さすらいのグルメ、Diceです。 宮崎が食材の宝庫であることはいまさら言うまでもないことですが、素材の良さだけが際立って、残念ながら料理や食文化全体の評価にまでは至っていない現状があります。 そんな現状を打破して、宮崎を国内外から食で人の呼べる場所にしたい、そう、スペインの美食都市サン・セバスティアンのように、世界中から美味しいものを求めて人々が集まる都市にしたい、というプロジェクトが密かに進行しつつあるとの噂を聞きつけたので、リサーチに行ってまいりました。 宮崎を代表する鮨屋「一心鮨 光洋」 プロジェクトの会合が行われたのは、2015年5月30日(土)の午後、場所は、宮崎市昭和町にある「一心鮨 光洋」。宮崎を代表する鮨店のひとつです。 ちょっと高級感のある郊外店なので、気軽に普段使いという感じのお店ではありませんが、12席のカウンターにテーブル席のほか、大小5部屋の和室もあって、お祝い事やお客様のおもてなしなど、至高の料理とともに雰囲気を味わうのにぴったりのお店。 カウンター席の正面にある大きな窓越しに見える中庭の緑も美しく、ちょっと背伸びしてカウンターでランチなんていうのも憧れる。 さて、そうこうしている間に、開始時間が近づいてきました。中に入ってみましょう。 今回の仕掛け人はこの人々 中で我々を出迎えてくれたのは、この3人。 右から、「一心鮨 光洋」の大将・木宮一洋さん、西橘にある老舗洋食店「らんぷ亭」のシェフ・藤澤賢二さん、人やモノやコトを繋げることを仕事にしているカテナ株式会社の代表取締役・宮田理恵さん。 和食の技を極める木宮さんとフレンチの藤澤さんが、それぞれの持つ技やレシピをシェアしながら、これまでとは違う新しいステージを切り開いて行く、そんな試みの記念すべき第一回目のイベント。 宮田さんはそこに、渉外・広報担当として関わりつつ、食事とともに供される飲料の担当ということでも参加されていました。 木宮さんは最近、店を離れてお茶王子のいる「HAKUGENDO CHAYA」や西橘の焼酎スタンド「立ち呑みたたんばぁ」などで不定期に鮨を握ったりと、積極的に活動されています。 このイベントも、その延長線上にあるのでしょうか。 そもそもこの試みは、「Fooding Miyazaki」という、宮崎在住のシェフ達で作るグループが、お互いのジャンルを超えて、シェフとしての知識や経験をもとに、宮崎の食の魅力の再発掘や、地域食材や食文化を伝えようとしる活動の第一歩なのだそうです。 「Fooding Miyazaki」では、 伝統的な食材や味を守り、さらなる新しい表現の追求。 イベントや食育活動を企画し、食の楽しみ方や新しいメニューの発信。 お互いの持っている技やレシピをシェフ同士、参加者とも共有し、オープンソース化を図ることで、宮崎全体の食文化の発展を追求する。 といった活動を今後続けていく方針とのこと。 詳しくは、カテナ株式会社のサイトで宮田さんが書かれた下記の記事を参照してください。 「《FOODING MIYAZAKI》宮崎の食の魅力を再発掘!『ランプ鮨光洋 WITH 宮田理恵』」 これから、Webサイトができたり、いろんなイベントが仕掛けられたりするようですので、テゲツー!としても注目していきたいと思います。 さて、能書きたれている間に準備が整って、料理が運ばれてきましたよ。 続きはこちらから 和食とフレンチの融合した絶品料理! 和食とフレンチの融合した絶品料理! まず最初に運ばれてきたのは、 空豆 豆腐 貝の旨味を含ませた日南ムラサキウニ コンソメジュレのせ 以下、料理名はこの日、参加者に配られたメニュー表に基づいてます。 季節の空豆を茹でて裏ごしし葛粉で固めた空豆豆腐の上に載せられているのは、日南産のムラサキウニですが、殻から外したウニの身を貝でとっただし汁に浸して旨味を含ませるというひと手間をかけるというのがプロの技。 続いて2品目は、 宮崎フレッシュスイートコーンの 冷製スープとかき揚げ 「ゴールドラッシュ」という品種のスイートコーンは、今がまさに旬。もぎたては生でかじれるほど、粒皮が薄くさわやかな甘みが詰まっています。 これを玉ねぎとともに炒めてミキサーにかけシノワで濾してから、コーンの香りと味を邪魔しない昆布出汁でのばして、スープに仕上げてあります。 優しい甘さのスープで、これから来る料理のために胃をほどよく活性化させてくれます。 スープの横に添えられているのが、同じ「ゴールドラッシュ」の実をかき揚げにしたもの。 味付けに塩が振られているのですが、この塩加減が、思わず唸るほどに絶妙! サクッと揚がった食感も嬉しい。 3品目は、 鯵と綾産日向夏のサラダ メニュー表では「鯵と日向夏のサラダ」ですが、実際には一皿に二種類の鯵料理が盛られていました。 産地の違う鯵が使われているということでしたが、どこの産地のものだったか聞き漏らしてしましました。 輪切りの紅大根で蓋をされた小鉢の方は、鯵のたたき。 刻んだオクラと青ネギと一緒に和えられています。 もう一つの方が、酢締めした鯵の切り身の上に日向夏が載せられたサラダ仕立て。 この日は日向夏の時期にはちょっと遅かったのですが、ここで使われた日向夏は、季節を外れても楽しめるように冷温貯蔵されたものとのこと。旬の味と香りを損なうことなく、爽やかな酸味と甘みを鯵の身に加えてくれていました。 鯵の締め加減も絶妙で、さすがは一流の鮨屋の仕事! 続いて、 のどぐろと豆ごはんの蒸しずし テニスの錦織選手の好物ということで一躍有名になった「ノドグロ」は、日本海の魚というイメージがありますが、日本からオーストラリアまで太平洋西部に分布する「アカムツ」の通称で、宮崎でも水深100~200mの沖合に住んでいます。 「白身のトロ」と呼ばれるように脂が乗っており、口に入れるとホロリとほどける上品な白身から濃厚な旨味がほとばしってきます。 それを、蒸されて酢の酸味をほとんど感じることのない豆ごはんの蒸しずしが受け止めて、噛みしめる喜びを倍増させてくれます。あぁ、丼で食べたい! 5品目は、 太刀魚のインパナータ 「インパナータ」とは、パン粉をつけて焼き上げた料理のことなので、「太刀魚のパン粉焼き」なのですが、これがプロの手にかかると簡単には行きません。 マンゴー、梅干、大葉、日向夏の皮をみじん切りにしたものを合わせてフィリングを作り、それを三枚におろしてカットした太刀魚の身の片面にぬり、ロール状に巻いてからソテーし、仕上げにパン粉を載せて焼き上げるという行程を踏んで供されています。 インパナータももちろん美味しいのですが、付け合わせに添えられたトマトがまた美味いこと。 柔らかな酸味と甘みのバランスが良く、旨味が濃縮されたトマトでした。 6品目に登場したのは、 鮨3種 宮崎ゴーヤガリ いか / 中トロ / 甘エビ&宮崎マンゴー さすがに鮨屋の鮨は美しい。 手前から、いか、中トロ、甘エビですが、醤油つけなくていいように、どれもちゃんと仕事がしてあります。 これらの中でも今日の白眉は一番奥の甘エビ。 写真ではよくわかりませんが、このエビの身の下に、マンゴーの果肉が忍ばせてあって、エビの甘みに更に濃厚な甘みとフルーティーな香りを加えています。 鮨にトロピカルなフルーツを合わせることに抵抗もありそうですが、これが実に違和感なくマッチして、広がりを作り出しています。 7品目、 肉丼 赤しゃり 使われている牛肉は、岡崎牧場のものだとか。 岡崎牧場といえば「パイン牛」で有名です。 その牛肉を西京味噌に漬け込み、焼き上げた後にしばらくおいて肉汁を落ち着かせてからカットし、かぼちゃを煮て甘さの移った汁で炊きあげたご飯で作ったしゃりの上に載せてあるという丼。 味噌を焼いた香ばしさと西京味噌の甘さの移った牛肉は、見てのとおりレアっぽい焼き加減ながら中には十分に火が入って脂が活性化していて、適度に水分の抜けた歯応えのある食感とともに、ずーっと噛んでいたくなる嬉しさがあります。 これも、もっと大きな丼で食べたい逸品でした。 デザートとして供されたのは、 あくまき キャラメリゼ 甘酒のソースとほうじ茶のアイス 宮崎の伝統スイーツ「あくまき」が、フレンチのシェフの手によって変身。外側に砂糖をまぶしてフライパンでキャラメリゼしてから一口サイズにカット。供された時点でほんのりと温かい。 その横に、宮崎産のほうじ茶で作られた冷たいアイスが添えられて、冷熱のバランスを持ったデザート。 藤澤シェフが、最後の挨拶で「甘酒のソース」かけ忘れたと言っていたのはご愛敬。 最後の一品、 宮崎マンゴーのジェラート 添えられているのはヒーリング効果のある薬草として知られているカモミールの花托。花びらも少し残っていますね。 口に入れると意外とさっぱりとしたジェラートですが、甘みと酸味のバランスの取れた宮崎マンゴーの美味しさが感じられて、最後を締めるに最適の一品でした。 全9品、宮崎の食材の素晴らしさを改めて感じるとともに、二人のシェフの技量、新たな地平へ向けたチャレンジを知ることのできる幸せな時間を過ごすことができました。 この日参加された27名のお客様もみな、大満足の様子でした。 これを皮切りに、これから「Fooding Miyazaki」としていろいろなイベントが仕掛けられることと思います。 たくさんのシェフがここに参加されているようですので、次はまた違ったシェフ達による新しい宮崎料理が楽しめることでしょう。期待したいと思います。 最後に、二人のシェフからいただいたレシピのプレゼントをテゲツー!の読者のみなさんにもシェアしましょう。 続きはこちらから 二人のシェフからのプレゼント 二人のシェフからのプレゼント この日の参加者には、供された料理の中から2品のレシピが配られました。 地域の食材や食文化を広めるためには、単に食べるだけではなく、美味しいと思ってもらったら、どうやって作るのだろうという興味を持ってもらい、その次に自分も作ってみたいと思ってもらうことが大事なのだろうと思います。 二人のシェフからのプレゼント、テゲツー!の読者の皆さんにもシェアしますので、是非、これを参考に料理にトライしてみたください。 スイートコーンのスープ ■材料<4人分> 宮崎フレッシュスイートコーン 4本 玉ねぎ 1/2玉 バター 適量 昆布出汁 適量 塩 少々 <下準備> スイートコーンは実の部分をそぎ切りにし、芯の部分は、ひたひたの水をはり、香りが出るまで煮出す(コーン水)。 ■作り方 玉ねぎとバターを鍋に入れて、弱火でしんなりするまで炒める。 スイートコーンは、実だけをそぎ切りにして、玉ねぎがしんなりした所にいれ、塩(少々)をする。 さらに弱火で香りを出し、ふたをして火を入れていく。 コーンに十分火が入ったら、コーン水をひたひたまで加えて煮る(30分)。 30分後、火からおろしてミキサーにかけて、シノワ(濾し器)で裏ごしする。 十分に冷やしたら、昆布出汁を入れ、お好みの濃度に仕上げる。(お好みで、牛乳、豆乳でも可) 太刀魚のインパナート ■材料<4人分> 太刀魚 200g(50g/人) パン粉(木の芽、パセリ、ちりめん) 適量 詰め物 ・マンゴー 20g ・梅 1個 ・大葉 3枚 ・日向夏の皮 適量 ピュアオリーブオイル <下準備> 詰め物の材料をみじん切りにして和えておく。 ■作り方 太刀魚を一人前50gにカットして詰め物を薄くぬる。 皮面に軽く塩をし、ロール状に巻いて楊枝で止める。 フライパンでソテーし、表面にパン粉をのせ、色を付け完成。