孤独な料理人Diceです。 あちこちから桜の便りが届くようになった3月28日(土)、てげつーメンバーは高千穂で「みやざき100未来フォーラム」をやっているというのに、年度末進行と所属の異動で高千穂に行けず、これ幸いと仕方ないので、カリーノ地下のまんまーるで開催された「たかはる農家のごちそうバル」なるイベントに参加してきました。 まずは、高原町の日高光浩町長が開会のご挨拶。 昼間に隣保班の集まりがあったとかで、既に少々聞こし召している町長は絶好調! 高原町には凄い人がいて、本物を作っている。だからこそのこうしたコラボがあるとおっしゃいます。 「『牛のよだれ』という言葉がある。粘り強いということなんです。」というフレーズに笑ってしまいましたが、随所に小ネタを散りばめる町長、かなりお茶目。歌まで披露しようとして、司会の蒲池さんに止められてました。 でも、一生懸命に場を盛り上げようとする姿勢はさすが。これからの展開に期待が持てます。 続いて、ラ・ディッシュの佐藤社長がご挨拶。 高原町には縁があって、毎月のように通っていらっしゃるそうで、 「今夜は、チャンピオン牛を初め、良いものがたくさんあるので、楽しんで欲しい。」 と期待をあおります。 そして、こちらがあおられるフロアのお客さん達。 この日は、全80席が満員の盛況ぶりです。 次に登場したのは、「自称・元ミスたかはる」というキャサリンさん。 たかはるラブを語りつつ、会場内を回って愛嬌を振りまいていらっしゃいましたが、お話しできなかったので、その正体つかめずじまい。 今度、別途取材に行くかな。 さて、そうこうしているうちに、高原町の女性4人による「TAKAHARUガールズトーク」が始まりました。 登場したのは、 ・中武榮子さん(けったくり芋生産者・料理研究家) ・邊木園浩子さん(椎茸生産者) ・小久保京子さん(紅茶生産者) ・蒲池美由希さん(高原町営農推進係) の4人。 元バスガイドという蒲池さんの進行で、それぞれの生産者が、高原のみどころや美味しいものをスライドで投影しながら紹介。 お客さんは、飲みながら、食べながら、話を聞くというスタイル。 こうしている間にも、美味しい料理が次々と運ばれてきております。 女性陣によるガールズトークの後は、高原町役場畜産係の小久保洋平さんが、和牛の肥育について熱く語りました。 この話が面白くて必死にメモってたので、写真撮れなかったのが残念! で、小久保さんのお話は、 牛には人間の指紋と同じように鼻に鼻紋があって、それを取るための専門の道具がある とか、 BSE(牛海綿状脳症)の後に導入された10桁の個体識別番号によって、どこで産まれ、どこで育てられ、どこで肉になったかがわかる とか、 宮崎の伝説の種牛「安平」号は田尻系の牛でという話から始まって、黒家和牛には大別して「田尻系」、「気高系」、「糸桜系」の3つの系統があり、焼肉屋で、今日の肉はこのうちのどの系統?なんて聞くとツウだと思われるはずって言うけど、バイトの兄ちゃんに聞いてもスルーされるだけですから、聞く相手を間違えないようにね。 せっかくメモったのでついでに書いておくと、 「田尻(たじり)系」は兵庫県が原産で、小柄で肉質に優れ、特産松阪牛なんかはこの系統が多い。 「気高(けだか)系」は鳥取県が原産で大柄で子育て上手。口蹄疫の際に殺処分された種牛の「忠富士」はこの系統だった。 「糸桜(いとざくら)系」は島根県原産で、大柄でロース芯と呼ばれる部分が大きいのが特徴。宮崎の種牛では、口蹄疫を生き延びた「福之国」や、高原産の「義美福」がこの系統で、この日提供された肉も「義美福」から産まれた牛の肉で、等級はA5の11番とのことでした! そしていよいよ、本日のメーンイベント、男性陣によるトークセッション。 登場したのは、写真左から、 ・日高光浩さん(高原町長) ・鳥丸軍三さん(和牛肥育農家) ・岡元岩太郎さん(和牛繁殖農家) ・原田裕亮さん(和牛繁殖肥育一貫農家) ・小久保洋平さん(高原町畜産係) そして進行はこの人、高原町畜産係長の森山業さん。 みんな、とにかく牛にかける熱い思いの凄いこと。 日高町長も元々は町役場の職員として畜産関係の仕事をメインに従事してきた畜産のスペシャリストだし、岡元さんは若手畜産農家の会「たかはるベブクラブ(TBC)」の代表で質の高い子牛を育てることで定評があるし、原田さんは町内で最も高冷地の旭台で「受精→分娩→子牛育成→肥育→肉としての出荷」を全てこなす県内でも珍しい一貫経営農家で、人工授精士でもあるという。 これだけのメンバーが揃えば、黒家和牛のことでわからないことはないって感じで、場内もヒートアップ。 そして、今回の主役と言ってもいいでしょうこの方が、この日料理された最高級の肉を提供された鳥丸軍三さん。 鳥丸さんは、約120頭の牛を肥育する農家で、高原町畜産振興会理事長。2014年は、JA宮崎経済連の共励会・共進会で史上初の2回連続チャンピオンを獲得した達人でもあり、高原町畜産界のリーダー的存在でもあります。 御年61歳の鳥丸さんは、今も朝5時半に起きて盆正月なしで牛の世話に生活をかけておられます。 「自分の口(食事)より牛の口(食餌)」と言うように、全て牛が優先の生活で、家族旅行も結婚して以来1~2回しかないのだそう。 それが仕事だし、牛がペット、それが幸せ!そういう感覚なのでそうです。 高校を卒業して以来、40年以上牛の肥育の仕事を続け、信念を貫いたごほうびとして連続チャンピオンをいただけたのだと思うとおっしゃってました。 そして、高原町は町村としては牛の頭数が日本一の自治体であり、高原町から日本一の牛を出すことが皆さん共通の夢だということで、 『2017(平成29)年に行われる全国和牛能力共進会で高原町産の牛で3連覇を目指す!』というV3宣言が飛び出したのでした。 さあ、V3宣言でまとまったところで、待ちに待った素晴らしい料理をご紹介しましょう。 続きはこちら 高原の素材とまんまーるの料理人の真剣勝負 高原の素材とまんまーるの料理人の真剣勝負 まずは一品目、グラスの中に春の装いで供されるのは、「たかはるとれ筍と雑穀の冷製スープ たかはるセリの香り」。 香ばしい雑穀の奥にセリの春の香りが加わり、筍のほのかな苦みを包み込むクリーミーな冷たいスープが、前菜として食欲をかき立て、これから始まる饗宴への期待をいやがうえにも高めてくれます。 二品目は、「中嶋さんの熟成たかはる灰干し鶏のコンフィー 中武さんの芽キャベツ、キクイモチップス、山下さんのサルノコシカケ、クレソンのドレッシング」。 油の中でゆっくりと火を通された灰干し鶏は、噛むと柔らかく歯を押し返しつつ、凝縮した旨味が溢れ出し、もっともっと、1羽分でも食べたくなります。 添えられたクレソンのドレッシングも春らしく爽やかで、芽キャベツとサルノコシカケ、キクイモチップのそれぞれ異なる食感と味が、口の中を楽しませてくれます。 皿に残ったソースをぬぐい取って食べるのは、「たかはる産小麦の天孫降臨カンパーニュ」。 外側はパリッと焼けて香ばしく、中はもっちりとして、酸味はあまり感じず優しい味わい。 この日の「まんまーる」も80人の満員御礼。80人分を作る厨房はまさに戦場で、キッチンスタッフも総出で頑張ってました。 三品目は、「たかはる産よもぎとけったくり芋の2色のニョッキ はなどうの地蜜と梅肉、マスタードのソース」。 ニョッキは、蕎麦がきのように口の中でホロホロとほどける食感が面白い。けったくり芋は優しい甘み、よもぎは春の香りを残して溶けていく。そこにアクセントを加えるのが、梅肉の酸味と地蜜の甘みとマスタードのかすかな刺激。 四品目は、「灰干ししたニジマスのベニエ 日向椎茸研究会 田中さんの極上椎茸フリカッセ」。 ニジマスは、水分が抜けすぎず、あくまでも柔らかく、それでいてさっくりした衣の中で旨味が凝縮されている。添えられた椎茸のフリカッセのコリコリとした食感と旨味も嬉しい。 五品目は今日のメイン料理、「鳥丸軍三氏が肥育した極上宮崎牛のロースト、そのお肉の入ったハンバーグ『天照』 中武さんの塩へベスと牛肉のジュ」。 さすがにチャンピオン牛!、噛むほどに溢れ出す脂の美味さ。ずーっと噛んでいたくなる肉。 ハンバーグの中にも塊の肉が仕込まれていて、これまた美味い!。 やれ、黒毛和牛は脂が多いので健康に良くないとか、赤身の美味さがどうのこうのと言うけど、毎日のようにたくさん牛肉を食べる訳ではないのであれば、この一皿の中で味わい尽くす牛肉ということであれば、やはり丁寧に育てられた黒毛和牛に勝るものはない。 黒毛和牛は、日本の食卓に適した牛なのだろうな。そんなことを感じさせる素材と、その素材を活かす料理でした。 そして「神様の水『祓川湧水』で炊いた、小清水米の炊き込みご飯 鳥丸軍三氏の宮崎牛しぐれ添え」。 ゴボウの炊き込みご飯に、生姜を効かせた牛のしぐれ煮が添えられていて、このしぐれ煮が絶妙!。スゴい牛肉を余すとこなく使い切ろうとする料理人の意地を、このしぐれ煮に感じました。 そしてデザートは、「ゆるり紅茶のクリームブリュレ」。 どうです、このビジュアル。皿の上に茶色の大地から萌え出でる春が描かれているでしょう!?。 「ゆるり紅茶」は、高原町産の緑茶用茶葉を発酵させて作られた紅茶。そのままでもほのかな甘みがあるのが特徴です。 食事が終わって、ラディッシュセブンの佐藤店長もご挨拶。 高原町は芸達者が多くて面白かったけど、何にもまして凄い牛肉だったと、鳥丸さんの育てられて黒毛和牛の肉に感動を覚え、それを余すとこなく味わい尽くすメニューを考えられたのだそうです。 佐藤店長、スタッフの皆様、ごちそうさまでした。 しかし、凄いのは料理ばかりではなかった。 もうひとつの感動は、高原町産の穀類を原料に造られたアルコール飲料の数々でした。 続きはこちら 高原の素材で醸されたアルコール飲料が凄い! 高原の素材で醸されたアルコール飲料が凄い! この日は、飲み放題という設定でしたが、そのメニューに高原町産の素材と県内の醸造メーカーがコラボしたアルコール飲料が4種類も供されるという贅沢。 まず、1杯目にアペリティフとしていただいたのは、高原町産の小清水米、二条大麦、あわ、きび、ひえを使って、延岡市にあるひでじビールで仕込まれた「GOKOKU」。今年の1月23日に販売開始になったばかりで、買えるところも限られているため、本数限定での提供でした。 「GOKOKU」は、ビールと同じ製法ながら、麦芽の量の問題で酒税法上は発泡酒に分類されています。 色はやや濃いめ、香りはフルーティーで華やか、苦みは控えめで甘さの奥に若干の酸味も感じるスッキリとした喉ごしでした。 続いて2杯目は、高原町の農事組合法人「はなどう」が育てた大麦とひでじビールのコラボで、同法人の農産物直売所「杜の穂倉」のプライベートブランドである「穂倉金生」。 美味しいビール造りで定評のあるひでじビールですが、この「穂倉金生」は、「International Beer Competition 2012」(国際ビール大賞)ジャーマンピルスナー部門において金賞を受賞という凄いビールなんです。 宮崎県独自のSPG膜濾過技術を使って酵母を除去してあり、フレッシュで軽快な味わい。バランスの良い苦みで、ビールをたくさん飲む人には絶対受ける味だと思います。 通常は瓶だけで提供されている「穂倉金生」ですが、この日は特別にサーバーからジョッキに注いで提供されていました。 会の冒頭で挨拶されたイケメンは、「GOKOKU」と「穂倉金生」を造ったひでじビールから参加された梶川悟史さん。 ビール造りでずっと宮崎産の大麦を使いたいと考えていたところで、高原町の農事組合法人「はなどう」を紹介してもらい、4年前から高原で大麦を栽培してもらっているとのこと。 安心して使える質の高い原料との出会いが、ビールメーカーとして、新たなチャレンジ意欲をかきたてられているように思われます。 ビールの後、3杯目にいただいたのは、「穂倉千徳 純米生原酒」。 これまた「はなどう」が育てる米「はなかぐら」を使って、延岡市の千徳酒造が東京・赤坂「かさね」の主人・柏田幸二郎氏の監修のもと醸した純米酒です。 香りは軽快ですが、どっしりとした味わいで後味はすっきり。米の旨味を感じる、クオリティの高い日本酒だと思いました。 4杯目は、栽培が難しく廃れていた在来種のはだか麦「ミヤザキハダカ」を、都城の柳田酒造が「はなどう」の協力で復活させ、減圧蒸留で造り上げた麦焼酎の「駒」。 麦らしい甘い香りと、減圧ならではの軽快ですっきりした味わい。これを飲み放題にしちゃうと、何杯でも行けて困ってしまいますね(この日は取材だったので、ロックで1杯だけに留めましたけど…)。 ということで、県内の醸造メーカーを魅了する高原町産の穀類の実力とともに、醸造メーカー3社の実力を改めて感じさせられた一日でもありました。 会が終了して帰る際には、出口のところで椎茸生産者の邊木園さんから参加の皆さんに、原木乾椎茸ののプレゼントまであって、大満足の重ね塗り状態。 いただいた乾椎茸。原木椎茸は肉厚で美味しいので、このプレゼントは本当に嬉しい。 しっかり料理していただきます! ということで、盛りだくさんの内容でお届けした「たかはる農家のごちそうバル」。高原町の自然や素材、人の魅力がしっかり伝わるとても良いイベントでした。 まだまだ高原には隠れた実力があるような気がするので、てげつーとしても引き続き取材に行って、その魅力をお伝えしたいですね。 今回のイベントを企画された関係者の皆様、ありがとうございました。