「ごちそう」という言葉が好きなDiceです。 県内各地の生産者を紹介しつつ、その手により育てられた素材を使った料理を楽しむ「農家のごちそうバル」。 これまでも何度かお邪魔してレポートしてきましたが、11月6日(金)は、移住促進PRムービーで全国的に話題を集めている小林市の生産者とともに、その素材を使った料理を楽しもうという「小林農家のごちそうバル」が開かれましたので、またまた勇んで出かけてまいりました。 まずは、ラディッシュの佐藤龍三郎社長が歓迎のご挨拶。 テゲツー!もいつもお世話になっております。 続いて、小林市の肥後正弘市長が、フランス語と諸県弁でご挨拶。 なぜフランス語かというと、西諸県とフランスの間には、 (1) フランスの国土の形と西諸県地区(小林、えびの、高原)の形が似ている。 (2) 中硬水が湧き出る場所。 という共通点があるのだとか。 確かに、フランス産のミネラルウォーターとして有名な「エビアン(evian)」や「ヴァルス(Vals)」は中硬水。 小林で湧出する天然水は、適度にミネラルを含んでいて硬度がこれらの水に近く、この水を毎日飲んだり、お風呂で使ったりしている小林の人たちは、肌がきれいだと言われているとのこと。 ふ~ん。 ということで、小林市の名前を全国にとどろかせることになった話題のPRムービー「んだもしたん小林」をスクリーンで上映。 会場は満員御礼。さすがに話題を集めているだけあって、皆さんの関心も高いようです。 今回もラディッシュ・セブンのシェフ陣を率いるのは、佐藤友紀店長。 フレンチ担当なので、今日もまた一段と気合いが入っている感じがします。 渾身の料理と、その生産者達のトークを堪能! まずは一品目、「小林素材の3種前菜」の中から、OGAWA FARMの樹上完熟ミニトマト、ラタトゥイユ、バゲット オー・ド・スールス。 この皿の主役は、樹上完熟して収穫されたミニトマトのアイコ。甘さのある品種ですが、これは一段と甘く、味わいが濃く感じます。 そして、そのアイコをベースに作られたラタトゥイユは、タマネギ、ナス、シメジ、ピーマンなどが使われ、野菜の甘みがぎゅっと凝縮していました。 オー・ド・スールス(eau de source)というのは「湧き水」のこと。小林の中硬水を使って作られており、きっと本場フランスのバゲットに近いできあがりなのでしょう。 そのミニトマトを育てているのが、OGAWA FARMの小川紘未さん。 東京のIT企業のSEから、ご主人の故郷である小林にIターンし、農業未経験のまま夫婦で就農。 理系夫婦らしく、温度や湿度はもちろん、土の化学分析をしたりして全てを数値化。データ管理して栽培に活かしているのだとか。 更に、ご主人の道博さんは、気象予報士の資格も取得し、台風対策など気象を読みながら安定的な収穫を目指されているそうです。 育てたトマトは地元の小学校の給食にも出されていて、 「野菜嫌いの子ども達にも食べてもらえるようなものを作りたい。」 と話されていました。 「3種前菜」の2つめ、「ダイワファームのモッツァレラチーズ」。 毎朝、絞りたての生乳で乳製品を仕込んでいるダイワファームのチーズの美味しさは折り紙付き。 この日のモッツァレラチーズもフレッシュで、シコシコとした歯応えが嬉しい。 普通なら、ここにトマトのスライスを合わせてカプレーゼにするところですが、この日合わせてあるのは、「もものすけ」という品種の蕪。 赤い皮は、桃のように手でも剥けるらしいのですが、今回は赤さを生かして皮ごと。食感も柔らかくて甘みがあり、ジューシーで美味しい。 続きはこちらから パイオニアの育てるみやざき地頭鶏の衝撃! パイオニアの育てるみやざき地頭鶏の衝撃! 「3種前菜」の3つ目は、「紫白菜と鬼目さんの地頭鶏」。 普段は、炭火焼きで食べることの多い「みやざき地頭鶏」ですが、今回はメダイヨンに成形されて、甘みのある生の紫白菜とともに供されました。 この地頭鶏の臭みの無い旨味の深さに、参加者の皆さんも驚きの声を上げていました。 カリスマ養鶏農家の鬼目祥次さん。本業はブロイラーで飼育羽数50万羽は県内1位なのだとか。 「みやざき地頭鶏」生産では、試験場での品種開発段階から民営化に尽力したパイオニア的存在で、地鶏本来の味を大切に、じっくりと時間をかけ、“生き物”としての本来の育て方にもこだわっていらっしゃいます。 「鶏臭さを抜くために、餌から動物性のタンパク質を抜き、破砕米や自家製のケールを加えている。」 とおっしゃるなど、並々ならぬこだわりを持って育てられているからこそ、この味なのですね。 達人達の作る野菜が驚きを生み出す 前菜に続き供された二品目、「里芋のテリーヌ 橋満さんの酢ゴボウと卵のソースで」。 テリーヌに仕立てられたねっとりとした里芋の上には、里芋の皮の素揚げ。 それよりも驚かされたのが、この卵のソース。ソースに混ぜられたゴボウの食感が面白く、酢ゴボウにこんな使い方があるのかと感心させられました。 三品目は、「梶並さんの焼き冬野菜とその野菜のクーリ」。 使われている野菜は、縮み小松菜、黒大根、カブ、3種のニンジン、ナスタチウム、ねぎなど。 「クーリ」とは、ピュレした野菜で作られたソースのこと。 焼くことによって、うまく野菜の甘みが引き出されていました。特に、カブの瑞々しさ、ニンジンの甘さが印象的。 その野菜を育てているのが、生駒高原農園代表の梶並達明さん。 某大手パンメーカーを脱サラし、奥さんの地元である小林市に移住。生駒高原でユニークで珍しい多品種の野菜を栽培。 癌を克服し、農薬や化学肥料を使わず、明日の自分のために、美味しさと健康になるこだわりの野菜を生産されています。 年間を通して約50種類の野菜を栽培しており、さつまいもだけでも8~9種類、大根もいろいろありますとのこと。 県内外の多数のシェフからも評価が高いとのことですが、珍しい野菜も多いので、ご本人は「シェフ泣かせの野菜だよ。」とおっしゃってました。 この日は、カウンターから奥の部屋まで満席だったので、ラディッシュ・セブンのシェフ陣もフル回転。きびきびと、そして生き生きと。 四品目、「黒仁田さんの黒豚とホリケン冬多彩のポテ」 この日は会場にお見えになれなかった「ピッグハウス黒豚家」代表の黒仁田博子さんが育てた黒豚と、ホリケンファームの堀さんが育てたサトイモ、ニンジン、ダイコン、ゴボウといった根菜類を使った煮込み料理。 箸で切れるほどに柔らかく煮込まれた黒豚の脂の甘みと、その出汁を吸った根菜類の滋味。優しい味わいながら、インパクトのある一皿。 ホリケンファーム代表の堀研二郎さん。 東京農大卒業後、故郷の小林にUターン。自ら腐葉土を作り、発酵させた堆肥を混ぜ、土作りにとても力を注いでいるとのこと。 「1年367日、野菜のことを考えている。」と言うほどののめり込みようで、年間60種類くらいの野菜を、少量多品種栽培されています。 農薬や化学肥料を使わず、美味しい野菜と環境に負荷をかけない農業に取り組んでおり、 「小林に戻ってきて、故郷の星、川、山に感動し、それを次の世代に引き継いで行きたい。」 とおっしゃっていました。 その堀さんが育てた小麦でブーランジェ・パティシエの佐藤彰洋さんが焼いたセーグル・ブレ。 二つに割ると、小麦の粒が見えます。 これがセーグル(ライ麦)なのかは確認できませんでしたが、小麦の香る、甘みの奥にかすかな酸味も感じる美味しいブレでした。 続きはこちらから 掛け流しのミネラルウォーターで育つチョウザメ! 掛け流しのミネラルウォーターで育つチョウザメ! 五品目は、「炭とオーブンの2種の火入れで焼いたチョウザメ」。 チョウザメの切り身の回りを炭火で焼いた後、オーブンでじっくりとロースト。 この火の入れ加減が絶妙で、ふんわりと、且つ、しっとりとした焼き上がり。 付け合わせは、ホリケンファームのほうれん草とわさび菜で、全体をまとめるのが、甘酸っぱくフルーティーな香りのマンゴービネガーソース。 キャビアに注目が集まっていますが、肉質がしっかりして旨味のある白身であるチョウザメの魚肉は、生で食べても火を入れても良し。宮崎を代表する食材として、もっと使われて欲しいですね。 こちらが、チョウザメ養殖業の萩野裕樹さん。「みやざき西諸チョウザメ普及促進協議会」の会長。 小林市は水に恵まれていて、水温もチョウザメに合っているので、寸(長さ)も丸み(太さ)もバランス良く育つのだとか。 「チョウザメは、全国に3桁の養殖業者がいるが、小林では掛け流しの水で贅沢に養殖をしている。 ファミリーマートで販売されているミネラルウォーター「ファミマの天然水-霧島-」の工場から100mしか離れていない池で育てたチョウザメは、刺身でも食べられるほどで、その肉質には自信がある。」 と萩野さんは誇りを込めて語ります。 六品目は、「なかにし和牛の肩ロースのロースト カリカリスパイシーに仕上げた須木栗のコンディメント」 これまた絶妙に火入れされた、柔らかで濃厚な味わいの肩ロースは、噛みしめると脂の甘さがと赤身の美味さが染み出しますが、ここに肉汁を受け止めた栗のペーストを合わせ、更に栗をカリッと焼いて薬味(コンディメント)として使うという驚きの技法。 ちょっとスパイシーな栗が、ほどよいアクセントになっていました。 その須木栗の生産者である小川知子さん。 須木栗の中でも特に評価の高い栗を育てることで有名な生産農家で、農協婦人部にも所属し、現在は好きブランディング事業にも携わり、6次産業商品の開発も行ってらっしゃるのだとか。 お話を伺うと、栗の木の下で歌を歌ったり、声をかけたりして愛情を込めて栗を育てられているとのこと。 小林市須木築は、昼夜の寒暖の差が大きいため、実が締まって大きく香りの良い栗が育つのだそうです。 「栗は冷蔵庫で保存すると甘みが増すので、収穫したものをすぐに食べるのではなく、冷蔵庫に3週間入れておいてから食べると良い。調理する際は、茹でるより蒸す方がいい。」 という蘊蓄も教えていただきました。 そして宴は終盤へ 締めに出てきたのは、「チョウザメの出汁と小林天然水で作ったフレンチ雑炊」。 チョウザメはコラーゲン豊富なので、その骨や皮を煮出した出汁にもコラーゲンが豊富に含まれていて、アンチエイジングに嬉しい一皿。 ここまで、たくさんの料理をいただいてきましたが、さっぱり、さらりとお腹に納まりました。 最後のデザート、「川崎パティシエの“みごて”デセール」は、サヴァランでいいのかな? すき酒造の栗焼酎「栗極(くりきわみ)」を含ませ、カスタードとカシスの2色のソースでいただきます。 これがまた、もう入らないと思っていてもぺろりと平らげられてしまう美味しさ。まさに「見事な」デザートでした。 小林市は、方言を使ったポスターでも有名。 【宮崎県小林市が本気出す】住民の素材投稿によって作られる「方言ポスター」がプロ顔負け 参照元:creive 「てなんど小林プロジェクト」は、広告業界からも注目を集める取り組みとあって、小林市役所の職員の皆さんも、PRに熱が入ります。 そんな小林の皆さんの熱い思いを感じることのできた「小林農家のごちそうバル」でした。 豊かな森と水によりはぐくまれた、極上の食材と、それを支える、とてつもない熱量を持った生産者の皆さん。 今回お会いした以外にも、たくさんの素敵な方々がそれぞれの道に取り組んでらっしゃることでしょう。 これからも小林と西諸の取組を注目していきたいと思います。