アボカドは、刺身の切り落としと合わせてポキ風にするのが好きな、孤独の料理人Diceです。 そんな私に、宮崎産のアボカドのお披露目会があるので来ませんか?というお誘いがあったので、カメラ片手に出かけてきました。 会場は、宮崎市一ツ葉にある「みやざき晴日」の2階「晴宴」。 ちょっと早めに到着すると、既にテーブルセッティングが終わっていました。総勢30名以上の満席です。 お披露目会ということで、新聞やテレビなどのメディアも取材に入っていました。 アボカド種茶のデトックスウォーター テーブルに置かれたグラスに注がれていた茶色の液体は、アボカドの種を切って煮出した「アボカド種茶」を冷たく冷やしたデトックスウォーター。 飲んでみると、それほどクセは無く、香りも最後にアボカドのオイリーな感じがかすかに鼻に抜ける程度で、美味しくいただけました。 アボカドの種には水溶性の食物繊維が豊富に含まれているので、種茶はダイエットに向くと言われているらしく、そこから発想されたデトックスウォーターなのかな。 ご用命は「やお九州」に 今回のイベントの仕掛け人、宮崎県産を中心とした青果物の販売を行う「やお九州」の服部学さん。若き養蜂家でもあります。 横山さんの作るアボカドの販売も手がけており、今回、ある程度の量の出荷が見込めるようになった横山さんから相談を受けて、料理人やフードアナリスト、野菜ソムリエなど感度と発進力のある層に向けたお披露目会を開くことを企画し、コンフォートダイナーグループの竹井倫世さんに相談して、開催の運びとなったのだそうです。 アボカド栽培をリードする若き園芸農家 10年前までは、大手スーパーの青果担当バイヤーだったという、横山果樹園の横山洋一さん。 アボカドが大好物だそうですが、国産はほとんど無く輸入物に頼る現実に、「それなら俺が作ってやろう!」と一念発起。 マンゴー農家の実家に戻り、マンゴーの温室の一部を借りてアボカドの栽培を始めたのだそうです。 しかし現実はそんなに甘くは無く、花は付くけど実が付かない、成っても小さい、途中で落果するなどの苦労の連続だったとか。 もともとアボカドはクスノキ科に属する熱帯~亜熱帯の植物で、野生のものは樹高が30mにもなり、上に伸びようとする勢いが強く、なかなか実を付けない性質があるのだそうです。 しかも、蜂がいないと受粉せず、肥料はたっぷりと必要で、太陽の強い光は苦手という手間のかかる、経営的には難しい植物なのだそう。 それでも、いろいろな品種を試しながら、現在は60品種を栽培しており、このうち20数種を商品として出荷しているとのこと。 「今日は、アボカドのことを知っていただき、複数のアボカドを試食して、どれが好きかとかジャッジして欲しい。」 と挨拶されました。 宮崎銀行も挑戦中 実は、宮崎銀行も宮崎の基幹産業である農業で新たなビジネスモデルを作ろうと、2017(平成29年)8月に農業法人「夢逢いファーム」を設立し、アボカドづくりにチャレンジしているのです。 冒頭挨拶に立たれた、宮崎銀行の国部(こくぶ)地方創生部長は、 「宮崎市富吉の農場では、横山さんのお父さんの土地をお借りして、横山さんを師匠として、アボカド栽培を行っています。 今年は実が小ぶりですが、500個ほど収穫できました。 今日は、アボカドを使ったフルコースということで、料理方法など非常に参考になります。」 と話されました。 スモークアボカドとサーモンのカクテル まず、前菜として運ばれてきたのが、「スモークアボカドとサーモンのカクテル」。 藁でスモークされたアボカドとサーモンを粒マスタードソースで和えられていました。 使われているアボカドは「ピンカートン」という品種とのこと。 割とあっさりとした味わいで、食べた後からスモークで使われた藁の香りが鼻に抜けて行きます。 そんなにアボカド感は強くないので、もっとアボカド、アボカドしてても良いんじゃない!?と思いましたが、これは全10品のフルコースの前菜。最初から飛ばしすぎると続きませんものね。 アボカドとトマト、チーズのカプレーゼ 続いて、「アボカドとトマト、チーズのカプレーゼ」。 使われているアボカドは「エドラノール」、トマトは都農町産で、アボカドオイルと塩とブラックペッパーがかかっています。 アボカドとチーズとトマトを一緒に口に入れると、アボカドのクリーミーでコクのある味わいが、トマトの酸味と旨味、チーズの塩気とコクでと渾然一体となって重層化し、より美味しく感じられました。 これは、自宅でも真似したい一品ですね。 横山さんの思いに応えるべくメニューを開発しました ここで挨拶に立たれた、会場の「みやざき晴日」の田中料理長。 「アボカドにこんなに種類があるのか!と驚きました。 お話を伺うと、横山さんは独学でものすごく勉強されていて、その思いを少しでも伝えようと、社内でいろいろなメニューを開発しました。 和洋中、それぞれの料理を楽しんでいただければ幸いです。」 と話されました。 アボカド3種食べ比べ ここで、アボカド3種類の食べ比べが登場。 裏返した皮の感じを見ると、同じアボカドでもやはりちょっとずつ違いますね。 右端の「マラマ」はハワイの品種だそうで、食感はやや固めでとても美味しいです。 かすかな苦みを感じましたが、横山さんのお話では、アボカドは皮に近い濃い緑の部分に苦みがあるので、苦みが嫌いな人はその部分を取ってやると良いとのこと。 どの部分を食べるかによっても味が変わるのですね。 この品種は、食べ頃になると皮が黒くなるのでわかりやすいとか。 真ん中の「エドラノール」は、ざらっとした舌触りで果肉の水分量が多く、強い旨味を感じました。 横山さんの言葉では「ゴツゴツ系」。ハウス栽培のアボカドの中では味が良い部類の品種で、鹿児島県が栽培種として推しているのだそうです。 左端の「ズタノ」は、クリーミーな食感で 横山さんが10年前に作ってたまたま実が成り、食べてみたらとても美味しくて、これなら行けると確信がもてた品種なのだそうです。 みやざき地頭鶏とアボカド、パプリカソテー 4品目は、「みやざき地頭鶏とアボカド、パプリカソテー」。 使われているアボカドは、「ベーコン」。 ベースがみやざき地頭鶏ですから、美味しくないはずはありません。そこに火を通されたアボカドのクリーミーなコクが加わり、美味さ倍増! アボカド、赤えび、平茸のひでじビール揚げ 5品目は、アボカドと赤えびと平茸のフリットが出てきました。 使われているアボカドは、「ピンカートン」。 水分が多くて、火が通るととろける感じになります。 最初に若干の苦みが来て、それを追いかけるように甘みが乗っかり、旨味へと変化して行くのが面白いです。 粉を溶くのに贅沢にもひでじビールが使われているのには理由があって、アボカドを育てるのにひでじビールの粕が肥料として使われているのだそうです。 アボカドはたくさんの肥料を必要とし、みかんの1.5倍、マンゴーの3倍もの量が必要なのだとか。 アボカドのせいろ蒸し餃子 6品目は、蒸籠(せいろ)で蒸し上げられた餃子。 使われているアボカドは、「ベーコン」と「エドラノール」のミックス。 クリーミーな具材の食感の中に旨味と歯ごたえをもたらしているのはシーチキンかと思ったら、カツオの白ワイン蒸しだそうです。 どおりで、白ワインと一緒にいただくと良さそうだと思ったわけです。 黒毛和牛へべすステーキ、アボカド山葵ディップ 7品目は、贅沢にも黒毛和牛のステーキで、アボカドと山葵(わさび)を合わせたディップが添えられています。 黒毛和牛の美味しさは今さら言うまでもありませんが、そこにへべすのフレッシュな果汁で爽やかさが加わり、アボカド山葵ディップがクリーミーで刺激的なアクセントを足して、更に絶品に。 アボカドと昆布〆め鯛の押し寿司 8品目は、スライスしたアボカドを中に挟んだ押し寿司。 魚介とアボカドの相性が良いのは周知の事実ですが、淡泊な白身の鯛にアボカドのオイリーなコクが加わり、酢飯とともに口の中で渾然一体となって舌の上に広がる快感。 コースの終盤を飾るにふさわしい一品でした。 アボカドの味噌汁 9品目は、一口大にカットしたアボカドと油揚げを具材にした味噌汁。 アボカドを味噌汁に!?と驚く方も多いのですが、これがなかなかの絶品。 ここまで8品、様々なアボカド料理を食べてきて、改めてシンプルにアボカドの美味しさを確認することができました。 この味噌汁の味が忘れられなくて、後日、家でも真似して作ってみました。 簡単にできて栄養価も高く、美味しくいただけるので、アボカドの手軽な料理法としてオススメです。 アボカドとヨーグルトのババロア アボカドのフルコースと言うだけあって、10品目のデザートまでアボカドが使われています。 「アボカドとヨーグルトのババロア」は、皮を器にして生クリームやベリーが飾られています。 ここまで10品、和洋中様々な手法で料理されたアボカドを食べてきましたが、主役としても脇役としてもその務めを見事に果たしており、食べ飽きると言うことがありmせんでした。アボカド、どのようにしても美味しい食材です。 宮崎産アボカドのこれから アボカドの食べ頃は、収穫後1週間~40日間と品種によって違うのだそうです。 追熟に係る時間は、皮が薄いのは早く、ゴツゴツとした厚い皮のものは遅くなるのだそうで、この日食べた品種の中では、ベーコンが約10日、ピンカートンだと3週間以上。 耳たぶくらいに柔らかくなってから食べると良いそうですが、アボカドには酸と糖が無いので腐らないから、見極めを失敗しても加熱して使うと良いですよと横山さん。 最後に横山さんは、今後のビジョンについて、 「今は宮崎銀行と一緒にやっていて、とりあえず30アールの栽培面積を100アールまで増やしたいと考えている。 そうして、マンゴーがメインの農園の経営を、アボカドがメインになるようにして行きたい。」 と仰っていました。また、 「今はどうしてもハウス代など設備投資などにお金がかかっているので、1個の単価が高くなってしまいますが、もう少し皆さんが買いやすい値段にしたい。 儲かる農家を目指して行きたいです。」 と締めくくられました。 アボカドは、世界一栄養価が高い果実だそうで、 「アボカドは世界の食糧危機を救う!」 と横山さんも話されていましたので、宮崎産のアボカドが、もっともっと広まって、気軽に楽しめる日が来ることを楽しみに待ちたいと思います。 「宮崎アボカド×都農ワイン メーカーズディナー」開催決定!! そんな横山さんのアボカドと、都農ワインがコラボした「メーカーズディナー」が、1月24日(土)の19時から、宮崎市西橘通りの「みやざき晴夜 Hareruya」で開催されることが決定したそうです。 貴重な国産アボカドと世界的にも有名な都農ワインとのマリアージュ、どのような宴になるのか楽しみですね。 詳細は、こちらのFacebookイベントのページから https://www.facebook.com/events/733749267137251/