未来の養蜂のために花の咲く木を植えてます-服部養蜂場/宮崎市

実家が宮崎市平和が丘にあったので、小中学生の頃は、宮崎城趾の周囲が遊び場だったDiceです。

そんな昔の遊び場の近くを再訪するきっかけになったのは、美郷町渡川で林業を営む今西猛さんのFacebookの投稿でした。

渡川の山師が竹藪を伐り開いて作ろうとしている蜜源の森の場所は、昔遊び回った里山ではありませんか。

さらにその投稿の2日後には、MRT宮崎放送のニュースでも取り上げられていました。

服部養蜂場の服部学さんは、テゲツー!にも何度か登場している旧知の仲でもあるので、これは話を聞かねばと、1月某日に訪ねてきました。

ユリノキを植えてます

服部さんのお話を伺ったのは、ご自宅のすぐ目の前にある里山の上。
奥の尾根筋を右手に行くと、かつて宮崎城があったあたりになります。

既に竹や雑木がきれいに伐採され、その後にユリノキの苗木が植樹されていました。

「ユリノキは、春から初夏くらいにチューリップのような大きな花をつけ、そこに虫が溺れるくらいの蜜を貯めるんです。東京・銀座の養蜂にも使われいて、蜜は上品な味がします。」
と服部さん。

参考画像:ユリノキの花

「うちでは5~6月が採蜜シーズンで、春から初夏にかけて咲く花の蜜が販売用の蜂蜜になります。
昔は、5月のゴールデンウィークは休み無しで、一家総出で祖父の養蜂を手伝って採蜜していました。」

祖父の跡を継いで養蜂家に

里山の一角に、大きなユリノキが育っていました。
このユリノキは、服部さんの祖父が植えたものだそうです。

「ユリノキは、植えてから花を付けるまでに10年かかります。この木も、花を付けるようになったのは最近なんです。」

服部さんの祖父は、この地で70年以上、養蜂をやっていたとのこと。
「やお九州」という野菜の販売会社を経営する服部さんが、祖父から服部養蜂場の代表を引き継いだのは2019年。

レンゲの花とミツバチ

30年ほど前までは、この近くの田んぼには春先にレンゲの花が咲いていました。
そのレンゲの蜜も、服部養蜂場の養蜂には役立っていたはずですが、田んぼで作られる米が超早場米になり、2月末には田んぼに水が張られるようになって、レンゲが咲き誇る田んぼも無くなってしまいました。

服部さんの祖父は、そんな環境の変化に耐えて養蜂を続けるため、周囲の住宅開発が進む中、自宅の前の山を売らずに、そこにユリノキを植えていたのです。

その祖父の思いを継いで、服部さんは自宅の庭の一角でユリノキの苗木を育て、その苗木を将来「蜜源の森」になる自宅前の山に植え始めました。

養蜂を維持するのは難しくなっています

服部さんは、小学生の頃からお祖父さんの手伝いをしてはいましたが、養蜂に関する技術の継承はできていないそうなので、そのあたりは宮崎県内に40数社ある養蜂組合の組合員の先輩達から教わっているそうです。

その先輩達も平均年齢は60歳を超えているので、10年後には半減する可能性もあると服部さんは言います。

キイチゴの花とミツバチ

ミツバチは巣から半径2~3km以内で活動するそうですが、そのエリアに花の咲く植物が通年必要で、特に春先から初夏にかけて、たくさんの花が咲く環境が望ましいのです。
しかし、里山は少子化・高齢化の進展で手入れをする人が不足して竹林が拡大するなどしており、十分に蜜を供給できる場所が減っているそうです。

蜂を飼う場所もどこでも良いというわけではなく、ミツバチに悪気は無くても、一般の民家の近くは嫌がられるとのこと。
また、牛の餌に含まれる糖分をミツバチが吸いに行くことも多く、餌を食べようとした牛の口の中を射すこともあるそうなので、牛舎の近くも難しいという、畜産県・宮崎ならではの事情もあるのだとか。

更に、製品は輸入品との価格競争もあり、経営は決して簡単では無いそうです。

ただ、100群を超える巣箱を維持できるだけの蜜源が確保できれば、事業として計算できるようになるとのことで、だからこそ今回、自宅前の山を「蜜源の森」にするべく動き始めたということなのです。

冬の間は、農家のハウスに出稼ぎに行ってます

養蜂用の巣箱

服部さんは現在、20群(箱)のミツバチを飼っているそうですが、訪問した際に養蜂場にあったのはこの2箱だけでした。
残りは、マンゴー農家やイチゴ農家のハウスに貸し出されているのだとか。

冬の間は、養蜂家は群れを維持するだけの蜜が必要で、マンゴーやイチゴを育てている農家は、効率的に受粉させるための虫を必要としています。
ハウスに巣箱ごと貸し出すのは、お互いにWin-Winの関係にあるのですが、養蜂家にとってはリスクもあるのだとか。

最近のハウスは、天候や温度などに応じて自動的に開閉するようになっていて、隙間があるとミツバチが外に出てしまい、巣に戻ろうとしたらハウスが閉まっていて戻れなくなり、蜂の数が減ってしまうことがあるのだそうです。
ミツバチが外に出ないように、ハウスにネットをかけてあれば大丈夫なので、そういう対策をしてもらえう信頼できる農家に限って貸し出すようにしているそうですが、それでもいろいろあると話されていました。

宮崎の特産品である完熟マンゴーやイチゴなどに、養蜂の果たす役割も少なくないので、そのためにも養蜂が続けられる環境を維持することは大事なのですね。

未来の養蜂のための蜜源の森づくり

里の養蜂家と山の林業家がタッグを組んで始まった「蜜源の森」プロジェクト、10年以上先を見据えた息の長い取り組みですが、そこから農業や林業、少子高齢化の問題など様々なものが見えてきました。

今後も、宮崎産の安全で美味しい蜂蜜が味わえるように、プロジェクトの進捗をも守って行きたいと思います。

【服部養蜂場】
住所:宮崎市池内町崎ノ湯1205 → マップ
電話:080-3721-1064
Instagram:https://www.instagram.com/hattoriyoho/
販売ページ:https://store.shopping.yahoo.co.jp/yao800/miyazakihoney600.html

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Dice

2014年4月からテゲツー!ライターに参加。 趣味は料理で、2016年からフードアナリスト、2018年からは冷や汁エバンジェリストとしても活動中。 2020年4月に宮崎での7年間の単身赴任生活を終え、2022年3月まで東京・新宿にある宮崎県のアンテナショップを統括した後、さいころ株式会社を設立、同社代表取締役。 テゲツー!のアドバイザーで後見人的な人で、玄人受けするその記事にはファンも多い。