FC延岡AGATAのGM補佐に故郷の延岡で会ってきた

桜の花はあちこちで満開を過ぎ、葉桜に移りつつあります。
テゲツー読者の皆さんは、今年はお花見に行かれたでしょうか。

宮崎のサッカー界も、“球春”に突入しました。
J1から数えると実質5部にあたる、地域リーグの「九州サッカーリーグ」も、4月5日〜6日に新富町フットボールセンターで、複数の試合が集中的に行われる“セントラル方式”で開幕しました。
宮崎から参戦しているのは、都農町のヴェロスクロノス都農、延岡市のFC延岡AGATA(以下、AGATA)の2クラブ。
どちらも「地域密着」を掲げ、それぞれの地元を盛り上げながら、将来のJリーグ加入を目指しています。

今回はそのうちから、AGATAに目をむけた記事をお届けします。
ただ、取り上げるのはチームや選手、試合のことではなく、今年の1月17日に就任がリリースされた、GM補佐についてなのです。

そのGM補佐に会うために、延岡市まで出かけてきました。

以前と様変わりした延岡駅周辺

画像提供:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

久しぶりに訪れたJR延岡駅。
延岡出身の筆者がこの駅舎に来たのは、おそらく20年以上前。同窓会に出席するために電車で移動して以来だと思います。当時は、ごく普通の地方都市によくあるような、ありふれた駅でした。

それから月日は経ち、駅舎内に「延岡市駅前複合施設エンクロス」が併設され、図書館や書店、カフェなどが誕生。
イベントもこまめに行われるようになり、乗り降りするだけの駅から滞在できる駅へと生まれ変わっていました。

変化があったのは駅舎だけではありません。周辺の街並みも、なんだかこじゃれた感じに様変わりしています。
かつては、アヅマヤ百貨店と寿屋延岡店が中核でしたが、どちらもなくなった今、エンクロスと周辺がその役割を担っているのかもしれません。

エンクロスからロータリーを挟んで西側にある「延岡駅西口街区ビル」は、5階建てのサイコロみたいなビルディングです。
ここには、商工会議所やコワーキングスペース、旭化成のオフィスなどが入居しています。

そのビルの2階フロア、北西を占める一角にあるのが、今回訪問した株式会社エッジコネクション(以下、エッジ社)の宮崎インサイドセールスセンターです。
そして、エッジ社の代表取締役社長が、今回AGATAのGM補佐に就任した大村康雄さん。
大村さん率いるエッジ社がどんな会社なのか。大村さんとはどんな人なのか、まずはそこから見ていきましょう。

エッジコネクションとは?

約40名が働くエッジ社の延岡拠点「インサイドセールスセンター」

エッジ社のウェイブサイトには、「営業・人事・財務課題 伴走型支援企業」とあり、「事業責任者の抱える【営業・人事・財務】課題を総合的に解決します。」という謳い文句が添えられています。

「営業・人事・財務」は会社の「基幹業務」と言われてきました。会社の利益を生み出すのは、商品やサービスなどになります。
事業を展開するためには、商品やサービスを売る「営業」、必要な人員を集め配置する「人事」、資金を調達し運用する「財務」が欠かせないし成り立たちません。
現在でも多くの会社では、基幹業務を自社内で行なっています。
一方、それらをアウトソーシング(外部委託)することで、商品やサービスの開発に経営資源を集中させる会社も増えつつあります。それを担っているのが、エッジ社のような企業なのです。

もちろん単純な丸投げではなく、その会社の強みや弱みを見極め、適切に支援していくことが求められます。
そういう意味では、培ってきたノウハウや経験が物を言うのですが、2007年創業のエッジ社は、業界内で老舗に数えられているといいます。

大村康雄社長とは?

大村康雄社長

そのエッジ社を率いる大村康雄さんの経歴を、簡単にご紹介しましょう。

大村さんは、延岡市生まれ。
小学校5年生のときにJリーグが開幕したこともあり、ヴェルディ川崎(当時。現・東京ヴェルディ)が大好きなサッカー少年でした。
地元の岡富中学校に入学し、サッカー部に所属していたものの、高校では部活動に参加せず、「帰宅部」として、勉学に励むことにしました。

延岡高校を経て慶應義塾大学に進学すると、2年生のときに仲間と一緒に学生起業するに到ります。
起業した会社では、iモード向けのWebサイト制作やアラスカのクラフトビール輸入を手がけていましたが、「これで食べていくのは難しい」と、会社を一旦休眠させ、就職活動の上で外資系の銀行に入社したのだそうです。

しかし、学生ベンチャー時代に味わった「自分の考えたサービスでものごとが動く」醍醐味を忘れられず、再び起業熱が上がっていきます。
就職して1年9ヶ月後、休眠させていた会社の名称や業態を変え、エッジ社として再起動することになりました。
銀行員のときに携わっていたのがテレマーケティングだったことから、そのノウハウを活かすべく、企業のアポ取り代行から業務をスタートさせました。

「インサイドセールスセンター」という名称の延岡拠点を立ち上げたのは、10年ほど前のこと。
当時、岡富中の同級生が延岡市役所で企業誘致を担当していた縁で、「話だけでも聞いてほしい」と相談を受けたことから、延岡市に拠点を作る話が始まったのでした。

「思っていた以上に、東京と比べて人件費や家賃が安かったんです。
これはうまく考えないと、もったいないかもしれないなって思うようになりました」
と大村さんは振り返ります。

エッジ社の社員でもあるAGATAの郷田 凪砂(中)、森野 航(右)、松村 巧(右奥)の3選手

延岡拠点の主な業務は、いわゆるコールセンターです。
顧客のほとんどは東京を中心とした県外ですが、地方都市で「陸の孤島」とも揶揄される延岡市にあっても、業務上の支障はほぼ無いと言います。
会社としてワークライフバランスも重視しているため、ここだけで約40人いる従業員には、子育て中の女性も多くいらっしゃいます。
もちろん、AGATAでサッカーをやっている選手もいます。

AGATAの運営参画に至る経緯は

AGATAを率いる桑原一太GM(右)と大村さん(左)

そんな中、AGATAの代表取締役社長兼GM・桑原一太さんから、エッジ社のホームページを介して大村さんに連絡が入ります。
互いに延岡市で活躍していたふたりでしたが、それまで面識はなかったそうです。
そこで、一度ミーティングをすることになり、桑原さんが岡富中のふたつ下の後輩だと判明しました。
ただ、同窓だからとすぐに意気投合したわけではありませんでした。

「桑原GMが変な人だったら、一緒にはやれないなとは思っていました。
最初のミーティングで問題ないとは思ったんですが、念のために一度飲みに行きましょうとお誘いしました」
と大村さん。
飲めば、豹変する人もいます。桑原さんの「夜の顔」も確かめたかったのだそうです。

昼と夜、ふたつのミーティングを通して分かったのは、桑原GMがもちろん“変な人”ではなかったこと。
それどころか、延岡を愛してやまない「ただただ熱い男」(大村さん談)だったのです。

「延岡に対する愛がめちゃめちゃ深い方。
AGATAは延岡のためのクラブだから、Jリーグに昇格すること自体が目的になってはいけないというのは、もう口を酸っぱくしておっしゃっています」

延岡を代表するサッカーチームとして地元の子どもたちにも人気

JFLやJリーグという上のカテゴリーを、単純に目指すのではありません。
市民のみんなが応援することで延岡を盛り上げ、結果としてAGATAも強くなる。
そこは地元出身者として、大村さんにも刺さったポイントとなりました。

そしてもうひとつ。
「礼節もすごく重んじる方だなというのは、感じています。
チームでも、規律を守ったり最後まで手を抜かないプレーなど、人間教育もしっかりやっていらっしゃる。
うちの会社も『規律なきところに成長なし』を重視しているので、そこも一緒にやれる、信頼できるポイントでもありますね」
桑原GMの人となりをじっくりと見て、AGATAへの参画を決めた大村さん。

GM補佐の加入で更なる飛躍を期待

今後は、サッカーに直接関わる部分やクラブの顔という部分は桑原GMが担当し、大村さんはクラブの財政面などを支えていくことになります。
そこでは、エッジ社での経験やノウハウが、活かされることになるのです。

まだ「雑談レベル」ですが、山下新天街商店街あたりの空き店舗に、AGATAの名を冠した「スポーツバー」を作ろうかという話も出ているそうです。
それとは別に大村さん自身も延岡を盛り上げるため、海・山・川の観光資源を活用する滞在型のリゾートホテルができないかなど、今後いろいろと提言していきたい思いも抱いています。

まずは同郷ふたりのコラボによって、延岡にまた新たな風が吹くことに元延岡市民として期待したいと思います。

AGATAは開幕から3連勝と、順調な滑り出しを見せています。
JFL昇格のためには、全国社会人サッカー選手権大会(全社)や全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)という大きな壁も立ちはだかります。
今秋、AGATAにはどんな結果がもたらされるのでしょうか?

寄稿者:mario
鹿児島県生まれ宮崎県育ち。山口県で10年超を過ごし再び宮崎へ。
テゲバジャーロ宮崎のファン兼番記者 / フリーランスライター / 人生に欠かせないものは音楽とお酒と活字と睡眠 / そしてお城めぐりは永遠のテーマ

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宮崎てげてげ通信ライター(寄稿)

県内各地に散らばる寄稿者用の統一アカウントです。 宮崎県内の地元の人だからこそ知っているおすすめの「グルメ」「観光」情報を軸に、地域の安全安心につながる情報の提供にも取り組んでいきます。