図書館司書の資格を持っていて、いつかは図書館を経営してみたいと夢見るDiceです。
さて、日南市油津に、無人の古書店がオープンしたと聞いたので、多忙なスケジュールの合間を縫ってちょっと覗いてみました。
場所は、何かと話題の日南市・油津商店街の一角、コンテナを改装したショップが並ぶ「ABURATSU GARDEN」。
今年になっていくつか店の入れ替えが行われ、通りに面した中央には、「タマチャンショップ×油津応援団」もオープンしていました。
その「タマチャンショップ×油津応援団」の裏手のコンテナに6月にオープン(4月28日プレオープン)したのが、今回ご紹介する「無人古本書店 ほん、と」。
左右の手のひらを開いて合わせた、本を読んでいるような意匠のロゴマークに、ひらがなで「ほん、と」と書かれた看板が目印。
ドアのガラスにも同じロゴが描かれています。
「ほん、と」の店長は、杉本恭佑さん。
2年半前には東京・根津の八百屋の店長として会っているのですが、今年の2月に日南市の地域おこし協力隊の一員として宮崎に戻り、(株)油津応援団のコミュニティマネージャーとして、油津商店街の活性化を中心とした活動を行っています。
この無人古本書店は、杉本さんが構想を練り、クラウドファンディングで仲間と支援者を募り、様々な人の支援を受けながら、大半は手作りで開店にこぎつけました。
ここは無人店舗なので、杉本さんは普段は常駐しておらず、「油津Yotten」にいることが多いようですが、声を掛ければ気軽に案内してくれると思います。
扉を開けると、木製の本棚とそこに並べられた本が視界一面に飛び込んできます。
まだ開店して間もないので、並べられた本は決して多くはありませんが、従来の古書店のイメージとは違った余裕と明るさを感じさせます。
本がぎっしると並べられた空間も悪くはないのですが、コンテナ店舗は狭いので、詰め込まれ過ぎていると圧迫感を感じることもあり、入りやすさを考えると、これくらい余裕がある方が良いのかもしれません。
港町・油津だけに、本棚は市場で魚を入れるのに使われていたトロ箱のようなイメージです。
少し奥行きが深いので、スペースが少々もったいないと言えなくもありませんが、そこに手作り感があるのもまた事実。
実際、杉本店長自らも工具を手に加工して作り上げたのだそうです。
右手奥には、小さなテーブルと椅子が2脚置かれています。
ここに並べられている本の大半は、近くにある湯浅豆腐店さんを初めとして、誰かが寄付してくれたものとのこと。
杉本店長は、仕入れすることも考えているようですが、当面は寄付でまかなえているとのことで、まだ値付けが終わっていない本が脇の方に積まれていました。
無人店舗でどのようにお金の受け渡しをするのかと思ったら、そのための仕組みが書棚の横に置かれていたこの「ガチャガチャ」でした。
上が500円、下が300円のガチャガチャになっています。
それぞれの本は、値段が300円、500円、800円、1,000円の4種類に設定されており、300円と500円の組み合わせで支払いができますから、買いたい本に付けられた値段に応じてガチャガチャにお金を投入して支払うという訳です。
これは、東京都武蔵野市にある「BOOK ROAD」という無人本屋さんの仕組みを参考にしたのだそうです。
今ならキャッシュレス決済なんかも可能でしょうが、こうした遊び心がある支払いの方が、なんとなく楽しいですよね。
店舗の一角には木製のボードが設置され、「ほん、とカード」がピン留めされていました。
このカードは、本を寄贈した人や利用者が、本や「ほん、と」についての感想を書き残すためのものだそうです。
本を媒介にして、人と人を繋ぐ仕組みが、ここには用意されています。
それだけではなく、ここの本は、ABURATSU GARDENの中であれば、自由に持ち出して読むこともできるとのことで、コンテナを出て外のベンチで、多の店舗で買った飲み物を飲みながら読んだりすることも可能。
そこで生まれる交流もありそうです。
また、商店街にある様々な店舗とのコラボイベントを行ったり、「油津Yotten」で本に関するイベントを開催することも計画しているとのこと。
「ほん、と」という店名には、本と○○という形で、本を媒介にした様々な人やモノとの交流を喚起したいという意味が込められているようです。
デジタル化の進む現代ですが、リアルな本には何かしら人を惹きつける力があり、宮崎県内でも、新設された都城市立図書館「Mallmall」やJR延岡駅に併設された「エンクロス」のように、集客の核となっている場所も出てきています。
この「ほん、と」は、それらに比べると小さな小さな規模ですが、商店街に人が集う新たな力になってくれそうな気がしました。
皆さんも、油津商店街に行かれた際には、是非お立ち寄りください。