有機JAS認証の8ヶ所の圃場で9種類の茶樹を栽培し、「もりもっ茶」ブランドの茶製品を製造・販売する有限会社豊緑園(新富町)が、お茶と大福やわらび餅、おこわなどを販売する、茶×米のコンセプトショップ「みどりとすずめ」をオープンさせたのが、2020年3月。
今度は、その「みどりとすずめ」の隣に、手づくりのお菓子やおつまみとともに、3〜5種類のお茶を愉しんでいただくTEAペアリングサロンをオープンさせたというので、出かけてきました。
場所は、航空自衛隊新田原基地の正門前から高鍋町の舞鶴公園へ北上する県道44号宮崎髙鍋線の途中。
開けた台地の十字路に、平屋で白壁の「みどりとすずめ」と、その隣に目的地である切妻屋根でグレーの壁の「茶 LON DE THÉ MORIMO 茶(サロン・ド・テ・もりもっちゃ)」があります。
扉を開けると、L字の木製カウンターがしつらえられ、椅子が8脚配されています。
カウンターの上にはワイングラスがずらりと吊され、まるでワインバーのよう。
カウンターの奥には、横長の大きな窓が開口しており、遠くの茶畑、さらにその向こうの山並みを借景として、四季の移ろいや光や風の動きを室内に取り込む役割を果たしています。
出迎えてくれたのは、有限会社豊緑園の代表取締役・森本健太郎さん。
1976年11月生まれの46歳で、19歳の時に祖父の時代からのお茶農家を継いだ3代目。
高齢化が進むお茶農家の中ではまだまだ若手の部類ですが、30年近いキャリアを持つベテランで、有機栽培や自社ブランドのブランディングにも熱心に取り組んできています。
お茶農家は(に限らずですが)、少子高齢化や食の多様性の進展で茶葉の消費量が減っていることもあっって厳しい状況に置かれており、
「もっとお茶を飲んで欲しい。ペットボトルのお茶も良いが、茶葉を消費して欲しい。そのためにもお茶のことをもっと知って欲しい。」
という思いから、自ら作ったお茶をゆっくりと味わっていただきながら、生産者としてお客様と話のできる場を模索した結果、このような形になったとのこと。
こちらのTEAペアリングサロンには、5種類の水出し茶の中から2種類と温かいお茶1種類、お茶に合わせたお菓子3種を楽しむ1,000円(税込)のコースと、水出し茶3種、温かいお茶2種、お茶に合わせたお菓子とアペリティフ(前菜)計5種を楽しむ1,500円(税込)のコースがあります。
水出しは、写真右から、「うまみ緑茶」、「華やぎ緑茶」、「爽やか緑茶」、「芳ばし緑茶」、「焙じ茶」があります。
折角ですから、たくさんのお茶が愉しめる1,500円のコースをお願いしました。
早速、ブルゴーニュタイプのワイングラスに、森本さんが水出し茶をサーブしてくれます。
ワイングラスを使うのは、香りの違いをよりわかりやすくするためですが、なかなかにスタイリッシュで、特別感もありますね。
お茶に合わせたお菓子3種。
右は、餡玉(紅茶+せとか、抹茶+くるみ)。
柑橘の大トロとも呼ばれる「せとか」は、清武のCOZY farmのもの。柑橘と紅茶の組み合わせは鉄板ですね。
くるみの入った抹茶の餡玉は、くるみのカリカリとしたクランチーな食感のアクセントとコクが嬉しい。
中央手前は、くるみに甜菜糖蜜と粉にした抹茶をかけたもの。中央奥は綾町産の落花生に甜菜糖蜜と粉にした焙じ茶をかけたもの。
左は、わらび餅2種。蕨(わらび)粉と和三盆で作られた餅に、緑は粉末のもりもっ茶ときなこを、茶色は粉末の焙じ茶ときな粉をまぶしたもの。
いずれのお菓子も茶葉が使われていて、お茶とのペアリングにはストレートですが、香りの邪魔をせず、食感や香りの変化なども楽しめるようによく考えられています。
水出し茶の1杯目は、「うまみ緑茶」。
「白折(しらおれ)」と呼ばれる、お茶の茎で作られた茎茶。茎主体なので色は黄色っぽいですが、煎茶より甘みがあり、逆に渋みが少なくお茶らしい旨味が感じられます。
水出しながら香りもあり、軽い味わいのお茶でした。
2杯目は、「芳(こう)ばし緑茶」。
静岡生まれの品種で、独特のミルキーな香りが特徴の「かなやみどり」のぐり茶です。
茶葉としては個性が強いので、好き嫌いが分かれるそうですが、水出しでは名前のとおり芳ばしい香りが立ち上ります。
ちなみに「ぐり茶」というのは、深蒸し玉緑茶で、蒸した茶葉を乾燥させる工程で「精揉(せいじゅう)」という揉んで細長くする成形を行わず、再乾機で遠心力を使って乾燥させます。
乾燥の過程で茶葉がぐりっとよじれることから「ぐり茶」と呼ばれるようになり、茶葉本来の旨味が残る製法なのだそうです。
3杯目は、「華(はな)やぎ緑茶」。
こちらは宮崎生まれの品種「みなみさやか」が使われていて、フルーティーというかフローラルな香りが奥に潜んでいて、「華やぎ」という命名にふさわしいお茶です。
味わいは、比較的さっぱりとしています。
以上、3種類でしたが、今回いただかなかった「爽(さわ)やか緑茶」は、静岡生まれの「めいりょく」という茶葉を使い、清涼感のある爽やかな香りが特徴。
「焙じ茶」は、蛍の舞う圃場で栽培されている「やまなみ」という品種の秋番茶の茶葉を焙じたものだそうです。
再訪時は、これらもいただいてみたいと思います。
お茶に合わせたアペリティフ(前菜)の1品目は、乾しプルーンに生ハムを乗せ、オリーブオイルをかけて、ぐり茶をトッピングしてあります。
プルーンの甘みと生ハムの塩気、旨味が口の中で絶妙なハーモニーを作ります。
ぐり茶を一緒に噛むと、カリッとした食感の後、お茶の香りが鼻腔に立ち上ってきます。
アペリティフ2品目は、延岡市の「甲斐農園 苺屋」のいちごに、小林市の「加藤牧場」のヨーグルトを乗せ、その上に抹茶のソースをかけたもの。
加藤牧場のヨーグルトは生クリームのような濃厚さがあり、いちごの甘みや酸味をよく引き立ててくれます。
そこにかかった抹茶ソースのほろ苦さと香りが、良いアクセントになっています。
どちらのアペリティフも、お茶とのマッチングだけではなく、ワインなどにも合う、よく考えられた組み合わせだと感じました。
水出し茶のテイスティングが終わったら、次は温かいお茶。
1杯目には、煎茶をお願いしました。
湯ざましでお湯の温度を下げてから、急須に入れた茶葉に1杯分の量を注ぎ、しばらく抽出してから茶碗に注ぎ切ります。
もりもっ茶の看板商品である煎茶は、旨味の「ゆたかみどり」、香りの「さえみどり」、間を取り持つ「やぶきた」のブレンドで、香り、旨味のバランスの取れた優しい味わい。
通常の茶園では珍しい、9種類の茶樹を育てているからこそ、こうしたブレンドも自在にできるのが豊緑園もりもっ茶の特徴でもあります。
最後の1杯は「紅茶」をお願いしました。
ガラスの急須に茶葉を入れ、熱湯を注ぎます。
紅茶が注がれた器の後ろに写る茶器は宮崎在住の陶芸家・吉本有希さんの作だそうで、器や食材はなるべく宮崎産のものを意識して使いたいとのこと。
森本さんが昨年から作り始めたという紅茶は、「華やぎ緑茶」でも使われていた「みなみさやか」という品種を発酵させたもの。
フルーティーな香りと甘みが感じられました。
以上、水出し緑茶3種と温かいお茶2種、お菓子3種にアペリティフ2種を森本さんの解説付きで堪能し、気がついたら2時間近くが経過していました。
生産者から直接伺うお話は深みがありますし、畑のお話しや品種のお話しなどを伺いながら飲むお茶は、普段のお茶とは味わいが違うように感じられます。
「茶 LON DE THÉ MORIMO 茶(サロン・ド・テ・もりもっちゃ)」は、2月のプレオープンを経て、3月から本格営業に移行したばかり。
8席しかない小さな店舗で、お客様との会話を重視しているので、完全予約制です。
今回は森本さんが応対してくださいましたが、お茶の栽培も担当されているので、今後は豊緑園のスタッフが交替で店に立てるようにして行きたいとのこと。
お茶のことをもっと知りたい、美味しいお茶を飲んでみたい、ゆったりとした時間を過ごしたいという方は、是非、前日までに予約して出かけてみてください。
【茶 LON DE THÉ MORIMO 茶】
住所:児湯郡新富町日置5190-1 → マップ
電話:080-8746-6051(前日までに予約を)
営業時間:11:00〜16:00
休業日:月・火曜日(月火が祝日の場合は営業)