油津Yottenで、Teleporters株式会社の2人が新しく始めたLIVNEYというサービスについて熱く語った夜、その2人のプレゼンの前に、5人の若者たちが、大勢の聴衆を前にして、それぞれの起業へのチャレンジについての短いプレゼンを披露したのでした。 今回は、そのチャレンジの内容を、ご紹介することにしましょう。 大谷真怜 急遽、順番が繰り上がってトップバッターとなったのは、父親から借りたという青いスーツに身を包んだ大谷真怜(おおたにまさと)さん。 三重県出身で、現在は、宮崎大学院農学研究科の2年生。 常に釣り竿を持ち歩き、暇さえあれば釣りに行く根っからの釣り好きです。 今年から無人島になった日南市南郷町の大島を活性化策を協議する「大島プロジェクト会議」の一員でもある大谷さんは、「釣り体験型サービス」をビジネス化したいと訴えます。 「大島は、目井津港から船で10分で、最近まで人が住んでいたので、インフラはひととおり整っています。 一番の理想は、大島で宿泊アウトドア体験ツアーを行うことですが、出張型釣り体験教室などもできると考えています。」 観光客に、自ら仕掛けを作って釣った魚を食べる「釣り体験サービス」を提供することは、食育にも繋がるとします。 また、8月に、「大島魅力発見隊」というイベントを自ら主催し、留学生や学生に釣りを体験してもらった経験から、外国人にも受け入れられるサービスだと自信を深め、日南から世界を狙えると話しました。 イベントの仕掛け人である土屋有さん(宮崎大学地域資源創生学部講師)が、 「彼は、ああみえて英語ができて、頭も良いんです。 お父さんが着ていたスーツですが、宮交の制服みたいですね。」 とフォローしつつ、最前列でプレゼンを聞いていた宮崎銀行油津支店の人に質問を投げかけ、 「どうやってもてなそうかと真剣に考えているのは、日南市にとっても有り難い。 地域で雇用を産む人をサポートするのは大事。 ビジネスモデルと我々も考えていかないといけない。」 という回答を引き出していました。 更に、このまま学業を続けるべきか、起業するか悩んでいるという大谷さんに対し、日南市の大野副市長から、 「裾が広い感じの懐かしい造りのスーツが印象的。 学業の傍ら取り組もうとするパッションはスゴいと思う。 現在、南郷町と串間市を繋ぐDMOもできて、大島を活性化するプロジェクトに取り組んでいただいているところので、それらとミートできればいい。 問題は、(目井津港と大島を繋ぐ)『あけぼの3』の運行本数か。」 というコメントを得ていました。 「釣りで人を笑顔にしたい。」と話す大谷さん。 今後、大島の活性化策が見えてくるに連れて、彼の活躍する場もできてくるのではないでしょうか。 NITTAKE 吉田周平 続いては、NITTAKEの吉田周平さん。 日南市飫肥の出身の29歳。 吉田さんについては、今年の2月にテゲツー!でいち早く紹介したのですが、それ以来、メディアやイベントに引っ張りだこで、活躍の場を広げています。 「5年前に飫肥に帰ってきて起業し、NITTAKEを設立して1年になります。 竹灯籠を使って空間演出の仕事で、人々に感動と心の豊かさを提供することを目指しています。 フェスやイベントなどでステージの演出をしたり、お祭りでオブジェを飾るほか、竹灯籠を作るワークショップを開催したり、最近では、インテリアとしても提案しています。」 「何故、竹灯籠を作るのかというと、放置竹林の問題があります。 今や、放置竹林は環境問題になってきています。 竹の根が周囲に進出して、山を荒らしてしまうんです。 地方に行けば行くほど問題で、日南でもあります。」 と語る吉田さんは、全国にいる竹灯籠の演出家の仲間と、竹灯籠で海外のお客様をお出迎えしたいとし、 「今後、全国でイベントを開いてこの活動を知って貰い、それによって放置竹林を解消していきたい。 NITTAKEという名前を全国に広めて、日南で雇用を産んでいきたい。」 と締めくくりました。 規模はまだ小さいものの、既にビジネスとして成り立っているので、今後の展開が楽しみです。 株式会社famcon 奥田慎平 続いての登壇は、奥田慎平さん。 名古屋大学農学部の3年生ですが、休学して東京でアグリビジネスの会社でインターンをしたりしていたのですが、9月末に初めて日南にやってきて、ついには会社を立ち上げて日南で起業するという、あれよあれよの展開。 そのあたりのいきさつについて、奥田さんは、 「東京のIT企業(CROOZ株式会社)が主催する、日南市で開かれた大学生のビジネスプランコンテストに出場して、行政に対するイメージが変わりました。 そこには、格好良い大人がいっぱいいました。その大人達にそそのかされて日南に来ました。」 と話します。 その奥田さんが取り組もうとしているのは、 「油津商店街にゲストハウスを作る」 こと。 ゲストハウスとは、奥田さんの定義によると、 「旅館営業の許可を取得していて、客室にドミトリー(2段ベッドが並んでいる部屋)がある、または1泊3,500円程度で泊まれる場所で、交流スペースがあって、海外のゲストにも対応できるところ」 というイメージのようです。 「様々な人が、国籍、性別、職業を問わす集うことができて、人々のよりどころ、地域のハブとなる」ゲストハウスを目指しています。 そのための物件は、油津Yottenのすぐ近くに既に確保済みで、2017年2月のオープンに向けて準備中とのことです。 名前も既に決まっていて、 「Sports Bar & HOSTEL fan!」 奥田さんは、 「様々なファンが集う商店街の宿屋として、応援する人、何かを好きな人、面白いこと、面白い人が集まる場にしたい。」 と言います。 チャレンジの場に日南市油津を選んだ理由については、 「広島カープのキャンプ時に宿泊場所、集う場所を提供したいと思います、 春季キャンプ時に日南に来る人は53,000人、油津カープ館の来館者は6,000人で、5割が県外から、宿泊はそのうちの3割という調査結果がありますが、日南市に宿泊施設が足りないため、宮崎市内のホテルに泊まるお客さん多数です。 宿泊施設自体にニーズがあり、泊まると日南市にお金が落ちます。」 と語ります。 そのゲストハウスは、 「外の人々と中の人々を繋ぐ、ハブ的な役割を果たせるといい。」 また、 「油津には大学生がいないので、大学生だけで運営するゲストハウスだったら面白い。」 とも。 キャンプシーズン以外の宿泊が課題ですが、その点については、 「企業やスタートアップでは、開発合宿で千葉県とか富士山とかに行くニーズがあるので、そういう需要を受け入れられれば。」 というビジョンもあるようです。 「商店街全体が宿と考え、食事は出さずに商店街で食べて貰うことを考えています。 お客様第一で、ゲストが宿や日南市のファンになってもらえれば。」 と語る奥田さん。 既に会社も立ち上げ、かなり具体的に進めていて、この日は地元テレビ局の密着取材も受けていました。 どんな宿になるのか、2017年2月のオープンが楽しみです。 オープンが近づいたら、テゲツー!でもレポートしたいですね。 くらうんふぁーむ 渡邉泰典 トップバッターのはずが、持ち込んだPCがうまくプロジェクターと接続できず、用意したパワポのスライドを使うことなくプレゼンせざるをえなくなった渡邉泰典さんは、東京出身の23歳。 通称「たいぴー」と呼ばれている彼は、中央大学理工学部を中退して、昨年春から1年間、日南市北鄕町のいちご農園で修業した後、今年の3月に独立して、いちご農家として新規就農しました。 「超若手の農業者が日南市に増えたらいいな。」と語るたいぴーは、若者が農業に参入する際の障壁について、 「今年から農業を始めましたが、9か月収入が無いので、塾講師のアルバイトなどをして凌いでいます。」 と、着業から収入を得るまでにタイムラグがあることを挙げます。 「日南市では、15年間で100人の農業者が減って、平均年齢が上がっているので、20代前半の若い力が参入することが今後のためになる」 と語るたいぴー。 「農家が若返れば、地元に残る人が増えます。 そうすると、公民館活動や消防団、地元の獅子舞など地域活動に参加してくれる人が増えます。 サラリーマンは、休みの時間を削って地域活動をやる意味がないので、参加率が低いですが、自営業ではつながりが大事なので、地域活動に参加するメリットがあり、地域のためには自営業が増えた方がいいのです。 そのためにも、自分がまずやらないとと思っていて、今日もこの後、獅子舞の練習に参加するので、残念ながら交流会には参加できません。」 ということで、いろいろと考えながら1年目の農業にチャレンジしているたいぴーです。 「農業は、先行投資が先に来て収入が後からなのですが、お金が先に入って、そのお金で設備投資ができればいいと考えました。 そのために、クラウドファンディングに挑戦しています。 初めて栽培をやる人のいちごを先に買っていただいて、美味しくできたら販売するという仕組みです。 新しいことをすると批判もあるし、プレッシャーもありますが、チャレンジして自分に負荷をかけ、負荷がたくさん集まって付加価値になれば!」 と話すたいピーが、キャンプファイヤーというクラウドファンディングサイトで挑戦中のプロジェクトがこちら。 「農家新参者がこれから作るいちごを先行販売する、新しいビジネスモデルを作りたい」 11月26日23時59分までに50万円を集めるのが目標で、支援金額に応じて、来春に収穫される予定のくらうんふぁーむのいちごがお礼の品となります。 応援してもいいなと思う方は、上記のリンクから、よろしくお願いします。 チャレンジャーが次々に現れる日南市 全員のプレゼンが終わった後、会場に集まった皆さんと、発表者の全員で記念撮影。 この日は、Facebookで告知しただけだったにも関わらず、主催者の予想を大きく上回る参加があり、テレビや新聞の取材もあって、関心の高さが伺われました。 次々に新しいチャレンジャーが現れる印象のある日南市。 地方創成のトップランナーとして注目を浴びていますが、その盛り上がりを支えているのは、地元の皆さんの熱い思いがあるような気がします。 今回の発表者のチャレンジの行方だけでなく、日南市のこれからの展開から目が離せません。