと思いきや、麦の芳しい香りと甘み、コクのある焼酎でした。
面白いのはこのラベルで、「惡」の字が裏文字になっています。
「悪」の反対は「良」、すなわち、最良の焼酎であるとの意味合いが込められているそうです。
これに合わせるのは、やはり定番の鶏炭火焼。
麦の香ばしさと炭火焼きの香りのハーモニ-。
続いては、武蔵シリーズ第三弾となる「銭にあらず」。
本当なら、第二弾の「牢」についてもレポートしたいところですが、残念ながらこの日のラインナップには入っていませんでした。
武者修行に打ち込む青春期の武蔵をモチーフにしたこの焼酎は、黄金千貫と紅寿芋を原料に、麹も白と黒の両方を使い、減圧蒸留で仕上げて27度に調製されています。
爽快な青空のようなイメージを感じさせるために、ボトルはクリアなブルー。
減圧でスッキリと軽快な飲み口で、ロックで飲むのに適した焼酎だと思いました。
これには、肉しゅうまい揚げのおろしポン酢。
カリッと揚がった皮をかみ切るとほとばしる肉汁を、軽快な芋焼酎で流し込む幸せ。
宮本武蔵シリーズの最後を飾るのは、「超越」。
剣の道を極め、超越した境地にたどり着いた武蔵を表現するのは、甘みの強い鳴門金時芋を原料に、独自開発の高温発酵仕込みで濃厚な風味を加え、常圧蒸留で25度に調製された芋焼酎。
甘みの奥に程よい酸味が感じられ、香りも含めてバランスの取れた円熟の味わいと言えるでしょう。
冒頭で説明したように、「銀滴」は明治期の門下酒造時代から受け継がれている、蔵を代表する銘柄で、蒸留器から滴る焼酎が、銀色に輝くように見えたことから名づけられています。
基本の「銀滴」は、黄金千貫を原料としていますが、この「あか銀滴」は、紅あずまと宮崎紅という2種類の紅芋を原料に、黒麹で仕込まれ、25度に調製されています。
甘みが強く、芳醇な香りを持つ焼酎です。
この焼酎をがっちりと受け止めるのは、これまた定番料理である、やま手羽から揚げ。
この日7杯目となる、「鉄拳九十九」(てっけんくどく)。
白い和紙のラベルに、筆文字でシンプルに「九十九」とだけ。
最後の「九」が裏文字となっている理由は、田中さんに聞く余裕がありませんでした。
陸奥圓明流の継承者・陸奥九十九を連想させる(知らない人は『修羅の門』を読んでね)この焼酎は、黄金千貫よりデンプン質の多い「白豊(シロユタカ)」という品種の芋と、紫芋の「綾紫(アヤムラサキ)」を原料に仕込まれています。
同じ芋でも、こちらの料理は山芋のフライ。
ジャガイモともサツマイモとも異なる、食感と味わい。
毎月開催されているこの例会、11回目ともなると、マスメディアもほっとけないのか、主催者の黒木素弓さんが、宮崎日日新聞の井口記者から取材を受けていました。
宮日さんよりも早くから取材を続けているテゲツー!、先見の明ありか!?
そして、最後を飾る8杯目の「まだこ」。
田中さんからお話を伺うと、原料は黄金千貫ですが、無加水で30度に調製されているとのことで驚き。
通常は、40度前後で終える蒸留を更に続けるということは、それだけ雑味が増えることになるので、味のバランスを取るのが難しいはずです。
こんな造りを行う酒蔵は珍しい。
口に含むと、予想どおり基本となる甘みの奥に、酸味、苦みなどが入り混ざった複雑な味わいが感じられました。
料理の最後は、鶏雑炊。
みやざき地頭鶏の出汁の滋味深い味をたっぷりと吸った米粒が美味い!
以上、焼酎8種類と、やまぢ本店自慢の料理、堪能し尽くしました。
復活なった(株)酒蔵王手門、これからも伝統を受け継ぎつつ、斬新な焼酎造りを続けていただけるように、応援してます!
日南市北鄕にある同社では、蔵見学も可能とのことですので、お近くにドライブされたら、是非お立ち寄りください。
本格焼酎ドット恋5月の例会は、5月11日(水)に「まごころダイニングやまぢ」で開催の予定です。
次回のゲストは、都城にある柳田酒造合名会社の柳田正さん。
お申し込みは、こちらから(残席少数)!
【(株)酒蔵王手門】
住所:日南市北郷町大藤甲898-8 ⇒ マップ
TEL:0987-21-7717
蔵見学営業時間:10:00~16:00
定休日:日曜日