カリーノ宮崎地下1階、ラディッシュセブン「炭火焼きとワイン まんまーる」で3年前から不定期に開かれている、市町村ごとの食材を使ったコース料理と生産者のトークセッションを楽しむ「農家のごちそうバル」。 テゲツー!ではこれまで、綾町、都農町、高原町、小林市、川南町のバルの模様をお伝えしてきましたが、回を重ねて12回目となるバルが、8月初旬に開催されました。 今回のテーマとなったのは、宮崎県北西部にある「五ヶ瀬町」。 この居並ぶ6人の生産者達と、ラディッシュセブンのシェフ達がコラボレーションしたフルコースディナーの全貌をご覧ください。 5つの季節のある町 開会に先立ち、株式会社ラディッシュの佐藤龍三郎社長がご挨拶。 「先日、五ヶ瀬町に行ってきましたが、豊かで美しい自然と町のみなさんの温かい人柄に惹かれて、多くの人が訪れる町で、ラディッシュとしても応援したいと思いました。 この会場に季節の写真パネルが飾られていますが、五ヶ瀬町には5つの季節があるそうです。 原田町長に『5つめは何ですか?』と聞いたら、『自分で考えて』とのこと。 春夏秋冬プラス何なのかは、皆さんで考えてみてください。 私の印象は、きれいな女性が多いということと、平家の落人の伝説が残っているということ。 今回は、五ヶ瀬町の様々な素材を使って、ラディッシュセブンのスタッフが考えながら料理したコースを用意していますので、ゆっくり楽しんでいただければと思います。」 続いて、佐藤社長の挨拶の中にも登場した、五ヶ瀬町の原田俊平町長が挨拶に立ちました。 「シェフと生産者のコラボレーションで、五ヶ瀬のイメージの料理ができるということで、本日はとても楽しみにしています。 五ヶ瀬町は九州の真ん中にあり、福岡市の天神まで2時間半という地の利を活かしたまちづくりを行っています。 今日は、いろんな繋がりができることを期待しています。」 桜舞で乾杯! ひととおり挨拶が終わったら、五ヶ瀬ワイナリーのロゼスパークリングワイン「桜舞(おうぶ)」で乾杯し、宴がスタートしました。 生食用のキャンベルアーリーを原料に造られた「桜舞」は、やや甘口でフルーティーな香りがあり、アルコール度数も10%と低めなので、こうしたパーティーの乾杯用にふさわしいセレクトですね。 こちらが、その五ヶ瀬ワイナリーからいらした製造課の藤本新一さん。 2005(平成17)年にオープンした五ヶ瀬ワイナリーでは、生産者との二人三脚で、五ヶ瀬町内で収穫されたぶどう100%でワインを製造しています。 熊本県との県境に近い、「夕日の里」とも呼ばれる桑野内地区の標高660mの丘の上に立つワイナリーは、眺望も素晴らしく、県外からの訪問客も多い貴重な観光資源にもなっています。 前菜の盛り合わせ 最初に運ばれてきた前菜は、 ・地鶏の卵と五ヶ瀬ワイン「夕陽」 ・秋本さんの極上パプリカのムース仕立て ・雲海酒造「雲海」でマリネした五ヶ瀬ブルーベリーのミルティユ ルージュとフロマージュブラン の3種が一皿に盛られています。 そば焼酎「雲海」入りのバケットの上に載せられた半熟のゆで卵を割ると、中から流れ出すのは、五ヶ瀬ワイナリーでメルローを主体に醸された赤ワイン「夕陽」。 いきなり一品目から面白い仕掛けで楽しませてくれます。さすがは、まんまーるのシェフ陣。 皿の真ん中のパプリカのムースは、素材の持つ甘みが泡となって、口の中でふんわりと消えていきます。 3つめの丸く小さなパンには、雲海酒造のそば焼酎「雲海」に漬け込んだブルーベリーと、クリーミーで軽いチーズのフロマージュ・ブランが使われています。 この3品で軽く食欲を喚起して、五ヶ瀬尽くしのコースがスタートしました。 ここで登場した最初の生産者が、農業生産法人「霧立山地・ごかせ農園」の代表でパプリカ生産者の秋本佳成さん。 元々は熊本出身で、奥さんの実家である五ヶ瀬の農家に婿養子として迎えられ、農業の道に入ったのだそうです。 最初にパプリカを作り始めたときは、五ヶ瀬では誰も作っていなかったそうで、就農当時は大分に修行に出ていたこともあるそうですが、11年経った今は、3,000本のパプリカを育て、寒天ゼリーなどの加工品も開発しています。 夏トウモロコシとグリーンリーフのフラン 続いての料理は、 「五ヶ瀬夏トウモロコシと長田さんのグリーンリーフのフラン レタスの冷たいパウダーと五ヶ瀬の焼き茄子」 フランとは、フランス風の茶碗蒸しのこと。 甘くフレッシュなトウモロコシをすり潰して、茶碗蒸し風に仕立て、その上に焼き茄子とグリーンリーフ、更にグリーンリーフの上にレタスのパウダーが載せられているという手の込んだもの。 ここで使われているグリーンリーフやレラスを生産しているのが、長田慎司さん。 「料理が美味しくてびっくりした」という長田さんは、農家の長男で高卒で就農して5年目。 葉物野菜の他、水稲、わさび、トルコキキョウなども生産しており、農薬に頼らない農業を目指して、無農薬・減農薬栽培に取り組んでいます。 JA高千穂地区青年部副部長も務め、同世代の仲間達とともに「Backstay」というアカペラグループでも活躍しています。 「種から育てて出荷されるまでの過程が楽しい。」と語る長田さんは、「自分が育てた野菜が料理されて、それを皆さんが美味しそうに食べている様子を見ることができて嬉しい。」とも話していました。 五ヶ瀬ヤマメの紅茶パン粉フライ 続いての料理は、 「五ヶ瀬ヤマメの紅茶パン粉フライ 長田さんの夏ほうれん草のピリ辛グリーンカレーソース」。 五ヶ瀬川の源流域にある「やまめの里」で、無投薬で飼育管理されている「五ヶ瀬やまめ」は、県の水産ブランド品にも認定されています。 その「五ヶ瀬やまめ」に、宮崎茶房の「みやざき有機紅茶」とパン粉を合わせたものをまぶしてフライにして、紅茶のふくよかな香りをほんのりとまとわせてあります。 そのフライの下には、長田さんが育てた夏ほうれん草で作られたグリーンカレーソース。 ピリ辛ではありますが、辛さは控えめで、通常のエスニックなグリーンカレーとは違って香りも穏やかで、口に含むとほのかにココナツミルクも感じられます。 この皿と一緒に、宮崎茶房の「みやざき有機烏龍茶」が供されました。 ピリ辛のグリーンカレーソースと紅茶をまとったヤマメのフライを、華やかで清々しい香りの烏龍茶で洗い流すと、複雑な香りのハーモニーが鼻腔に抜けて、思わず「美味しい!」と声が出てしまいました。 そして、そのお茶の生産者、(株)宮崎茶房の宮崎亮さん。 五ヶ瀬町は、お茶の生産も盛んで、質・量ともに日本一の釜煎り茶の生産地です。 その中で宮崎さんは、農薬も化学肥料も使わない有機栽培で様々な品種のお茶を栽培し、そこから釜煎り茶、紅茶、烏龍茶、番茶などの製品を生み出しています。 この日も、料理に使われたお茶の他に、水出しの紅茶やほうじ茶、番茶、烏龍茶など 「飲んだら元気になるお茶づくり」をモットーに生産を行う(株)宮崎茶房のお茶は、品評会での数々の受賞歴が物語るようにクオリティも高く、今では海外にも輸出されています。 続きはこちら 絶品椎茸のコンフィー 絶品椎茸のコンフィー 4皿目の料理は、 「甲斐さんの絶品椎茸のコンフィー バーバクラブのかりんとうと椎茸のピューレ、長田さんのほうれん草のソース」 ウーロン茶で戻した肉厚の乾し椎茸を、低温の油で煮るようにして火を入れたコンフィーは、椎茸の旨味をしっかりと味わうことができる絶品。 皿には、椎茸のビューレと長田さんのほうれん草を使った2色のソースが敷かれ、桑野内地区の加工グループ「バーバクラブ」の皆さんが作るかりんとうを砕いたものをふりかけて、柔らかな椎茸に、カリッとした食感のアクセントを加えてあります。 かりんとうをこういう具合に使う技、勉強になります。 この料理の後で登場したのは、椎茸生産者の甲斐梅男さん。 「うめちゃん」の愛称で親しまれている甲斐さんは、椎茸振興会の会長でもあります。 椎茸栽培の傍ら、地元の子ども達にも栽培を体験させながら教えていて、 「中学生が修学旅行で東京・板橋区のハッピーロード商店街に行き、販売体験をやります。 大人でもなかなかできない声かけを一生懸命にやっている姿を見ていると、本当の社会教育だと思います。」 と甲斐さん。 五ヶ瀬に限らず、子ども達に、普段見慣れた地元の資源が外に出るとどのような評価を受けているのか、どのような価値を持っているのかを実践的に教えていくことは、子ども達に自己肯定感を与え、地域での人的資源の持続に繋がっていく大きな意味があるように思います。 そうした意味からも、この甲斐さんの笑顔と「うめちゃん」と誰からも愛されるキャラクターは、五ヶ瀬の大切な宝の一つなのかもしれません。 ブドウカンパチの低温ロースト 続いて運ばれてきたのは、 「一週間寝かせた五ヶ瀬ぶどうカンパチの低温ロースト 様々な五ヶ瀬の食材の食感と塩っこ椎茸」 「五ヶ瀬ぶどうカンパチ 桜舞~AUBE~」は、五ヶ瀬ワイナリーでワイン製造に使われたブドウの搾りかすを乾燥させて魚の餌に混ぜ、延岡市北浦町の漁業者の元で養殖されたカンパチのことで、新たなフルーツ魚として注目されています。 今回は、この「五ヶ瀬ぶどうカンパチ」を1週間ほど熟成させてアミノ酸を引き出し、低温でローストして、半生に近いしっとりとした食感になるよう、絶妙な加減で火が通されています。 切り身の下に敷かれているのは、五ヶ瀬米ととうもろこしのリゾット。 そこに、佐藤シェフが五ヶ瀬の特産センターで知ったという「塩っこ椎茸」と釜煎り茶をパラパラと振って、食感と香り、旨味のアクセントを加えています。 やまめのフライも美味しかったですが、このぶどうカンパチのローストも素晴らしい一品でした。 五ヶ瀬バスケーズ 続いての皿は、 「五ヶ瀬バスケーズ 四億年の湧水『妙見神水』と藤木さんのサンマルツァーノ・リゼルヴァ 秋本さんの赤黄パプリカ 五ヶ瀬地鶏のトマトソース煮込みソース」 「バスケーズ」とは、バスク風のトマト煮込みのことで、トマトとパプリカが欠かせません。 肉厚のパプリカは、これまでご紹介した秋本さんが育てたものですが、トマトは、藤木浩美さんが、平成の名水百選にも選ばれ「四億年の雫」とも呼ばれる、妙見神社の湧水「妙見神水」を使って育てるイタリアントマトの「サンマルツァーノ・リゼルヴァ」。 この、サンマルツァーノ・リゼルヴァを使ったトマトソースが、甘みと酸味のバランスが取れた優しくも滋味深い味わいで本当に美味しくて、添えられたジャガイモのピュレだけではなくて、サンマルツァーノ入りのパンまで総動員して舐めるように食べきってしまいました。 そのサンマルツァーノ・リゼルヴァの生産者、藤木浩美さん。 小柄で愛らしい印象の藤木さんですが、キッチンスタジオ「CORASITA」を運営しつつ、サンマルツァーノ・リゼルヴァを使ったトマトソースを開発し、自ら売り込みに回るなど、マルチに活躍されています。 「みんなと何かイベントをやりたいと思っていたので、ここで料理のお皿を見ただけで涙が出そうになります。」 と、一瞬、感極まった表情を見せて語る藤木さん。 「トマトの加工品を作りたいと、宮崎県が主催する6次産業化チャレンジ塾に参加したのがきっかけで、今、こうしてここの立てるのは、私だけの力ではありません。 その時の県の担当者だった松葉(久美)さんに無理やり食べさせて、そのおかげで今があります。 きっかけを与えてくれた松葉さんに感謝したいです。」 と、語る藤木さんでした。 このトマトソースがあまりに美味しかったので、会場の入口で販売されていたサンマルツァーノ・リゼルヴァを帰りに購入して、家でもトマトソース作ってしまいました。 五ヶ瀬夏集いちごのヴェリーヌ そして、最後のデザートは、 「五ヶ瀬 夏集いちごのヴェリーヌ」。 「ヴェリーヌ」とは、足のない小さなガラス製の器に層状に盛りつけた料理のことで、一番下にアルコールを飛ばさずに作った五ヶ瀬ワイン「ナイアガラ」のジュレ、その上にいちごのババロア、生クリームと重ねられて、五ヶ瀬産の夏いちご「みやざきなつはるか」が飾られています。 ヴェリーヌの横に添えられているのは、そば焼酎「雲海」を使った「ブールドネージュ」、フランス語で「雪の玉」を意味する焼き菓子です。 真夏にフレッシュないちごというのは、なかなか珍しいのですが、「みやざきなつはるか」は、標高の高い五ヶ瀬の冷涼な気候を生かした新たな特産品になりつつあります。 デザートの前までで結構お腹いっぱいだったのですが、いちごと五ヶ瀬ワインの甘酸っぱさがよくマッチしたこのデザート、不思議とぺろりと食べられて、大満足でエンディングを迎えたのでした。 以上6品の料理と飲料、生産者のトークで、五感を使って楽しんだ五ヶ瀬町。 果たして5番目の季節とは何だったのか、来場者それぞれに感じることができたのではないでしょうか。 その答えが知りたい方は、是非とも一度、五ヶ瀬町を訪れて、できれば宿泊して五ヶ瀬を感じてみてください。 今回も、様々な料理法と素材の組み合わせで、我々を楽しませてくれた、ラディッシュセブンの店長兼シェフの佐藤友紀さん。 シェフ自身も、様々な素材や生産者との出会いを楽しんでいるようですが、その引き出しの広さには、毎回驚かされます。 果たして次回は、どんな素材や料理で私たちを楽しませてくれるのでしょうか!? 次回の「農家のごちそうバル」については未定ですが、決まり次第「ラディッシュセブン」のFacebookページで告知されますので、cheku it up!!