寄稿者:あんDo 宮崎は食の宝庫、その中でも児湯にはたくさんの美味しいものが溢れている。 その魅力を少しでも知ってもらいたいと日々思う新米フードアナリスト! 料理を作るのも食べるのも好きな髭おやじです。 日向特産のへべすにはまってしまった、あんDoです。 平成28年7月に日向市の人財育成事業として始まった、「地域で稼ぐ」人材を育成する、地域資源を活かした超実践講座「日向ドラゴンアカデミー」の最後を飾るプレゼンテーションが行われるというので、出かけてきました。 これまでに、 第1回「稼ぐ力の構築・地域ビジネスで、世界を変える」 第2回「地域資源を活かす・離島ジオパークで学ぶ」 第3回「地域マーケティング戦略」 第4回「クラウドファンディングで資金を集める方法」 と行われ、今回が 最終章「未来プレゼンテーション」 日向の地域資源であるへべすの販路開拓について、これまでソーシャルビジネスを学んできた成果をもとに、日向市のほか、県内の大学生、東京、熊本、佐賀など全国から集まった19歳~45歳の受講生23人が、4班に分かれてプレゼンテーションを行いました。 悟空:へべすでオリンピック公式飲料をめざします! 最初にプレゼンを行ったチーム悟空からの一言は、「へべすでオリンピック公式飲料をめざします!」。 へべすを飲料にし、日向の特徴でもあるサーフィンを活用して販路開拓をしていこうと考えた彼ら。 なぜ飲料にするのかと言うと、料理の付き合わせに使われるかぼすやすだちと同じような用途では、認知度が違い、同じ土俵では勝てない。 そこで、日向では昔から焼酎や牛乳などの飲料と組み合わされていることに着目。 彼らがまず行ったことは、講座で学んだ「現場主義」の実践。 お倉が浜でサーファーを対象に、4種類のへべすドリンクの試飲会とヒアリングを実施し、その結果得られたものは、へべすが知られていないこと。 しかし、この試飲会自体が認知度の向上になっていると感じたのだそうです。 また、試飲会から、サーファーは体力を消耗し糖分を欲することから、「ヘベネード:へべすシロップに炭酸水」と「エナジーへべす:ポカリのような経口保水液にへべす果汁」に人気があることに着目し、これらの2種類を対象に商品化することを考えました。 次に商品化に向けて、「ヘベネード(炭酸飲料水)」はお洒落なカップに、「エナジーへべす(健康飲料水)」はペットボトルにと提案。 また、その容器に、最近ヒットしている「ヒュー! 日向」のロゴを使いたいと提案すると、その場で日向市長がOKを出すという、嬉しい計らいもありました。 製品のプロモーションには膨大な金額がかかります。 そこで着目したのが、お倉が浜に来ているサーファー。 8割が県外からというそのサーファー達にへべすを知ってもらうことで、口コミやSNSによる拡大を徐々に狙い、最終的には2020年オリンピック公式飲料を目指すと意気込みを訴え、発表が終わりました。 土屋有先生の講評 画像出典:日向ドラゴンアカデミーFacebookページ 講評を行ったのは、ドラゴンアカデミー第3回の講師でもある土屋有氏(宮崎大学地域資源創生学部講師)。 「チャレンジ! 何も無いところから具体化してくると、ダメだししか来ません。 これから進むと、より一層ダメだししか来ません。」 と厳しい指摘。 ではどうするか。 「商品開発の一定のタイミングまで無視すればいい。 じゃないと、へべすは今までと一緒、この先なにも始まらない。 チャレンジを連続しないといけない。 応援団よりも、お客様を見ないといけない。 サーファーに試飲してもらったのを続けなければダメ。 ターゲットでない人の意見を聞いてもしょうがないから。」 と的確なアドバイスを送っていました。 この講評を聞いて、すごく的確で、前を向き進む勇気をもらったのではと思いました。 めがねーず:めがねでへべすの未来を見通します 続いてのチームめがねーずからの一言は、「めがねでへべすの未来を見通します」。 彼らのターゲットは、サラリーマン。 サラリーマンの昼食に欠かせない清涼飲料水には、脂肪に関するキーワードが書いてあること、また、お茶や水より高いダイエット飲料を買いたいと思う消費者のニーズに着目。 そこで、サラリーマンを対象に健康に関するアンケート調査を行い、食事に気をつけているが、ダイエットのための特保飲料が主体で、健康のための飲料は定着していないこと、といった結果を得ました。 そして、へべすには、癌を抑制する成分「ナツダイダイン」が、柚子の37倍と圧倒的に多く含まれていることに着目。 そして導き出したコンセプトは、「サラリーマンの味方 へべすウォーター」。 オフィスのデスクには常に何かしらの飲料が置いてあるというチャンスを活かし、その飲料をへべすウォーターに変えること。 そのために、オフィスの場にいつでも飲める冷蔵庫を完備し、1本100円で提供するというアイディアを提示。 では、どうやって取り組むのかというと、 「フェーズ1としては、飲料水のメーカーもある宮崎で製造まで完結させ、日本ハムや旭化成など、宮崎にある全国区の企業に導入してもらうことで、オール宮崎で盛り上げる。 フェーズ2として、フェイズ1で導入された企業の、何百、何千人と社員がいる本社のオフィスを発信拠点に、人から人、部署から部署で繋がっていくことで、コストが掛からないプロモーションを行う。 へべすの魅力を伝えた上でのアンケートの中で、『へべすウォーターを買いますか?』との問いに、63%が買うと答えました。 オフィスの中では、1人平均2~3本くらいのお茶や水が日常的に飲まれています。 それが、1本100円で買え、抗がん作用もあるとなれば、売れないはずがありません。」 と力説し、発表を終わりました。 長友慎治さん(ひむかBizセンター長)の講評 画像出典:日向ドラゴンアカデミーFacebookページ ゲストの長友慎治さん(ひむかBizセンター長)より、質問とアドバイス。 「癌の抑制効果があるところに注目しているのはいいと思いました。」 と着目点に触れながら、ナツダイダインの含まれる他の食品のことや、宮崎の癌患者数の割合などの質問をした後に、 「宮崎は、全国で43位と癌患者数は低い。 宮崎の中で、もし、へべすを一番使っている日向市の癌患者数が低いという裏づけがあれば、これはイケるのでは。 また低ければ、癌になる確率を『へべすウォーターで下げていきましょう』というキャンペーンができ、自治体も協力してくれて、オール宮崎で取り組める意義になる。」 とのアドバイスを送り、すごく可能性があると称賛されました。 プレゼンの中で、しっかりとデータ化してるところと、費用のかかるプロモーションを支店から本社、会社から会社へつなげる発想が素晴らしいと思いました。 続いて、3番手・もぐらーずのプレゼンは、こちらから。 3番手は、もぐらーず もぐらーず:秘密のアイテムでへべすの未来を掘り進めます チームからの一言は、「秘密のアイテムでへべすの未来を掘り進めます」。 まずは、クックパッドでへべすを検索すると6品と少ないことから、へべすは、ポテンシャルに見合うだけの地域の食文化になっていないことを問題視。 そこで、特に健康効果についてアピールしていくために、テーマである秘密のアイテム「へべ之巻き」によって、へべすを常備菜にしたいと考えました。 そして、ドラゴンアカデミーの講座で学んできた、ユーザーの声を聞くことを実践し、次のようにユーザーの分類を行いました。 潜在ライトユーザー:情報感度が高く健康に気を使うような30代を中心とした、たまに購買意欲を持つユーザー。 潜在ヘビーユーザー:ライザップ系の高額料金のジムトレーナーなど、糖質制限の中でフルーティーなものからクエン酸、アミノ酸が取れると魅力を感じるような健康課金系ユーザー。 これらの潜在ユーザーに、へべすの魅力を知ってもらい、実際に手にとって食べてもらって気軽にリピートしてもらうソリューションを作るために考えたのが、「へべ之巻き」と「へべすティック(へべ楊子)」。 「へべ之巻き」は、写真が無いのが実に残念ですが、忍者が持つ巻物風な円筒状の容器に、へべすが3個入ったものです。 ふたをかぱっと開けると、裏には秘伝のレシピや優れた機能性成分、どこで買えるかなどの情報が満載です。 「へべすティック(へべ楊子)」は、またまた写真がないのが残念ですが、刺す、回す、絞るという3ステップだけで果汁が抽出できる優れもので、実際に使用方法を実演してその機能性をアピールしました。 そして、 「潜在ライトユーザー向けには、へべすゼリーを入れたセットや、へべすと合う食材との組み合わせ販売、ふるさと納税のお返しとして販売することで定期購入につなげるなど、いろいろな販売を行います。 潜在ヘビーユーザー向けとしては、芸能人や著名人の多いジムを対象にし、そこからSNS等で発信することで、フォロワーもターゲットとしていきます。」 とし、 「マーケット規模、リピート率の向上、調味料以外のレシピ、薬機法や景表法など、まだまだ検討するところもあります。」 と問題点を提起して発表を終えました。 主任講師の斉藤潤一さんより一言 画像出典:日向ドラゴンアカデミーFacebookページ 「プレゼンテーションの工夫が良いと思いました。 『伝える』を重要視していて、伝える伝わるのプレゼンテーションでした。」と称賛。 また、 「マーケティング調査を踏まえて、どうやったら食べやすくなるだろうというところを、実践してみたのも良かった。」 と、『へべすティック』の着想を褒め。最後に、 「他のチームとも組み合わせでいろんな事もできそうなので、工夫して進めていけばよいと思います。」 とアドバイスしました。 プレゼンの中で出てきた『へべすティック』は、爪楊枝を使って絞るやり方よりも簡単で、これは私も欲しいと思いました。 わさわさ:新しい農業の形を提案します チームからの一言は、「新しい農業の形を提案します」。 へべすは、生産数が減っていて加工しようにも物がない状況があるので、その生産を増やすことに着目。 へべすの生産農家は、30代が3%の一方、55歳以上が95%で、10年後、20年後には生産する人がいなくなる可能性があり、実際に高齢化の進展とともに、2008年から生産量は徐々に右肩下がりの状態なのだそうです。 その背景としては、へべすの樹の寿命が25年といわれている中、未来に希望が持てないので植え替えをする人がいないことも要因とのこと。 生産を増やすためには、販路を拡大することが必要なのですが、そこで登場したのが、へべす生産者でもある黒木洋人さん。 自ら吉祥寺の居酒屋にへべすを持ち込んで使ってもらったところ、お客さんの方から「へべす美味しい!」と声が上がり、今では、「へべすサワー」が吉祥寺界隈の飲食店50店舗ほど利用されていると報告。 そこから、 「新しいものが好きで、積極的にSNS等で拡散してくれるアーリーアダプターやインフルエンサーをターゲットとして、爆発的なヒットを狙いながら、健康志向の人達も取り込むことで、長期的な目線で売れていくようにしたい。」 と語りました。 更にその経験から、へべす生産の活性化、地域創生のために、オーナー制度としての「接農」を提案。 「農業体験交流型、販売加工型、作業参加型などのような観光農園ではなく、提案していきたいのは、就農交流型、保全支援型です。 就農交流型とは、へべすの苗を1万円で購入して現地で植えてもらい、オーナーとなるもので、特典として、定期的な成長記録の配信、1年に1回の現地での生産者との交流会を企画します。 保全支援型とは、へべす保存会を設立し、へべすの管理や収穫をサポートしていただいた方へ現物を支給していくものです。 へべす農家の現状では、人件費を出す余裕は無いので、この様な形でのサポートはすごく助かります。」 とのこと。 「オーナー制度の課題として、へべす農園を専門で管理する人材や、情報発信を行う人材が必要です。 また、オーナーを受け入れる拠点や組合等の組織を作ることも必要です。 オーナー制度は、消費者が生産者を直接知ることで安心安全であることを確認でき、生産者と消費者の架け橋となります。 『就農』とは、いきなり農家になるのではなく、投資型就農で、投資することによって他の人が管理する農業であり、今後生産者が少なくなる時代の新しい農業のスタイルだと思います。 この様な形で、広報活動、農業体験を軸にして、日向が受け入れ口になることで日向も活性化し、農作物も豊かになっていくシステムだと考えます。 国民全員がへべすの木を買って、一家に一本のへべすの木があり、日本の食卓には必ずへべすがあるという『一億人総へべす』を目指したいです。 日向ドラゴンアカデミーで学んだことは、地域創生を担う若者とばか者とよそ者が盛り上げていくことです。」 と力説し発表を終えました。 長友慎治氏(ひむかBizセンター長)の講評 「生産者の黒木さんが提案されていることなので、へべす農家さんが確実に助かるのであれば、オーナーを募ってやるだけだと思います。 高齢化で担い手がいないということでしたが、逆の見方をすれば、高齢者でも続けていける農業や接農であるのではないでしょうか。 へべすは、息の長く農業を続けられる果物であるとブランディングし、日向市の移住事業とコラボして、『日向でへべすの農業やりませんか』とアプローチできるのでは。 情報発信については、1月から『ひむかBiz』が立ち上がりますから、安心して任せてください。」 としっかりとアピールもされていました。 「オーナーの受け入れについては、現在生産を行っている農家さんにしっかりと『接農』を説明して共感をもらい、実際にオーナー制はいい事ばかりだとアピールして、へべすを救おうとする人を増やしてください。」 と激励されました。 へべすのオーナー制度、すごく興味深くて、オーナーになりたいと思いました。 また、講評での逆転の発想は素晴らしいと感動しました。 以上で、全チームのプレゼンテーションが終了となりましたが、各チーム販路拡大に向けての様々な取り組みがあり、どのチームも最後までやり遂げていただいて、その成果を見てみたいと感じました。 更に、期待の若手が登場した特別枠はこちらから。 特別枠で、期待の若手登場! 特別枠での発表 これで終わりかと思ったら、へべすの被り物をつけ、「へべべ~」と言いながら登場したのが、アカデミーの受講生の一人で、県立農業大学校の一年生、神林光さん。 被り物すると、「へべす君」に変身です。 「僕には夢があります。」 と語りだしたへべす君。 高校3年生の夏に、勉強や部活もいいけど18歳の今しかできないことが他にあるんじゃないかと思って高校を退学し、そこで農業と出逢ったのだそうです。 農業と出逢ったきっかけは、祖母のニラ作り。 祖母が作るニラは、誰もが認める品質で、ニラ部会の方々も習いに来るほど自信を持っていいものですが、市場に出すとどれも同じになり価格も低いまま。 これではダメだと思い、消費者の方に、本当の価値と本当の美味しさが伝わる農業をしていかないと感じたのだそうです。 そして、8月にこの「日向ドラゴンアカデミー」に入り、それまで全く知らない、食べたことも無かったへべすと出逢い、魅了されていきます。 講座を通して、現場に行き生産者の声を聞いたり、調べたりする中で、へべすの現状を知り、その魅力を知り伝えたくなった彼は、同じ受講生でもあるへべす生産者農家の黒木洋人さんと共に、自費で「東京ハーヴェスト」に行き、へべすの被り物をつけてPR。 また、吉祥寺での人気の現状を視察した中で、へべすへの熱い想いや、手ごたえを感じて帰ってきました。 この経験を通して、へべすの味や香りといった商品力と合せて、人の想いも伝えながらへべすを販売していこうと思ったそうです。 「日向ドラゴンアカデミーで学んだ、地域ビジネスは、地域資源をPRするだけでなく、しっかりと課題と向き合っていくこと。 また、その課題をチームみんなで、いろいろな視点から多角的に解決することによって糸口ができると学びました。 この学んだことを、しっかりとビジネスに繋げて、『儲かる』ということが大切です。」 と強い口調で訴えてました。 現在、少しだけですが、へべすの営業販売をさせてもらっている光くん。 これから1年、さらにへべすを販売していくために、東京や大阪でへべすのイベントを企画したり、インターネット販売やオーナー制度、日向での「へべす祭」をしていこうと奮闘しています。 主任講師の斉藤潤一さんより一言 光くんの頑張りを一番近くで見てきたのが、主任講師の斉藤潤一さん。 「感動して泣いてしまいました。 へべすを全く知らなかった19歳が、『へべすを仕事にしたい!』と言っていることが、日向ドラゴンアカデミーを象徴しています。 応援していかないといけないと思いました。」 と、少し涙声になって話します。 「ビジネスは教えられても、想いや情熱は教えることができません。 受講生の想いが、良い日向ドラゴンアカデミーになっていると感じました。 一年後を楽しみにしています。」 と締めくくりました。 その後、ゲストからの講評と終了証の授与式が行われました。 これからの日向ドラゴンアカデミー 画像出典:日向ドラゴンアカデミーfacebook 日向ドラゴンアカデミーは、「稼ぐ力」を持つ人材を育成するところからスタートした講座。 主任講師の齋藤さんは、 「稼ぐ力」とは、「顧客の視点から価値を生み出す」、「改善したり挑戦しよう」、「稼ごう」と考え方を変えていくこと。 「受講生の、考え方、物の見方、感じ方、それを変えようと考えて取り組んできました。 変ったなと感じながら、1年後、3年後が楽しみで、日向にとってよい人材が揃ったのではないかと思います。 税金で行ってますので、やめる権利は無いです、しっかりと日向市に還していってください。 このプランは、今日で終わりでは無いので、どんどん改善して実践していって欲しい。」 と受講生に伝えていました。 アカデミーこれで終わりではなく、1期生も引き続き、講座に入り考えてきたことや体験について教えていってもらいながら、来年も、しっかり「稼ぐ力」を構築できる人材を作っていこうということでした。 今後のテーマについては、まだ構想の段階ではありますが、 「ひょっとこ」で世界中から観光客をよぼう! 「サーフィン」を学び体験、 「へべす」は更にしっかり売っていきましょう ということで、1期生、2期生、3期生となるに連れて、日向の課題が解決し、地域経済が成長していくアカデミーにしていきたいとのこと。 どのプレゼンにも、たくさんのヒントと学びがあり、とても興味深く聞くことができました。 各チームのこれからを見て行きたいと思うとともに、2期生に申し込みたいな~と思う、あんDoでした。 あ~「稼ぐ力」を身につけたい(笑) 【日向ドラゴンアカデミー】 Facebook: https://www.facebook.com/hyuga.link/ Webサイト:http://hyuga.link/