てげつースタッフが東京で宮崎の食、文化、人をPRするイベント「宮崎てげてげ祭り」に頑張っている中、家族が東京近郊に住んでいるのになぜか東京に行けなかったDiceです。 その代わりと言っては何ですが、宮崎の若者達がプレゼン大会をやるというので、その主張を聞きに3月7日(土)に宮日会館10階大会議室で開催された「80's FORUM Final」に行ってきました。 このイベントは、1980年代生まれの若手農家・経営者や公務員などで組織する情報交換グループ「80's MIYAZAKI」と、宮崎県内の若手行政マンの自主勉強会「Mfnet」の共催という形で行われたもの。 これまで2回に渡ってフォーラムを開催し、グループに分かれて話し合ってきた、人材育成、U・Iターンの促進、宮崎の食についてという3つのテーマについて、その取り組みを加速させるアイデアや宮崎の未来へ向けての提言をプレゼンするというイベントでした。 3人のプレゼンターを迎え撃つのが、向かって右から、前日に九州未来アワード海外事業部門の大賞を受賞したばかりの(株)一平を率いる村岡浩司さん、宮崎県総合政策部次長の永山英也さん、Mfnetの顧問格であるカリーノ宮崎支配人の徳丸賢治さん、ベンチャーを金融面で支援する(株)宮崎太陽キャピタルの津野省吾さんという、各界を代表する4人のコメンテーター。どっちかというと起業家支援のための強者揃いって感じ。 この写真はプレゼン前なのでみんな笑っているけど、いざ本番になると、容赦のない鋭いツッコミを入れてました。 プレゼンターの3人、絶対緊張したはず。 さて、コメンテーターの自己紹介も終わって、いよいよプレゼンタイムのスタート。 各人の持ち時間はそれぞれ20分。 28歳をターゲットにしたUIターン施策を!:田鹿倫基 トップバッターは、田鹿倫基さん。知る人ぞ知る、日南市のマーケティング専門官として活躍中。 この日は、UIターングループの代表としてプレゼンの場に立ちました。 宮崎大学を卒業後、東京に就職し、中国での会社の立ち上げなどを経験した後、日南市にUターンした自身の経験も踏まえ、18歳、23歳、28歳、60歳と人生で4度住む場所を自分自身で決めることのできる機会がある中で、28歳をターゲットとしたUIターン施策の必要性を訴えました。 今回のプレゼンでは、UIターンを実現するためには、 1. 仕事の問題 2. コミュニティの問題 3. 配偶者が、恋人が、、、問題 の3つの壁が存在するとまず問題設定。 仕事の問題については、宮崎に仕事が無いのではなく、うまくマッチングができていないことが課題だとし、解決策として、 ・今ある仕事の魅力を掘り起こし、求職者に伝える。 ・魅力的に思われる仕事を作る という2つを提示。 コミュニティ問題については、まちづくり関係のコミュニティや趣味・興味によるコミュニティに参加することで移住者が孤立化するのを防ぐことが必要だとし、Uターン者向けには、宮崎にいる時からコミュニティに引き込んで地域との一体感を醸成すること、Iターン者向けには、趣味・興味によるコミュニティ作りを推進しつつも、移住者だけのコミュニティにしないことが大事と提起。 配偶者、恋人問題については、県東京事務所主催で「宮崎を考える若者の会」みたいな企画を作って、宮崎県出身の男女カップルを作るのがいいのではと提案。 ターゲットとなる人材がどの年齢層で宮崎にいるか(高校まで、大学生として、社会人として)というタイプ別に、市民や企業、行政といった各セクターが、どのような役割で活動していくべきかをマトリクスに分けてわかりやすく提案されていました。 これに対して、コメンテータ-からは、 「プレゼンはうまく、内容には共感できるが、ビジネスモデルにできるかどうかが課題。 具体的なKPIが示されるともっと共感を生むし、KGIも見えるとビジネスプランに成り立つ。 行政と民間がマッチングしていない感じを受けるので、もう一歩踏み出すと良いのでは。」(徳丸) 「県は、4月から移住に大きく踏み出す。東京に4人くらい配置して支援センターを作るし、KITENビルにも2人配置して企業とのマッチングを行うために1億5,000万円程度の予算を確保している。 これにより、4年間で1,000世帯の移住を目指す。 システムは行政が作ればいいと思うが、民間がどういう場を使うのか知りたい 28歳ターゲットは本当にそうなのか?、個人的には22歳ターゲットにしないと難しいのではという実感がある。」(永山) 「ファイナスをする側から見ると、ビジネスモデルとしては漠然としすぎている。 UJIターン者を確保することでどのように収益を上げる点が曖昧。 しかし、収益ありきの投資はしたくない。地域の活性化に対して投資していきたい。」(津野) 「自分自身も地域の課題とビジネスの一体化を考えているので、考えていることはよくわかるが、地道な活動が必要。 数値目標がないので、そこは評価できない。 移住者が宮崎市に集中すると思うが、その周囲はどうなるのか。全体の中で課題解決につながるような斬新なアイディアはなかった。」(村岡) といった意見が出されていました。 宮崎の食材は宇宙を目指せ!:今西猛 続いてのプレゼンは、美郷町渡川の山師で原木椎茸の通販サイト渡川山村商店を運営している今西猛さん。 宮崎=食が豊かというイメージがあるが、本当にそうなのか?。 原木椎茸を完全無農薬で栽培しているが、原木椎茸生産者は低所得で売価も生産原価を割れているような状況で後継者もいない。全国に流通する椎茸のうち、原木椎茸は全体の2割しかないというように、低い認知度、低い自給率の現状を踏まえても、本当に食が豊かだと言えるのだろうかと主張。 食が充実していると思う都道府県ランキングでも、宮崎は上位に顔を出さないという事実も提示。 そんな中で宮崎の食をPRするのに目指すべきなのは、 「宇宙!」 だと。Made in MIYAZAKIの宇宙食を目指せ!と。 このためにJAXAに電話したという今西さんは、 宇宙食を作ろうとしてるのは、新潟市、兵庫県、北海道大樹町くらいで、まだライバルが少ないこと、世界中で注目度が高いこと、和食ブームでJAXAも「宇宙日本食」というロゴ作ったことなどを挙げる。 安全に作れていて肉も魚も野菜も種類が豊富な宮崎こそ、宇宙食開発にふさわしいと。 椎茸を使った宇宙食はまだ無いいし、同じ80'sのメンバーである日南市の古谷さんが作っている駝鳥の肉は、筋肉の維持成分が多く脂肪が少ないので、宇宙食にふさわしい素材だという紹介も。 そして、MIYAZAKIを宇宙で発信することによって、生産者に自信と誇りが産まれ、受け継がれる自信と誇りが食の豊かさを生む。 次の世代に繋げることが豊かさであるとするなら、今チャレンジすることが必要だと締めくくった。 これに対しコメンテーターからは、 「エッジが効いている。これが大事。宇宙に持って行くという発想がいい。 渡川という名前、響きがいい。 九州パンケーキ+原木椎茸+野菜でパワーバーみたいなものを作ってDOGAWAで売り出すといいのでは。 このアイディアには、今回の大賞の賞金をつぎ込んでもいいと思う。」(村岡) 「ビジネスプランとしてはツッコミどころ満載だが、ミッションとコアコンピタンスがしっかりしており、避難食、離乳食、介護食等、広がりがある。 根拠、エビデンスが薄いのが残念だが、自分も小遣いくらい投資してもいい。」(徳丸) と大絶賛。 ここで調子に乗って、具体的な事業計画のスライドを説明し始めたところで、一挙につまらなくなったとコメンテーター陣にダメだしされた今西さんでありましたが、他にも、 「宮崎のフードビジネスについては、議会で介護食にチャレンジしてはどうかという提案もあった。 中山間地域の人々が誇りと自信を取り戻すことが必要。作った人が良かったと思えることは大事。」(永山) 「ぶっ飛んだプレゼンに感動した。 今のままでも、クラウドファンディング等でお金集められると思うが、VCの投資としては市場性の問題がある。 今なら先行メリットもあるので、面白い。」(津野) という意見が出されました。 人づくりのためのプラットフォームを!:服部学 最後のプレゼンターは服部学さん。九州産野菜の通販サイト「やお九州」を運営する(株)yaoの代表であり、80's MIYAZAKIの代表でもあります。 「真の地方創生とは何か?」について、JALの再生を成し遂げた稲盛和夫さんに聞いてみたら、「JALと一緒」と言うのではないか、それは、小集団による部門別採算制度と経営哲学(フィロソフィ)の問題というところからプレゼンを開始した、歴史も好きな服部さん。 江戸時代末期に松下村塾を開いて約90名の塾生を育て、その塾生の中から久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋など内閣総理大臣2名、国務大臣7名、大学の創業者2名を輩出した吉田松陰を例に出し、宮崎版松下村塾を80's Forumとしてやりたいと提案。 2ヶ月に1回程度の討論で民・官垣根無く知識を共有し教え合い、問題をみつけ、改善案を検討し実行する、同世代で切磋琢磨し合い、成長を競い合うような場を作りたいと主張。 そのためのKGIは、地方創生のリーダーを10人輩出、KPIは、FORUMを3回/1シーズンで2年間継続として、年間100万円の費用がかかると試算。 民間企業では、人材育成のために年間1人当たり20万円の教育費かけているとして、これを実現するための支援をと締めくくった。 これに対しコメンテータ-からは、 「これを事業としてやるのか?。 投資している会社の社長を紹介したりはできるかもしれないが、どういう研修内容にするかなど、事業計画が不明確。」(津野) 「事業体としてやるのであれば、漠然としているし、リーダーの定義があまりにもぼやけている。 KPIをコワーキングルームを借りて、そこで話し合いや勉強会ができるようにして、そこの利用をビジネスとして回せることにし、KGIはそこから起業家が産まれること、みたいな感じにすると良いのではないか。 ビジョンやミッションは感じるが、2年で終わるなら、このままこのFORUMの形でやればいいんじゃないのか。」(徳丸) 「地方創生=人材育成は面白い。 国の対策で言うと、まち・ひと・しごと創生本部というのがあり、いろんな手段を講じるのが地方創生。人は大事であり、どんな街にするのか、何をどう学ぶのかをもう少しつっこんだら良かったのではないか。 知事の政策提言でMBAを作りたいというのがある。行政として具現化するために今後考えていくので、コラボの余地はあるのでは。」(永山) 「県の事業として提案というのは少し不満。 悩みを話し合ったり、励まし合うだけではダメなのではないか。 理想があって現実の自分があって、それをどうブレイクスルーするかという理念教育には厳しさも必要。」(村岡) という意見が出されました。 また、会場からも、 「諸君、狂ひたまへ」という吉田松陰の言葉を持ち出す割には狂っていない。もう少し尖った提案があっても良いのではないかという激励も飛んでいました。 宮崎の80年代生まれの今後が楽しみだ 今回のイベントは、「Final」と名付けられてはいましたが、これで終わりではなく、コメンテーターや会場から出された意見を参考にしながら、今後ブラッシュアップをかけて、事業化へ向けて動いていくとのこと。 今回のイベントには、80年代生まれのみならず、大学生などもっと若い世代も参加していましたし、職種や世代を超えて、宮崎の将来を考える若者達がこうして集い、お互いを理解しながら新たなイノベーションへ向けて動いていく場、人が育つ場ができているのは、素晴らしいことだと思います。 コメンテーターとして参加されていた徳丸さん(筆者と同じ60年代生まれ)もおっしゃっていましたが、こうしたムーブメントには嫉妬さえ覚えるくらいに羨ましくもあります。 人材育成は今回のプレゼンテーションのテーマのひとつでもありましたが、その素地は既にできつつあるように思います。 後は、これを続けていくこと。そして、何らか具体的な成果を作り上げて行くことが大切でしょう。 そのためにも、事業化へ向けたチェックのできる人たちをサポート役として味方につけているのも素晴らしい。 80年代生まれを中心とした宮崎の若者達の今後のチャレンジ、大いに期待したいと思います。 最後に、司会進行を務めてくれたMfnetの西牟田俊也さん、80's MIYAZAKIの桑畑夏生さん、ご苦労様でした。 宮崎てげてげ通信は、これからも宮崎の若者達のチャレンジを応援していきます!。