舞踏カンパニー「大駱駝艦・天賦典式」の公演を宮崎で観られるなんて!

写真:川島浩之

東京・吉祥寺に「壺中天」という本拠地兼稽古場を構える舞踏カンパニー「大駱駝艦(だいらくだかん)」の舞台「Crazy Camel(クレイジーキャメル)」が、5月に宮崎市にやって来ます。

かつて「壺中天」に伺って、公演後のお料理のふるまいをご馳走になったことがある食いしん坊ゴエ姉が、先日宮崎市内で行われたワークショップに参加して、お話を伺いました。

大駱駝艦

写真:白鳥真太郎

大駱駝艦」は、俳優・舞踏家として知られる麿赤兒(まろあかじ)氏が、1972年に結成した舞踏カンパニーです。

麿氏は、1965年に唐十郎氏の劇団「状況劇場」に参画し、唐の提唱する「特権的肉体論」を具現化する役者として、1960~70年代の演劇界に大きな影響を与えました。
役者として活動しながら、1966年に“暗黒舞踏”の創始者である土方巽氏(1928~1986)に師事しました。

1972年に「大駱駝艦」を立ち上げ、「この世に生まれ入ったことこそ大いなる才能」とする“天賦典式”をその様式として、忘れ去られた「身振り・手振り」を採集、再構築して数多くの作品を生み出し、吉祥寺の「壺中天」を中心に、国内外で上演活動や舞踏ワークショップなどを行っています。

「Crazy Camel (クレイジーキャメル)」

今回、5月27日(土)・28日(日)の両日、宮崎市清武文化会館半九ホールにおいて、「大駱駝艦」初の宮崎公演が行われるのですが、その演目「クレイジーキャメル」は、2012年に「パリ日本文化会館15周年記念作品」として初上演され、以降、国内外で上演されています。

麿赤兒氏が「振鋳・演出・美術・鋳態」を担当されますが、「振鋳(しんちゅう)」というのは、わかりやすく言えば「振り付け」の意味で、他のジャンルのダンスとは作り方が異なるため、こう言うそうです。

カンパニー創成期に行われていた「金粉ショウ」へのオマージュでもあり、「二人の女学生と一人の男子学生の人生を、ヴィバルディの“四季”にのせて紡ぐ愛と青春の舞踏絵巻」(公演チラシより)が、セリフなしで繰り広げられます。
ヴィバルディの「四季」に加え、土井啓輔さんと築山建一郎さんのオリジナル曲で構成された音楽にのせて、麿氏と「鋳態」キャスト男女16名のカンパニーメンバーが出演する作品です。

今回の宮崎公演は、これから多くの宮崎の人に舞踏に親しんで欲しいという理由で二日間の開催となったのだそうです。

宮崎出身のメンバーも出演!

カンパニーメンバーの小田直哉さん(写真右)、谷口美咲子さん(写真中央)、齋門由奈(さいもんゆな)さん(写真左)が、4月17日から20日まで宮崎県内各地でのプロモーション活動のため来宮されたので、お話しを伺いに行ってきました。

3人のお話によると、
「麿さんは常に進化していき、『こうでないといけない』という固定観念もないので、それに合わせて自分たちの考え方も広がっていく」
ということでした。

「宮崎では、おしゃれな飲食店でもポスターを貼ってもらえるなど、多くの人に受け入れてもらい嬉しかった。見所は金粉ショウのダイナミックさと女学生・男子学生のキュートさです」
と谷口さん。

また、齋門さんは宮崎出身で、「カンパニー名にある『天賦典式』という言葉が持つ生まれ持った身体こそ才能であり、自分を卑下したりせず能力を引き出す」という考え方に感銘を受け入団し、10年が経ったそうです。
齋門さんは、今年3月に宮崎県立芸術劇場で上演された演劇「神舞の庭」では振付を担当されていたのですが、舞踏の要素を取り入れた振付が印象的でした。
「今は映像でも見られますが、『舞踏』をご存知の方は少ないと思うので、是非劇場で生の舞台を見て欲しい」
とのこと。

3人は、宮崎の人は「シャイな人も多い」と感じたそうですが、「心を開いてくれたら興味を持ってもらえそう」という手応えもあったようです。
3人も出演するCrazy Camel(クレイジーキャメル)は、「ストーリーがあり、それを追えるので分かりやすく、感じるままに見られる作品」ということですので、ぜひ劇場に足をお運びください。

舞踏のワークショップ

4月18日には、公演会場となる「宮崎市清武文化会館」の練習室で、小田直哉さんと齋門由奈さんによる舞踏のワークショップが行われました。

小田直哉さんは、これまでも都城市で児童向けの舞踏の講座を行ったり、同じくカンパニーメンバーで舞踏の普及に尽力する田村一行さんとともに宮崎市でオンライン講座を行ったことがあります。
この日は、大駱駝艦の踊りの「三本柱」という「身振りの採集・鋳態・宙体」について説明があり、参加者は、実際に床に寝たりしながら指示に合わせ各自で動いてみました。
私も参加しまして、心地よい開放感を感じました。

小田さんは、今回の公演について、
「宮崎でもこれから踊りが広がっていけばいい。
裸に金粉を塗った舞踏手からは熱量・迫力・情念が感じられ、誰もが楽しめる作品です」
と話されていました。

後半は、宮崎出身の齋門由奈さんによるすり足で歩くワークショップ。
「ただ歩くのではなく、背面に先祖がいて前方に子孫がいるという意識を持って歩くと、見え方が全然違ってくる」
との説明を受け、参加者は一列で横の人たちと進むスピードを揃えながら“意識を持ちつつ、何も余計なことを考えずに歩く”事に集中します。
私は、歩くという単純な動きが、意識しすぎるとぎこちなくなるのを感じて、時間が足りないなぁ、もっと集中できるまでやってみたかった、という気分になりました。

この日のワークショップでやったことはほんの少しでしたが、このような練習を積み重ね、動きや内容を発展させて作品が作られています。

大駱駝艦は、毎年夏に長野県の白馬村で特別体験舞踏合宿を行い希望者は参加できます。参加者は金粉を塗ってのショーイングに参加できるそうですよ。

宮崎ではなかなか観る機会の無い、大駱駝艦の舞台。
今回お目にかかった3人はもちろん、主宰者である麿赤兒氏の“舞踏”を生で観られる貴重な機会なので、皆さん是非会場まで足を運んでいただければ幸いです。
チケット情報は、下記のリンクから。

【クレイジーキャメル宮崎公演】
日時:2023年5月27日(土) 15時
   2023年5月28日(日) 15時
場所:宮崎市清武文化会館半九ホール
入場料:一般 3,000円
    U-25 1,500円(公演当日25歳以下・当日証明できるもの提示)
主催:一般社団法人現代舞踊協会、キャメルアーツ株式会社
お問合せ:大駱駝艦 0422-21-4984 まで

寄稿者:ゴエ姉
コンテンポラリーダンサー・振付家。イベントの取材とダンスを同時にこなす独自スタイル。テーマに合わせての即興ダンス「#姉さんシリーズ」など。景気付けに落成式やオープニングに呼ばれて踊ること多数。食材の特徴を活かすレシピ開発や料理教室を行う。これまでの食歴と鋭い味覚で食品官能調査パネリストに参加、レシピサイトのアンバサダー。食に関する相談を受付中。ミュージアムショップではPR活動を行う。

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宮崎てげてげ通信ライター(寄稿)

県内各地に散らばる寄稿者用の統一アカウントです。 宮崎県内の地元の人だからこそ知っているおすすめの「グルメ」「観光」情報を軸に、地域の安全安心につながる情報の提供にも取り組んでいきます。