天岩戸伝説の舞台を旅する-神々の里・高千穂紀行

天の岩戸開きの図(画像出典:照らステージ宮崎)

みなさん、こんにちは。テゲツーライターのテルヒコです。
宮崎の街を歩いていると、神話にちなんだお店の名前やお土産など、神々の物語を身近に感じる場面がたくさんあります。
でも、ふと「そういえば、神話ってどんなお話だったっけ?」となることも。
意外と、みんな知っているようで、実は知らないことも多い日本の神話。
太陽の神、海の神、山の神……、日本の神話に登場する神々は、まさに八百万(やおよろず=たくさん)。
それぞれに名前があり、伝説があり、たくさんある神様の名前も覚えるのが大変だわ、という方もいるのではないでしょうか。かくいう僕も、はじめはそうでした。

ところが、ひとたびその物語に触れてみると、これがなかなか面白い。
「えっ、日本の神様って、こんな人間臭いことするの?!」
なんて驚かされるエピソードがあったり、現代の僕たちにもどこか通じるような出来事やためになる教訓が隠れていたりと、知れば知るほど新しい発見があるんです。

キキタビ(記紀旅)で高千穂へ

筆者が「ときめく神もうでキキタビ」で巡った神社の御朱印を集めた御朱印帳(画像出典:照らステージ宮崎)

日本最古の古典でもある『古事記』と『日本書紀』に記された「記紀神話(ききしんわ)」。
上中下の3巻から成る『古事記』と、全30巻から成る『日本書紀』には、さまざまな神話・説話を交えながら、日本の成り立ちや古代の歴史が壮大なスケールで描かれています。
そんな日本の歴史・伝承のルーツともいえる記紀で、ひときわドラマチックなエピソードのひとつが「天岩戸伝説」。
その舞台となった場所こそ、今回みなさんと一緒に旅をする高千穂です。

僕自身も、2021年に県内で初めて開催された「みやざき国文祭」の観光プログラム「キキタビ(記紀旅)」の一環で、キキタビ男子の一人として高千穂を訪れました。

ライトアップされた真名井の滝(画像出典:宮崎県観光協会)


深い緑に包まれた渓谷、圧巻の柱状節理、山間を流れる川の透き通る水の美しさ、そして乳白色の霧に包まれた神秘的な風景。
伝承の里に足を踏み入れれば、夜の奥深くまで響いてくる神楽の太鼓の音。
神話の世界が、今も進行形で息づいているように感じられました。

太陽の女神が「おこもり」になった? 天岩戸神社

太陽の神・天照大神(あまてらすおおみかみ)がお隠れになったと伝わる「天岩戸」。
その天岩戸があるとされる場所に鎮座するのが、天岩戸神社です。

西本宮には、天照大神の別名である大日孁尊(おおひるめのみこと)が祀られています。
西本宮の御旅所には、天鈿女命や手力男命をはじめ、さまざまな神々が祀られています。
一方、東本宮には天照皇大神(あまてらすすめおおみかみ)が祀られています。

岩戸川の対岸、断崖の中腹にある「天岩戸」と呼ばれる岩窟は、日本神話に登場する岩屋であると伝えられ、天岩戸神社の御神体とされています。
神域のため、岩戸そのものを撮影することはできませんが、神職の方の案内のもと、拝殿裏の「遥拝所」から、その姿を拝することができます。
畏れ多くも、そんな神話の舞台へ筆者(テルヒコ)も旅人としてご挨拶に伺いました(てげ感動した!)

天の安河原(画像出典:照らステージ宮崎)

天安河原(あまのやすかわら)は、天照大神が岩戸にお隠れになった際、八百万の神々が「どんげかして世に出さんといかん!」と知恵を出し合ったと伝わる、神話の舞台です。

高天原で勃発した史上最強の姉弟ゲンカ-アマテラス VS スサノヲ

真名井原の誓約の図(画像出典:照らステージ宮崎)

高天原を統括する太陽の女神・アマテラス、その弟が大海原を治める神・スサノヲです。
この姉弟をめぐる騒動こそ、今も語り継がれる「天岩戸神話」につながる物語。
母・イザナミを慕って泣き続けたスサノヲは、父・イザナギから根の国へ行くよう命じられ、その前に姉・アマテラスへ挨拶をしようと高天原へ向かいます。

天岩戸神社の天照大神像

ところがアマテラスは、「こやつ、私の高天原を奪いに来たな!」と警戒。
二柱は天の真名井で誓約(うけい)を行い、互いの持ち物から神々を生み出します。
アマテラスの勾玉から五柱の男神、スサノヲの剣からは三柱の女神(後の宗像三女神)が誕生。
スサノヲに邪心がないことが示され、ひとまず疑いは晴れました。

ところが、その後も姉弟の間でさまざまな騒動が起こってしまい、ついにはアマテラスが天岩戸へ引きこもってしまいます。
太陽の神が隠れ、世界が暗闇に包まれると、困った八百万の神々が天の安河原に集まり、知恵の神・オモイカネが一計を案じます。
芸能の神・アメノウズメが岩戸の前で踊り、神々が大笑い。
外の様子が気になったアマテラスが顔をのぞかせた瞬間、力自慢の神・タヂカラオが岩戸を開き、再び世界に光が戻った―と伝えられています。

てげ人間くさい、神話の神様が好き

天岩戸神社のタヂカラオ像

そんなこんなで高天原を追われたスサノヲですが、意外にも、荒々しい一面だけではありません。
地上に降りると一転、怪物・八岐大蛇を退治。その時に得た剣を姉・アマテラスに奉納します。
さらに後の後継者、大国主には厳しい試練を与えながらも、最後にはその力を認め、送り出しています。

母を慕い、姉とぶつかりながらも、最後には誰かのために力を尽くす。不器用で人情味のある姿も見えてきます。
筆者はここで、「スサノヲだってきっと善神説」に一票。筆者が演じるヒーローのご先祖様だけに。

神話の神々も、怒って喧嘩してみたり、悩んだり、意地を張ったり、ときには引きこもったり。
そうして眺めてみると、遠い昔の物語だった神話が、少しだけ身近に感じられてきます。
アマテラス、スサノヲ、そしてタヂカラオ。
そんな神々を今もお祀りする天岩戸神社を訪れて、ふと感じたのは、そんな古代のエピソードもすべてを温かく包み込むような、この土地の雄大さでした。
それが、聖地・高千穂という場所の持つ、おおらかな力なのかもしれません。

神々が舞う高千穂の夜、人生初の神楽体験

高千穂夜神楽のアメノウズメ(画像出典:宮崎県観光協会)

そんな旅のさなか、数年前にここ高千穂で、夜通し神楽を拝観したときのことを思い出していました。
場所は、下田原地区の公民館。

夜神楽を見ていると、この日は特別に参拝者の中から5名が神楽を体験させていただけることに。
「え、僕もいいんですか?」
なんと人生初の神楽に挑戦することになりました。しかも、演じるのはアメノウズメ役!
一緒に来ていた地元のおばさんはタヂカラオ役。
そして、地元のブレイクダンサー風のお兄さんたちもタヂカラオに挑戦。

……舞ってる最中、ヘッドスピンが始まり、タヂカラオのかつらが外れるというハプニングまで。
完全即興なので、何から何まで見よう見まね。いやあ、これは大変でした。

なかでも驚いたのが、神楽の面(おもてさま)。
視界が、小さな穴からしか見えないんです。
「これ、普段僕が撮影で被ってるヒーロースーツのマスクより視界が狭いんじゃないか…?」
そんな神楽面を着けて長時間舞い続ける舞手(ほしゃどん)の皆さんには、頭が下がります。
神楽では、神が降りてくる依り代として面をつけ、その瞬間、舞手は神になるともいわれます。

そんな面をつけて、いざ舞台へ。
周りには、地元の方々の暖かな笑顔。
神々が舞う、高千穂の夜。
僕も神様たちの舞についていこうと必死になってるうち、いつの間にか笑い声が起こり、夜は静かに更けていきました・・・。
まあ笑いが巻き起こったから神楽的にそれでよかったかな?なんて、あの夜の高千穂は今でも僕の中に強く残っています。

「面白い」のルーツは天岩戸伝説にあり?

天安河原(画像出典:宮崎県観光協会)

そんな岩戸神楽ですが、みなさんは「面白い」という言葉のルーツが、実は天岩戸伝説にあるという説をご存じでしょうか?
平安時代の歴史書『古語拾遺(こごしゅうい)』には、天照大神が天の岩戸からお出ましになった際、差し込んだ光に照らされ、神々の顔(おもて)が白く輝いたことから、「おもしろい」という言葉が生まれたという説が記されています。
また、その際、神々が手を伸ばして歓喜したことから、「たのし(手伸し)」という言葉が生まれたともいわれています(いずれも諸説あり)。

そう考えると、「面白い」という言葉そのものが、暗闇に光が差し込み、神々が喜びに沸いた天岩戸の物語から生まれた、なんだかとても縁起のいい言霊(ことだま)のように感じられました。

是非、高千穂の夜神楽を体験してみて!

髙千穂夜神楽の一場面(画像提供:宮崎県観光協会)

いかがでしたか? 日本文化の源流ともいえる、神々の物語が今も息づいているここ高千穂。
天岩戸神楽は、ある意味で、「ハレ」な日本一縁起のいい神々による「エンターテインメントのはじまり」ともいえるのかもしれません。
そんな神話の舞台で、これからもたくさんの人に「面白い」「楽しい!」と感じてもらえる、宮崎の素晴らしい宝物たちと出会い、そして届けていきたい。 そんな願いを新たにした旅でした。

高千穂野夜神楽は、毎年11月中旬から翌年2月上旬にかけて、町内約20の集落で夜通し奉納されるほか、高千穂神社では一年中20時からの1時間、「高千穂の夜神楽」の代表的な4演目が境内神楽殿で披露されています。

みなさんも宮崎を訪れた際には、そんな神様たちに出逢うことのできる夜神楽体験で高千穂の持つ温かな空気に触れてみてはいかがでしょうか。

寄稿者:テルヒコ
宮崎在住の美術作家兼フリーライター。事業所(照らステージ宮崎)代表。
日本文化の源流でもある神話のふるさと宮崎が誇るひなた文化の輝きを文化芸術の力を通じ明日の子供たちへ!という願いを込め製作されたテレビドラマ「日神王子アマテリアス」(宮崎国文祭芸文祭2020協力事業/日神王子シリーズ)の主演も務めるなど、子どもたちの教育問題や自然環境、地域の伝統文化へ日々関心を持ち多方面で活動している。宮崎観光文化検定3級。

\ 最新情報をチェック /

宮崎てげてげ通信ライター(寄稿)

県内各地に散らばる寄稿者用の統一アカウントです。 宮崎県内の地元の人だからこそ知っているおすすめの「グルメ」「観光」情報を軸に、地域の安全安心につながる情報の提供にも取り組んでいきます。