こんにちは。先月よりライターの仲間入りをさせていただいたヒロです。
今回は、宮崎市の山崎街道沿いにある「gallery root for (ギャラリー ルート フォー)」さんが、今年の12月で活動に区切りを付けられるとのことで、お話を伺いに行ってきました。
「gallery root for (ギャラリー ルート フォー)」は、児玉美音子さん(画家・イラストレーター)、川越るみさん(画家・立体作家)、池部貴恵さん(画家)の3人が、 Hair design space green代表で美容師の浜田庄治さんとともに、新型コロナ感染症の収束がまだ見通せていない2022年3月1日に創業しました。
3人の作品は、県内在住者なら多くの方がどこかで目にしているであろうほどの実績があるのですが、そんな3人もコロナ禍で大きな苦痛を味わいました。
当時を振り返っていただくと、
児玉:「展示会の突然の中止や、お世話になっていたギャラリーの廃業、予定していた海外展示や活動が白紙になりました。」
川越:「大きな展示会が1年延期、延期後も外出自粛ムードの中、 積極的な集客や宣伝ができない中での開催でした。」
池部:「ちょうどフリーランスになったばかりの時期でした。右も左も手探り状態で、いろんな方への感謝の方が大きいです。」
折しも児玉さんは、東アジア数国で展示が決まっていたのです。
川越さんは、都市圏での個展の機会を得ながら、本人の在廊さえ叶わなかったのです。
最年少の池部さんも、何をするにも不安がつきまとう厳しい船出でした。
自身の活動もままならない中、グループ展等で親交を深めていた3人は、ご縁のあった美容室greenのオーナー・浜田庄治さんに相談し、浜田さんが美容室の敷地内で事務所として使っていたコンテナを、展示場所及びギャラリーと想定して一緒に内覧しました。
そこで不思議な居心地の良さ、穏やかな空気感があるのを感じ取ったのです。
終わりの見えないコロナ禍の中で、今できる事と近い将来の夢を重ね合わせ、共同オーナーでのギャラリー運営を決意しました。
ギャラリーの名前として選んだのは、「ルート フォー」。
「ルート フォー」のルート(Root)は、「根っこ」を 意味し、数学では平方根√を意味します。
フォーは「four (4)」ではなく「for」。「root for」には「「(熱狂的に)~を応援する」という意味があり、繋がりが根を張り拡がっていく、という意味を込め、誰かが誰かの為に応援していく、そんな願いも込められていました。
3人は、このギャラリーで自分達の展示の場も確保しながら、加えて地元の作家さん達にも手を差し伸べていきます。
3人で運営する事による、思いがけずプラスになった事をお聞きしました。
児玉:「苦手な分野を補い合え、自身の活力と癒しになりました。 3人揃うと、気持ちも落ち着くんです。」
苦しい中、志の近い仲間の存在は、どれだけ心の支えとなった事でしょう。
川越:「それぞれが閃いた事を、それぞれの視点で色々な方向から考え、3人で形にしていけました。」
それぞれ新たな作風に挑戦したり、仲間からの気持ちのバックアップを得て 、創造力や精神面も進化していきます。
それも、3人補い合いながら、です。
池部:「1人では思いつかないアイデアや、人との出会いが繋がっていきました。小さな事でも話し合える関係性になっていきました。」
運営を重ねる中で、多くの印象的な作家さん達と出会い、 展示の依頼も増えていきます。
展示する作家さんのポテンシャルを引き出す為に、それぞれが心掛けている事も尋ねてみました。
児玉:「作家さんの立場になって動く。また、その方の制作意図や生き様について深く知った上で、その方にしかない魅力をお客様に伝える様心がけています。」
川越:「作家さんのイメージに近づけるお手伝いを。新鮮な印象が持てるように。どれも正解なんです。初個展の作家さんには、一緒に考えて見せ方のアドバイスや空間づくりを行います。」
池部:「自然体で接する。遠慮せずアドバイスする事で、作家さんも背中を押される様に、思い切って作品を発表して下さった場面が沢山ありました。」
3人とも〝寄り添う”前提で話しているのが伝わってきました。
そして3人は、ギャラリーのオーナー目線というより、経験のある作家仲間の目線で、きめ細かなケアを行ってきました。
出展者側としてはどれだけ心強いでしょうか。しかも、寄り添ってくれる仲間が3人もいるんです。
時が流れ、展示の場が徐々に戻り始め、入場制限なども緩和されていきます。
そしてオープンから2年が経ち、3人は再び何の制約も無くそれぞれが羽ばたく為に、現在の活動にゴールを設けました。
世間の状況も変わり元の日常が戻りつつある今、3人はそれぞれの道に戻り、自身の高みを極めるべく、本年12月半ばでのギャラリーを解散することを決めたのです。
解散に向けての想い、また意識している事をお聞きしました。
児玉:「解散しても、培ったものは必ず次へ活かされます。自信を持って、自分の心に忠実に歩んでいきます。」
そして児玉さんは、次の一言を繋ぎました。
「〝自分“というものは、実は大きな可能性を持っていて、望めばいくらでも成長できます。物事は、勇気が有るか無いかで大きく動くし、それを選ぶのも自分なんだと。」
川越:「ギャラリーの魅力を引き出す工夫や、運営について協力し進めた事が結果に繋がり、その積み重ねが貴重な宝となりました。残る展示も一つ一つ愛おしみ、楽しみます」
池部:「関わって下さった皆さんが、新しいステージに進むキッカケになれたらと願っています。出会った沢山の方達も、活動を広げて宮崎の文化を盛り上げていって欲しいです。」
ギャラリーのある場所は、林に囲まれた、心地よい空間が印象的です。
未曾有のコロナ禍の中、活動の場を失いかけた3人の作家さんが、そこで共同オーナーという形でギャラリーを運営し、多くの作家さんに展示の機会を与えながら、見事に苦しい時期を乗り越えたのです。
ここまで(2024年1月現在)49件の展示会を重ね、のべ150人以上の作家に活躍の場を与えてきました。
ギャラリーは決して大きくないのですが、キャリアもジャンルも異なる作家さんに寄り添いながら、宮崎のアート業界にもたらした影響は大きいのです。
皆さんも、12月の解散までに、ぜひ一度、足を運んでご覧ください。
きっと、宮崎のアート文化の縮図を堪能できるはずです。
【gallery root for (ギャラリー ルート フォー)】
住所:宮崎市新別府町薦藁716-1 (Hair design space green 敷地内) → マップ
営業時間:11:00〜18:00
定休日:月・火定休
問合せ先:インスタグラム @gallery_root4 まで