アルコール全般、何でも飲みますが、家族と一緒の時はワインを飲む機会が多いDiceです。
昨年、無化学農薬・無化学肥料の自家栽培ぶどうを使い、房に付いた野生酵母で仕込んだナチュールワインとして鮮烈のデビューを果たし、赤と白合計1,000本が、1本1万円という価格にもかかわらずあっという間に完売した「香月ワインズ」(綾町)のファーストビンテージ。
セカンドビンテージとなる今年は、順調にぶどうの収穫とワインの醸造が進み、合計で昨年のほば倍となる、赤1,400本、白800本のワインが出荷時期を迎え、2月21日(木)に一般販売用にリリースされることとなりました。
「香月ワインズ」があるのは、30年以上前から町を挙げて自然生態系農業に取り組み、2012年にはユネスコエコパークに指定された綾町の錦原台地。
綾馬事公苑前の前から、細い道を抜けて行くと、ぶどう畑が広がる一角に、切妻造りで真っ白い外壁のシンプルな建物が現れます。
家族経営の小さなワイナリーの内部は、いたってシンプル。
除梗、圧搾、発酵、瓶詰という一連の作業は全て手作業で行われるため、置かれた機械も大半が手動のもので、発酵タンクも600リットルサイズが5本並んでいるだけです。
代表の香月克公(かつきよしただ)さんは綾町の出身ですが、若い頃にバックパッカーとして訪れたニュージーランドでワイン造りと出会い、そこで約7年間、ぶどうの栽培やワインの醸造を学ぶました。
その後、ドイツに渡って家族経営のワイナリーに学び、生まれ育った故郷でのワイナリー経営を夢見て2009年に帰国しました。
宮崎では、まず都農ワインで働きながら無農薬栽培を学び、2013年に父親が所有していたぶどう畑を受け継いで、自ら無化学肥料・無農薬栽培に取り組み始めたのでした。
香月さんのぶどう畑には、おおよそ180cm間隔でぶどうの木が植えられています。周囲の生食用ぶどうの畑では、6m間隔で植えられていることがほとんどなので、植栽密度としては異例に高いのです。
こうすることによって、ぶどうの木同士が地中の栄養を奪い合う競争が活発になり、ぶどうの糖度が上がるのだそうです。
また、生食用のぶどうでは、1本の木で200房前後のぶどうを作るのに対し、香月さんは1本に20〜30房しか付けないように摘果を行うことで、1房ずつの糖度を上げると同時に、木に負荷をかけず長持ちするように配慮しているとのこと。
除草剤は使わないので、ぶどうの木の根元にはこうしてたくさんの草が生え、夏場には3回ほど草刈りをする必要があるとのことです。
刈った草やワイン造りで出た皮などの残渣は、木炭などと一緒に混ぜ合わせて発酵・分解させて肥料にし、再び畑に返しているのだそうです。
(画像提供:香月克公)
香月さんは、綾の気候に適した品種を探し出そうと、綾でこれまで育てられてきた生食用品種から、海外から輸入したワイン専用の品種まで、なんと40品種ものぶどうを試験的に育てています。
単一の品種だけではワイン造りを行うことができないため、必然的に複数のぶどうを混ぜて使うことになり、セカンドビンテージでは赤で15種類、白で17種類ものぶどうが使われていると伺いました。
化学肥料、殺虫剤、除草剤を一切使わずにワイン専用品種を綾で育てた例はこれまで無く、しかも、発酵に使う酵母は、ぶどうの皮や枝に付いている野生酵母で、出来上がるまでどのようなワインになるのか香月さん自身もわかりません。
何もかもがこれまでの常識を打ち破るワイン造りであり、誰も歩いたことの無い道を、香月ワインズは歩いています。
香月さんを含めて、従業員はわずか3人という小さなワイナリーで、使うぶどうも今のところ全てが自家栽培ですから、従業員だけではとても手が回りません。
香月ワインズには、宮崎でナチュールワインづくりに取り組むという、ある意味無謀とも思えるチャレンジに共感し、なんとか成功して欲しいと願うサポーターが50~60人も存在し、植え付け、除虫、収穫など、人手が必要な際には、ぶどう畑に駆けつけて無償で作業を手伝っています。
去る2月17日(日)には、サポーターや販売店の皆さんの協力に感謝し、セカンドビンテージを味わう試飲会が開催され、60名を超える人々が、それぞれワインに合う食べ物を持ち寄ってワイナリーに集まりました。
今年は、昨年の倍以上の出荷を行うことができ、1本の価格も7,000円(税別)と、ファーストビンテージに比べて少し買いやすくなりました。
このうちの一部は、ボトルにQRコードを貼って、ブロックチェーンの仕組みを使って生産履歴を表示できるようにした上で、ワインの本場フランスにも輸出されることになるなど、新しい取り組みも始まっています。
また、もう少しすると、宮崎限定販売のオレンジワイン260本もリリースされます。
香月さんは、
「たくさんのサポーターに支えられているので、もう少し安く、せめて5,000円で買えるようにしたい。」
と話されていました。
そのために、ワイナリーの横に新しく畑を買い、新しいぶどうの苗を植え付けて生産規模を倍にしようとしています。
植え付けからぶどうが収穫できるようになるまでには、最低3年ほどかかるとのことですが、それまでなんとか頑張りたいと香月さん。
今年のBlanc(白)もRouge(赤)も、フレッシュで優しい味わいでした。
特にBlanc(白)は、オレンジがかった色合いにトロピカルなニュアンスも感じられて、その場で1本お買い上げしたほど。
2月21日(木)から一般販売となり、宮崎を中心に東京などでも一部の酒販店やレストランで提供が開始されます。
世界でもあまり例の無い、完全ナチュールの野生酵母ワイン、見かけたら是非味わってみてください。