昨年10月に本格焼酎ドット恋でお話を伺った工藤さんと、その名が焼酎の銘柄にもなっている杜氏の金丸潤平さんに会いに、日南市飫肥にある小玉醸造合同会社に行ってきました。
向かって右が「杜氏潤平」こと金丸潤平さん。左が蔵長の工藤洋愼さん。
小玉醸造は、通常は蔵見学を受け入れていませんが、特別に蔵の中を見せていただきました。
この日は今シーズン最後の原料芋の入荷ということで、JA串間市大束から「やまだいかんしょ」が届きました。
2t車に満載された甘藷は、100ケース。
これを蔵人4人で下ろします。
どうです、この見事な「宮崎紅」。
焼き芋にしても美味しい品種なのですが、今年は地元での六次化の取組が活発化し、加工用に回る芋が多かったため、焼酎の原料用としては価格が上がったとのこと。
1回の仕込みで、麹200kgに対し、この芋を1t使うのだそうです。
洗浄が終わった芋は、両端を切り落とし、必ず割って中を確かめてから、蒸し器で一度に蒸されます。
蒸し上がった芋は、こうして蒸し器の下からマッシュ状になって押し出されてきます。
このあたりの工程は焼酎蔵によって違うのですが、潤平さんによれば、
「こうすることによって芋の溶けが良くなるので、自分としてはこの方が合っている。」
とのこと。
蒸し器から出てきた芋は、すぐ隣にある仕込み室で、米麹と水、酵母によって仕込まれた酒母の中に投入されます。
ここから約10日間、二次仕込みと言われる工程で、芋の糖分がアルコールに変わっていきます。
これが、発酵中の二次もろみ。
アルコール発酵では二酸化炭素が発生するので、ブクブクと盛んに気泡が上がってきています。
この時、熱も出るのですが、温度が上がると酵母の働きを阻害してしまうので、上がりすぎないようにコントロールするのが大事なのだそうです。
これが、小玉醸造の蒸留器。
発酵の終わった二次もろみをこの蒸留器に入れ、アルコールを抽出します。
蒸留器の大きさや形もまた、焼酎蔵によって異なります。
工藤さんは、
「この形が、うちの焼酎の味を決めるひとつの要因なんです。」
とおっしゃってました。
小玉醸造の玄関の軒下には、杉玉が飾られています。
杉玉は、日本酒の造り酒屋などで新酒ができたことを知らせる看板の役割を果たすものです。
杜氏である潤平さんは、この蔵に戻る前に日本酒の蔵で修行していたことがあり、米麹の仕込みはその時に習得した手麹の手法を取り入れています。
この杉玉には、そうした日本酒の文化を焼酎の仕込みにも生かしていることにも関係があるのかなと思いました。
改めて、事務所で潤平さんからお話を伺いました。
事務所に飾られていたボトルが、この蔵を代表する銘柄になります。
左上がフラッグシップと言える「杜氏潤平」。
その右のブルーのボトルが、季節限定の「夏の潤平」。
潤平さんは、
「今年の『夏の潤平』は、楽しみにしていてください!」
と、かなり自信ありげでした。
何やらこれまでと原料の一部を変えたらしく、どういう味で出てくるのか、とても楽しみです。
そして、その右下が、この記事が公開される頃には仕込みの始まっている、麦焼酎の「潤の醇」。
その右隣には、「杜氏潤平」の原酒と華どりが並んでいます。
昨年9月のイタリア・ミラノを皮切りに、今年の1月にはアメリカ・ニューヨークでの試飲会、2月末にはフランス・パリと、世界を視野に焼酎の展開を考えている潤平さん。
海外での経験は、いろんな刺激になっているようで、日南特産のレモンと焼酎のコラボで、「リモンチェッロ」のようなリキュールを作ることも考えているのだとか。
「芋焼酎は、柑橘の香りと相性がいいので、面白いと思うんですよ。」
とおっしゃっていました。
まだ、具体的な計画にはなっていないようですが、飫肥観光の途中、小玉醸造の店先で、リモンチェッロを飲んだりできるようになると、何やら楽しげではありませんか。
飫肥の町は、まちなみコーディネーターを公募して再生に向けて動き出しており、その飫肥のまちなかにある小玉醸造も、どのように再生に貢献できるかを模索しているところのようです。
伝統を受け継ぎつつ、世界を視野に入れて動き始めた杜氏・金丸潤平と工藤蔵長を初めとする蔵人の皆さんの挑戦を、これからも楽しみにしています。