ひむか蹴球雑記Vol.8 - “二刀流”でジュニア世代の底上げを図るサッカー専門塾とは!?

公益財団法人日本スポーツ協会(旧日本体育協会)の「スポーツ少年団登録状況 」によると、宮崎県で令和4(2022)年度にスポーツ少年団に登録しているのは全体で12,054人。
競技別に見ていくと、軟式野球が2,100人で一番多く、次いでバレーボールの1,934人、サッカーは1,323人で3位につけています。

もちろん、この数字は同協会に登録している人数をまとめたものなので、実際にはもっと多いはず。
全国各地で、たくさんの子どもたちが様々な団体に所属して、スポーツに取り組んでいることでしょう。
大会に出場し、勝敗を競うところもあれば、基礎的な技術指導を中心に教えていたり、レクリエーションのように体を動かす楽しさを主としていたりなどさまざまです。

元Jリーガーによる「タイシたもんだ!」のサッカー専門塾

「CHASE」の西岡太志さん(画像提供:「CHASEサッカー塾」)

今回ご紹介する「CHASEサッカー塾」(以下、「CHASE」)は、その名の通り、サッカー専門の「塾」です。
講師を務めるのは、宮崎市佐土原町出身の元 Jリーガーで、昨季テゲバジャーロ宮崎に所属しディフェンダーとして活躍した西岡大志さん。
最近は、UMKテレビ宮崎の番組『KICKOFF! MIYAZAKI』の解説者としても活躍されていますね。
「CHASE」は、プロ経験のある西岡さんが直接指導してくれるのが魅力のひとつとなっているのです。

西岡さんは、地元のチームで1年間戦ったことを通して、もっと地元のサッカー発展のために、貢献したいという気持ちを強くしていました。
引退後、考えた末にたどり着いたのが、子どもたちにサッカーを教えること。
宮崎県のサッカーの底上げと裾野を広げたいという思いも、そこにはありました。

「CHASE」では、ボールを止める・蹴るという基礎の基礎はもちろん、それぞれの子どもの体力や能力に応じた体の動かし方やバランスの取り方など、サッカーをプレーする上での基本的なものを教えています。
それぞれの子どもに合った基礎練習を反復して行うことで、「考える前に体が動くプレー」を目指します。
年齢の低いころからこれらの技術を学ぶことにより、「寄り道」をせずにサッカーが上達するように指導がなされているのです。

「CHASE」は、スポーツ少年団やクラブチームではなく、あくまでもサッカーに特化した「塾」。チームを組んで大会に出ることはありません。
子どもたちはここで技術を学び、所属するチームやクラブに持ち帰って、活かすことになります。
チームやクラブでは全体練習が中心で個人の技術練習が不足しがちなため、個人技術にみっちりと取り組めるのはありがたいですよね。

技術とともに大事なもう一つの柱は「食」

「アスリートフードマイスター」として、各地で講演も行う真理子さん(画像提供:「CHASEサッカー塾」)

「CHASE」の特徴は、それだけではありません。
子どもたちの成長を手助けする、もうひとつの柱があります。
それは、「」。

担当するのは大志さんの実母で、食育アドバイザーの西岡真理子さんです。
真理子さんは、アスリート個々人に合った「食」のプログラムを考える、「アスリートフードマイスター」という資格を持っています。
先日引退を発表したサッカー元日本代表・長谷部誠さんの妻でタレントの佐藤ありささんや、パリ五輪マラソン代表に内定した大迫傑選手の妻・あゆみさんなども持っている資格だそうです。

さらに、食生活の改善を通してメンタルバランスを整える「メンタルフードマイスター」という資格も取得しています。

子どもの成長に「食」は欠かせません。特に、未来のサッカー選手を目指す子どもたちにとって、サッカーの技術を身につけるのと同じくらい、食事の摂り方はすごく大事です。
普段はどんなものを食べさせればいいのか、練習後は、試合の前夜は、当日の朝は、試合の後は……。

実は、ベテランの指導者であっても「食」の重要さに気づいていないことが、少なくありません。
大志さんが技術面を、真理子さんが食事の面を担当することで、子どもたちの成長をしっかりとサポートしています。
「技術」と「食」の“二刀流”を教える「CHASE」は、その点でもユニークな存在だと言えます。

挫折経験を指導に活かす

FC琉球時代の大志さん。センターバックやサイドバックとして活躍した(画像提供:「CHASEサッカー塾」)

この“二刀流”の指導法を取り入れたきっかけは、大志さん自身の一見順風そうに見えながら、実は挫折の多かったサッカー人生を振り返ってのことでした。

子どものころは、ひたすらボールを蹴っていたという大志さん。
中学卒業後は地元を離れ、福岡県宗像市にある東海大附属第五高校(現・東海大附属福岡高校)に進学しましたが、成長期真っ只中ということもあり、ケガも多かったそうです。

母親の真理子さんは、食事の取り方にも問題があるのではないかと考えました。
真理子さんは、寮の食事にプラスしてバランスの良いものを食べてもらおうと、「アスリートフードマイスター」として考えた適切な食材を、毎週のように福岡へ届けました。
その甲斐もあり、大志さんはサッカーの名門・福岡大を経て、2017年にFC琉球でプロサッカー選手としての歩みを始めました。

一見、順調な歩みにも見えますが、大学時代にはトップチームに上がることができないという苦しみも味わいました。琉球への入団も、練習生からのスタート。
ひたむきに練習に取り組む姿勢が、当時の金鍾成(キム・ジョンソン)監督に認められ、ようやく念願のJリーガーになれたのです。2018年には、チームのJ3優勝とJ2昇格に貢献しています。

愛媛時代の西岡兄弟。背番号3が大志さん、4が兄の大輝さん(画像提供:「CHASEサッカー塾」)

2020年からは愛媛FCで3シーズンを過ごしますが、最初の1年は、実兄の大輝さんも同じチームに在籍していました。
第2節の徳島戦では、西岡兄弟のゴールもあって4-3の逆転勝利も成し遂げています。

この間も、真理子さんの食材運びは続いていました。
「沖縄や愛媛にいるときは、半分旅行気分で通っていました」と、真理子さんは笑って振り返ります。

そして2023年には、地元のJリーグクラブ、テゲバジャーロ宮崎に移籍。そしてこの年でスパイクを脱ぎました。
Jリーガとしては7シーズンで163試合(天皇杯3試合を含む)に出場し、13得点を上げています。

大志選手の活躍を支えたひとつが、家族が届ける「食材」だったのです。
そして、引退後のセカンドキャリアとして選んだのが、この「CHASE」立ち上げでした。

体験会と申し込みについて

今年の3月20日には、宮崎市にあるアミノバイタルトレーニングセンター室内練習場で無料体験会を実施。
多くの子どもたちが集まり、元Jリーガーの指導のもと、さまざまな練習に熱心に取り組んでいました。

現在は、宮崎市や新富町を中心に、小学1〜3年生、4〜6年生、中学生の3クラスに分かれて開催されています。
中には、すでに満員となったクラスもあるようですよ。

・クラス・開催日時、会場については、こちらの「無料体験レッスン申込フォーム」ご参照してください。


また、通常のクラスとは別に、個人レッスンも受け付けています。

お問い合わせは下記までメールで。
chasesoccerjuku@gmail.com

フォトレポート

先日、開講中の「CHASEサッカー塾」にお邪魔してきましたので、その模様を写真でご紹介します。

大志さんの話を熱心に聞く子どもたち
まずはボールを使わない基礎練習「ボディコーディネーション」からスタート
続いて、ボールの動かし方を繰り返し練習
一人ひとりの個性を見ながらの指導
チームに別れてボールを奪い合う練習
さらに広いピッチでミニゲーム
気づいたことがあればゲームを止めて説明
練習の様子を撮影し、LINEを通じて保護者に送付
練習後には「補食」を提供。この日はおにぎり
おにぎりを手に帰途につく塾生

元Jリーガーとスポーツフードマイスターがタッグを組んだサッカー塾のプログラム、さすがに「タイシたもんだ!」と思いました。

寄稿者:mario
鹿児島県生まれ宮崎県育ち。山口県で10年超を過ごし再び宮崎へ。
テゲバジャーロ宮崎のファン兼番記者 / フリーランスライター / 人生に欠かせないものは音楽とお酒と活字と睡眠 / そしてお城めぐりは永遠のテーマ

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宮崎てげてげ通信ライター(寄稿)

県内各地に散らばる寄稿者用の統一アカウントです。 宮崎県内の地元の人だからこそ知っているおすすめの「グルメ」「観光」情報を軸に、地域の安全安心につながる情報の提供にも取り組んでいきます。