一番好きな刺身は何かと聞かれたら、「新鮮なカツオ」、しかも「雌節(腹側の身)の皮をひいてないやつ」と答えるDiceです。 そんな私の元に、「日南漁師のカツオバル」なるイベントが開かれるという情報が届いたとあらば、行かない訳にはいかないでしょう(爆)。 ということで、2015年3月13日(金)に、会場のカリーノ地下「まんまーる」に行ってまいりました。 今日の鰹は8kg級 出迎えてくれたのは、日南市・目井津港で揚がった8kg級のカツオ。立派ですね。 日南市のカツオ漁は、2月から始まって12月まで続くので、この季節は初鰹と言って良いでしょう。 「目に青葉 山ホトトギス 初鰹」という江戸時代の俳人・山口素堂の俳句があるように、初鰹は初夏のイメージがありますが、それは、季節によって北上するカツオの旬が関東では初夏だっただけのこと。宮崎では今が旬なのです。 日南カツオ応援団 今回の漁師バルは、カツオ好きの有志で組織する「日南カツオ応援団」の主催。 その応援団を代表して浅野龍昇さんが、日南のカツオのことをもっと知って欲しいと挨拶。 (この日はカメラ忘れて、スマホのカメラで条件悪い中撮ったので、写真がいまいちで申し訳ない。) 浅野さんは、宮崎県漁船保険組合の職員で、日南市南郷町のカツオ船主の息子でもあり、カツオ一本釣漁の置かれている現状をとてもよく理解している一人です。 そして、その現状を少しでも改善すべく、いろんなことにチャレンジしようとしています。 先日も、地産地消のための新たなカツオブランド創設のために、ロゴデザインをクラウドソーシングで募集したばかり。 そんな浅野さんの熱い思いを手助けし、宮崎で美味しいカツオをもっと食べられるようにしようということで、応援団が結成されたのでした。 “ボニート♥ボニート”も応援にキター! 日南カツオ応援団を応援するため、地元日南市からは、油津商店街を拠点に日南カツオをPRするために活動している小学生アイドルグループ“ボニート♥ボニート”もやってきました。 「ボニート(bonito)」は、英語で「カツオ」の意味ですね。スペイン語では「かわいい、美しい」という意味もあるようです。 80席満員御礼の客席も、“ボニート♥ボニート”の可愛い踊りに拍手喝采!。 今後はオリジナルソングもできるといいなと思いました。 カツオ萌え~の新聞記者 可愛いPR隊の踊りで会場がほんわか温まってきたところで、最初に登場したのは、宮崎日日新聞の奈須貴芳記者。 実際にカツオ船への乗船経験もあり、その体験談は『黒潮の狩人』(宮崎日日新聞社)という本にも収められている、カツオ萌え~の人。カツオ愛に関しては、ほとんど変態と言ってもいいかもしれない。 その奈須さんは、パワポのスライドをスクリーンに投影しながら、日南のカツオは以下の5つの点でカッコいいと言う。 1. 東日本大震災の復興に貢献している。 2. 一本釣りの漁獲量が21年連続で日本一。 3. 江戸時代から続く伝統漁法。 4. 資源に優しい漁法。 5. カツオそのものも、カツオ船もカッコいい。 そして、一本釣漁は、巻き網との戦いに立ち向かうラストサムライのようであり、カツオ漁師は「黒潮の狩人」と呼ぶにふさわしい格好良さがあるのだと。 更に、日南市の31隻のカツオ船の水揚げは日本一であるにも関わらず、カツオの消費が日本一なのは高知市で1世帯当たり年間9,107円なのに、宮崎市は10位で2,103円という事実も突き付けるのです。 そのあたりの詳細については、続いて行われたパネルディスカッションに引き継がれます。 続きはこちら 5人の達人が語るカツオの現状とこれから 5人の達人が語るカツオの現状とこれから パネルディスカッションは、左から 奈須貴芳さん(宮崎日日新聞)、 岩切孝次さん(かつお一本釣り漁船「第8三代丸」船主)、 築地加代子さん((株)宮崎活魚センター代表取締役)、 谷村勝德さん(港の駅めいつ支配人)、 竹井友子さん(日南市漁協女性部加工グループ代表)。 そして、右端のモデレーターは田鹿倫基さん(日南市マーケティング専門官)。 奈須さんは報道、岩切さんは漁師、築地さんは流通、谷村さんは販売、竹井さんは加工と、それぞれの道の達人たち。 この5人から、話を引き出す田鹿さんは、これまたマーケティングの達人。 短い時間でいろんな話が出たのですが、特に中学生の時からアルバイトでカツオ船に乗っていたという岩切さんの語るカツオ漁の歴史や船での生活実態が特に面白かった。 昭和30年代までは日南でもカツオを地元で加工しており、当時は鰹節製造でも14~15の業者があったが、その後(大手の鰹節業者のいる)鹿児島県の山川や枕崎に揚げるようになって今があるとのこと。 高知と違って、宮崎の人はシビ(若いマグロのこと)やシイラが主で、カツオをあまり食べなかったのが、消費量の差に繋がっているらしい。 日南の郷土料理になっている「カツオ飯」も、昭和40年代にカツオ船に乗り始めた頃は船内に食品を保存する設備(冷蔵庫など)が無く、漁師は四つ足のものを船に乗せないという風習もあって、米とカツオしか食べるものが無い環境からできた漁師メシなのだとか。 「カツオ船では、釣れても釣れなくても交代でカツオの群れを探して見張りをしており、いつでも操業ができるように寝るのも仕事」 とか、 「『日向の三段釣り』という言葉があるように、一人前になると返しの無い針で3秒に1匹を釣り上げるが、その一人前になるのに3年はかかる」 とか、なるほど、なるほど、という感じ。 そして、5人が口を揃えて言うのは、地元での消費がもっと増えるように、PRや情報発信に力を入れて行きたいということ。 そのために、竹井さんや谷村さんがやっているような加工や直販もあるし、魚食普及の取り組みもあるのだ。 ということで、いかに新鮮なカツオが美味しいのか、実際に食べてもらって知って欲しいと、今回のバルが開かれたのでした。 さあ、ここから食べるよ! 続きはこちら そして魅惑のカツオ料理の数々 そして魅惑のカツオ料理の数々 ゲストが話をしている間に、和食担当の嶋村シェフがカツオを捌いていきます。 まず最初にサーブされたのは、「目井津獲れ魚介とお野菜のかにまき汁仕立て(ブイヤベース仕立て)」。 日南市の海の幸と山の幸のマリアージュ。山太郎蟹の汁に泳ぐ鰹と筍や春野菜。 前菜としていろいろ並べられていた「日南お野菜のビュッフェ」の中で、真っ先に無くなっていた茸蔵の原木椎茸も追加で炭火焼に。いつもながらてげ美味!。 「初鰹食べ比べ」は、刺身、湯引き、洋風の3種。 「鰹とマイヤーレモンの冷製パスタ カラスミ添え ミントの香り」 これは、今回のメニューの中でイチ押しだった。 「鰹の桜蒸し」 もう春ですね。 そして、嶋村シェフが鮨を握る。 「山桜で燻製した鰹の握り」 冷燻でほのかに桜の香りをまとわせた鰹は、なんとも上品に。 「鰹のミキュイ 長津さんの津之輝蜜柑の紺フィー 春菊のピューレ 酒谷野菜の付け合わせ」 「鰹めし」 お茶漬けにしない、お上品な鰹めし。 デザートは、「酒谷のライムエクレア “春の日南線”」 いやー、もう大満足!。 普段は刺身や和風に煮炊きしたものばかり食べているけど、これだけ新たなバリエーションを見せられると、カツオの可能性がますます広がりますね。 カツオは捨てるところがほとんど無い魚で、今回は使わなかったけれど、骨はあら炊きにすると鰤とはまた違った美味さがあるし、内臓は塩辛にできるしで、余すとこなく楽しめます。 これを機に、宮崎県内のカツオの消費を伸ばしていって、高知を凌駕するカツオの街を作り上げていきましょう!